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《連載小説》BE MY BABY 最終話:サンシャイン・マウンテン(照山)

第二十一話 目次

 翌日、テレビ各局は朝から揃って昨夜行われたRain dropsのドーム公演を取り上げた。早朝、照山はそのテレビ番組がけたたましく流す自分たちの曲に目を覚まされた。曲は朝の時間帯だからか陽気な『サンシャインマウンテン』であった。音源はドームの公演の特集なのになぜか武道館の公演のもので、観客がサビをサンシャインから照山に変えて合唱したものだった。「て~るやま!て~るやま!て・る・や・ま」の合唱が部屋に響いた。

 照山は自分の曲にハゲまされて体を起こした。が、その時、頭から汚れが取れるように黒いものが大量に頭から落ちて来た。彼は何事かと思って頭に手を当てたが、その時髪を突き抜けて油まみれの地肌に触ってしまったので何事だと思って鏡台へと飛んで行った。そして彼は鏡に写った自分の顔を見て光ってはいけないものが丸光りになっているのを発見したのである。照山はギョッとして体を起こした時の事を思い出して先ほどまで寝ていた場所を見た。するとそこにはかつて自分の体の一部であり命であったものが大量に積まれていたのである。ああ!テレビはまだ例の歌を流していた。「て~るやま!て~るやま!て・る・やま!て~るやまっ!て~るやま!て・る・やまっ!て~るやま!て~るやま!て・る・やまっ!……」エンドレスで流れる自分の曲に向かって照山は絶望的な声でにやめろ~と叫んだ。しかし残酷なことにRain drops特集は終わる気配はなかった。


 これがあの東京ドームの悲劇の元になったRain dropsの照山の大失恋事件の全てである。照山たちRain dropsはこの大失恋事件の影響で迷走して一時期人気が低迷した。だがしばらくの潜伏期間の後シングル『裸』とアルバム『NAKID』で見事大復活を遂げた。しかしバンドが抱えていた大問題は決して解決されずにそのまま放置され、ついに後のあの東京ドームの大悲劇を生んでしまうことになる。この時期のRain dropsにもその予兆はあったが、しかし照山はこの時点では自分の抱えている問題はいずれ解決されるものと信じ、少年の心で自分をハゲましてRain dropsの活動を続けていたのであった。

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