最期のシティポップ
シティポップも誕生してからもうすぐ半世紀になる。半世紀なんてもう人生の半分だ。この永遠にプラスティックなラグジュアリーなミュージックも残念ながら時は超えられない。シティポップのアーティストも、また彼らのミュージックを聴いているリスナーも、いずれ年をとり死んでゆく。それはどうしようもない事実だし、それはシティポップを放射線みたいに浴び続けても変えられない宿命ってやつだ。
今一人のシティポップのヘビーリスナーが最期の時を過ごしていた。医者からステージベトナムの有名な麺料理のがんもどきだよ宣告され、いろんな事があり過ぎるほどあった後、結局自宅で残りの時間を過ごす事になった。定年退職して妻の再就職の願いも全振切りでシティポップに溺れた晩年を生きようとした矢先に下された宣告であった。この永遠のシティポップボーイな男がシティポップを聞き始めたのは大学生の頃、山下達郎のバンドシュガーベイブのファンになったのをきっかけにシティポップの世界にのめり込んだ。山下達郎、竹内まりや、松原みきに寺尾聡、通好みのちあきなおみetc……。そうやってシティポップのレコードの山を漁っていった果てに見つけた最高のダイヤモンドがKIYOSHI YAMAKAWAだった。レコード屋に置いてあったKIYOSHI YAMAKAWAの『アドヴェンチャー・ナイト』のジャケットを見た瞬間彼は自分の求めていたものはこれだと思った。帯には『シティポップのキング登場!スティーリー・ダンの完璧さとボズ・スキャッグスの熱いソウルを持つ男が歌う危険な恋のアドヴェンチャー!』とコピーが踊り、ジャケットには海岸通りをスポーツカーで金髪女を横に侍らせて走るKIYOSHI YAMAKAWAが写っていた。これは彼の理想とするシティポップそのものであった。音楽はジャケットの世界を裏切ることなく、いやそれ以上にゴージャスさで彼を打ちのめした。彼はもはや他のシティポップは不要と、自分をシティポップの道へと導いてくれたシュガーベイブと山下達郎でさえもすべて手放してしまった。彼はシティポップ仲間に向かってKIYOSHI YAMAKAWAの『アドヴェンチャー・ナイト』のレコードを見せながらこう言った。
「コイツがあれば十分サ」
男がこれほど愛するKIYOSHI YAMAKAWというアーティストはいわゆる呪われたアーティストの一人である。彼はソウルシンガーとしてデビューし五枚アルバムをリリースしたが、その後突然音楽業界から去ってしまった幻のシティポップアーティストである。活動時は殆ど注目されなかったが、昨今のシティポップ再評価ブームの中で突如ラストアルバムの『アドヴェンチャー・ナイト』がシティポップの最高傑作として注目された。この『アドヴェンチャー・ナイト』にはいわく付きのアルバムで、それまで全く売れていなかったKIYOSHI YAMAKAWAを売ろうとレコード会社のスタッフが彼に無断で曲のアレンジを当時流行っていたシティポップ風にしてしまったのだ。結局それが原因でKIYOSHI YAMAKAWAは音楽業界に失望して日本から去り、アルバムそのものも全く売れなかったが、しかし一部のシティポップファンはこの『アドヴェンチャー・ナイト』に注目し、三十年以上経ってからシティポップの最高傑作として再評価される事になった。今自宅のベッドで静かに最期の時を迎えようとしているヘビーリスナーもその一部のシティポップファンの一人であった。KIYOSHI YAMAKAWAと過ごした日々を振り返っていた男は我に返りベッドの周りに立っている家族に言った。
「人生百年の今の時代じゃ俺は若死になんだろうが、別に後悔はしないゼ。あんなアドヴェンチャー・ナイトな真夜中のドア壊しまくりのプラスティックラブな人生送ってりゃ体壊すの当たり前なのサ」
「何がアドヴェンチャー・ナイトで真夜中のドア壊しまくりのプラスティックラブよ。あなたシティポップとか聴いてその気になってただけじゃない。私と結婚するまで童貞だったくせに。下戸でバーなんか一度も行った事ないでしょホントバカよね」
男の妻が未だ夢を捨てきれないアドヴェンチャー・ナイトで真夜中のドア壊しまくりのプラスティックラブなシティポップ気取りの男に向かって呆れた顔でこう言った。
それを聞いて男は家族を前にして動揺しまくったが、しかし動揺を気取られまいと妻たちに向かって無理矢理の笑みを浮かべた。男は思う。俺はこの東京でずっとアドヴェンチャー・ナイトで真夜中のドア壊しまくりのシティポップな人生を送ってきたサ。プラスティックラブだって何度も重ねてきたサ。そんな夢みたいな、っていうかホントに夢でしかないプラスティックラブの果てに手に入れたマイハニー。シティポップの夢の果てに行き着いたのが会社の同僚だったなんて全く皮肉だネ。淫らなルビーの指輪が綺麗なエンゲージリングに変わってしまうなんてサ。
「フッ、人生に未練はないのサ。だけど一度KIYOSHI YAMAKAWAの『アドヴェンチャー・ナイト』を生歌で聴きたかったゼ。まっ、もう望むべくもないプラスティックな夢なんだけどサ」
それを傍目で聞いていた孫の大学生が祖父母の会話に割り込んできた。
「ちょ、ちょっと今おじいちゃんたち今KIYOSHI YAMAKAWAの話してた?まさかおじいちゃんKIYOSHI YAMAKAWA知ってるの?」
「知ってるも何も昔から大ファンなのサ。俺の人生はKIYOSHI YAMAKAWAと共にあったと言っていいゼ。KIYOSHI YAMAKAWAなしの人生なんて俺には考えられないのサ」
「意外!おぢいちゃんからKIYOSHI YAMAKAWAの名前が出るんなて思わなかった。KIYOSHI YAMAKAWAっていったらシティポップのキングって言われてる人じゃん。意外にお洒落なんだね、おじいちゃん。」
「コラ、おぢいちゃんになんてこというんだ」と男の息子が孫を叱った。「おじいちゃんだって若い頃はみんなにお洒落にみられたくて必死に努力したんだ。こんな風に無理して語尾にへんなアクセントつけてな。あっ、その……なんだっけ?その前川清みたいな名前の人……を一生懸命聴いて似合いもしないお洒落をしまくってたんだ。で、親父……今更だけどその前川清みたいな人ってどんな人なんだ?」
「お前は自分の方がずっと酷いこと言っているのに気づかないのか!」
「へっ、俺なんかオヤジの気に障るようなこと言ったか?」
男は自分の息子のあんまりな無神経さと無知ぶりに我が子ながら情けなくなった。こいつは音楽がからっきしダメで音楽の授業はいつも1だったゼ。縦笛を吹く代わりにどうしようもないことに使う本物のバカだったのサ。せめてこのバカをもっとまともにしようと散々KIYOSHI YAMAKAWAを勧めたが、そんな演歌歌手みてえなダサい名前の奴聴けるかと思いっきり拒否られたゼ。もう少しKIYOSHI YAMAKAWAが有名だったらこいつもちょっとは興味を持ったはずなのサ。だがこいつの娘は見どころあるゼ。KIYOSHI YAMAKAWAを知ってるなんてサ。おそらく曲も聴いるはずサ。こいつよりもこの孫とKIYOSHI YAMAKAWAについて語った方がマシなのサ。
「俺に聞くより自分の娘に聞けばいいゼ。彼女がバカ親のお前にKIYOSHI YAMAKAWAの事を教えてくれるサ」
「あら、あなたそのKIYOSHI MAEKAWAって人の事知ってるの?ねえママにも教えてよ。私最近ムード歌謡にハマってるの」
ああ!バカの嫁までこんなこと言い出したゼ。このバカ夫にお似合いのバカ嫁が!何がKIYOSHI MAEKAWAだ!前川清を逆にしただけじゃないか!男はたまらずこのバカ息子夫婦を叱り飛ばしてやろうと病で弱り切った体を起こした。しかしその時だった。突然孫が両親にブチ切れて説教を始めたのだ。
「全くこれが自分の親なんてホント呆れるよ!親不孝者のバカ親め!自分の親がこれほど好きなものにどうしてそこまで冷淡になれるのよ!お父さんだって一度ぐらいは聴いているはずよ!おぢいちゃんが毎日24時間ずっと聴いていたんだから!」
その通りだゼ、俺は二十四時間ずっとKIYOSHI YAMAKAWAを聞いていたのサ。とここで男は孫娘の言葉に感極まって泣きそうになった。だが、バカ息子は孫の言葉をせせら笑ってこんな事を言ったのだ。
「でもなぁ、俺子供の頃そのKIYOSHI YAMAKAWAって人の歌親父が部屋でレコードと一緒に歌ってるの襖越しに何度も聞いてたんだけど、親父の下手くそな歌の印象しかねえんだよ。ファルセットでキンモチ悪い歌歌いやがってさ。お袋なんか近所迷惑だからってハエ叩きで親父を殴ったぐらいでさぁ」
「ああそうよ!ほんと酷い歌だったわぁ!レコードまで酷く思えるぐらいにねぇ」
周りの無理解。それは俺もKIYOSHI YAMAKAWAも現役時代にイヤというほど味合わされたことサ。男は自分の息子が自分のシティポップのDNAを1パーセントも受け継いでいないという事を今更のように思い知らされた。アドヴェンチャー・ナイトのかけらもないマイワイフ。だけどこんな奴でも付き合っている時はカーステでかけるKIYOSHI YAMAKAWAに目を閉じて耳を傾けていたものサ。
「あなたたちふざけないでよ!おぢいちゃんをなんだと思っているの?死にかけの全身TUBEのああ夏祭りみたいな人を前にしてよくそんな事が言えるよね?おぢいちゃんもうすぐ死んじゃうのよ!ひょっとしたら今日の夜突然心臓が止まっちゃうかもしれないのよ!あなたたちおぢいちゃんが笑顔で最期を迎えられるためにどうしたらいいか考えたことあるの?」
孫娘から放たれたヘビー級に重い立て続けのボディブローに男は一気に顔が青ざめた。おいリトルガール。俺はお前のパンチを浴びてKO寸前サ。ああ!もう立ち上がることなんて出来ないゼ。男は孫娘のこんな膿だらけの腐り切った死にかけの体でとか、顔がバクテリアみたいに緑色でもう人間じゃないわとか彼女なりに祖父を思うがゆえに発した激し過ぎる言葉に耐えられず、今すぐあの世へラストドライブしたくなった。だが次の言葉で彼はわずかに生気を取り戻した。
「みんなこの部屋を見てよ!このKIYOSHI YAMAKAWAで覆い尽くされた部屋を。これはおぢいちゃんが人生をかけて集めたKIYOSHI YAMAKAWAコレクションよ!見てよ『アドベンチャー・ナイト』のレコードだけで棚一個分占領してるじゃない。KIYOSHI YAMAKAWAの他のレコードもあるし、CDもあるし、雑誌とか、ポスターとかもうヤフオクとかに売ったら軽く一千万超えるぐらいあるじゃない!みんなこれを見て何も感じないの?おぢいちゃんのKIYOSHI YAMAKAWAに対する思いを少しも感じないの?」
「こ、こんな粗大ごみがそんなに価値があるのか?」
「何が粗大ごみよ!自分の家族が必死で集めたものにそんな言い方あるの?」
「い、いや純粋に驚いているんだよ!」
彼女の言う通り部屋はKIYOSHI YAMAKAWAだらけだった。壁に貼られたKIYOSHI YAMAKAWAのポスター。本棚に納められた雑誌。古いものが大半だが、新しいものもあった。これは恐らくKIYOSHI YAMAKAWAのリバイバルブームの時に発売された雑誌であろう。そしてレコードは棚の一つを丸ごと占拠する『アドベンチャー・ナイト』とその他のKIYOSHI YAMAKAWAのレコードで全て埋め尽くされていた。CD棚は恐らくリバイバルで再発売されたものだろうが、この凄まじいKIYOSHI YAMAKAWAコレクションには圧倒されるものがあった。そうだゼ。とまた男は一人りごちる。俺はずっとKIYOSHI YAMAKAWAと共に生きてきたのサ。俺のソウルメイトはKIYOSHI YAMAKAWAのミュージックなのサ。『アドヴェンチャー・ナイト』に狂ったあの日から俺はKIYOSHI YAMAKAWAのレコードを買い集めていたゼ。マイワイフに呆れられながら集めまくったKIYOSHI YAMAKAWA。こいつらもメイドインヘブン。ちゃんと天国に連れて行くサ。と、男が一人感傷に耽っていた時、突然孫が声を上げた。
「そうだ!私いい事おもいついた!おぢいちゃんKIYOSHI YAMAKAWAをここに呼ぼうよ!このレコードとかヤフオクとかメルカリで売ってさ!さっきも言ったけど全部売ったら一千万軽く超えるよ!そしてそのお金でKIYOSHI YAMAKAWAを家に呼んで歌ってもらうの!ねぇ、おぢいちゃんそうしない!こんなにいろんなもの買い込むまで好きだったKIYOSHI YAMAKAWAに歌ってもらおうよ!おぢいちゃんだってKIYOSHI YAMAKAWAに会いたいでしょ!これが最期のチャンスよ!おぢいちゃんがKIYOSHI YAMAKAWAに来てもらいたいって言うなら私今すぐにでもこの部屋のものうってお金を作ってくるから!」
この最愛の孫は、このバカ家族の中で唯一のKIYOSHI YAMAKAWAの理解者は男に向かって涙を流しながら訴えた。男は孫の提案に深く感謝したが、しかし受け入れることは出来なかった。
「いや、お前の俺を思う気持ちは分かるゼ。だけどKIYOSHI YAMAKAWAはもうずっと前に日本を捨ててアメリカへと旅立ってしまったのサ。その奴を俺なんかのために呼び戻すことなんて出来ないゼ。それにもう生きてるのか死んでるのかさえわからないんだ。いいんだよ。俺はKIYOSHI YAMAKAWAの思い出を抱きしめて天国に行くゼ。永遠のアドヴェンチャー・ナイトを目指してナ」
この男の言葉にさすがのバカ家族も黙り込んだ。妻も息子も息子の妻もこのKIYOSHI YAMAKAWAコレクションにとんでもない価値がついていることに驚き男が死んだ後にこれをどう処分すべきが資産形成のプランをイメージしたが、決してそれを本人の前で言わなかった。三人は男が孫の金をどぶに捨てるようなバカな提案に同意しなかった事にホッとした。男の息子はにこやかに笑みを浮かべてい父に言葉をかけた。
「父さん。父さんが大事にしているコレクションは僕たちがずっと守っていくから」
「いや、一緒に燃やしてくれ。俺は最期にコイツラとアドヴェンチャー・ナイトするのサ」
「だけどね、父さん。僕たちは家族なんだよ。家族は一つじゃないか。父さんのものは僕たちのものでもあるんだよ。遺された父さんのものは僕たちが最善の方法で受け継いであげるよ」
「オマエら急に目の色変えて胡散臭い笑み浮かべやがって!なんだその気持ち悪い口調は!俺のKIYOSHI YAMAKAWAコレクションに何するつもりだ!」
「何もするつもりはないよ!ただ僕たちは家族として父さんの大事な物を最善の方法で受け継いでいきたいって言ってるだけじゃないか!」
「貴様らぁ!」
「みんな黙ってよ!お父さんいきなり何を言い出すわけ!これはおじいちゃんが一生かけて集めたKIYOSHI YAMAKAWAコレクションじゃない!そんなものに何するわけ!どうせヤフオクにでも売ろうとかそんなこと考えてたんでしょ!全くあなた達にはあきれるわ!」
この娘の言葉に父も母もそして自分も老い先短いのに欲に目がくらんでしまった祖母も黙り込んでしまった。家族を叱り飛ばした娘は再び祖父に向かって話しかけた。
「それとおぢいちゃん。本当にKIYOSHI YAMAKAWAに会わなくていいの?私X(Twitter)とTikTokでKIYOSHI YAMAKAWAと繋がっているんだよ。もしおぢいちゃんが会いたいって言うなら今すぐあの人と交渉するから。実はね、あの人今日本に帰って来てて、今東京のすみっこでバーをやってるらしいの。歌手活動も再開しているらしくて依頼があればどこでも駆けつけてくれるって。おぢいちゃん、KIYOSHI YAMAKAWA家に呼んで歌ってもらおうよ。もしかしたらおぢいちゃんの病気だって治るかもしれないよ」
男は孫娘の心のこもった言葉に涙した。家族の誰にも理解されなかったKIYOSHI YAMAKAWA。だけど今ここに最大の理解者が現れるなんてサ。シティポップが流行っていたあの頃でも自分の周りにはKIYOSHI YAMAKAWAを聴いている人間なんて誰もいなかったゼ。だけどディスティニー。今ここにKIYOSHI YAMAKAWAをリスペクトするガールが現れるなんて。思い出すのは妻を初めて車に乗せた夜のドライブ。カーステから流れるのはKIYOSHI YAMAKAWAの『アドヴェンチャー・ナイト』。今の孫娘を見ているとあの頃の情景が浮かんでくるゼ。ああ!妻にもバカ息子どもにもKIYOSHI YAMAKAWAを聴いてもらえたら!
「いいゼ。KIYOSHI YAMAKAWAに家に来てもらおう。多分これが俺にとって最初で最期のKIYOSHI YAMAKAWAのオンステージだ。存分に聴かせてもらうゼ。まぁ、お前の言う通りもしかしたら治るって可能性もあるけどナ」
「おじいちゃん、今緑色のキモい肌に生気が出て来たよ。ホントに、もしかしたら元気になるかも。じゃ、早速KIYOSHI YAMAKAWAコレクションヤフオクに出すね!」
孫娘は男が承諾するとすぐさまスマホでKIYOSHI YAMAKAWAコレクションをバシバシ撮ってからヤフオクに出品した。そしていろんなSNSに祖父のアカウントを作って宣伝しまくったのだ。その効果か、いや宣伝などなくてもこの膨大なKIYOSHI YAMAKAWAのレアコレクションの放出に反響が起こらないはずはないが、オークションを見たものの目玉が本当に飛び出て病院に緊急搬送されるものが続出するほどの金額で次から次へと入札された。その話題はSNSでバズりまくりとうとうネットニュースのトップに掲載される事態にまでなった。
その勢いは全オークションが終了するまで止まらず、KIYOSHI YAMAKAWAコレクションの落札総額はここでは言えなすぎる金額にまでなった。現金な孫娘はオークションの落札金額から手数料と自分の将来のためと言って総額の20%分を自分のものにした。それから彼女は自分のSNSでKIYOSHI YAMAKAWAにコンタクトを取り、病で死にかけている祖父のために歌いに来てくれないかと嘆願した。
『うちのおぢいちゃんはもう半分以上人間やめて、体中がバクテリアで覆われてキモすぎる状態になってます。おぢいちゃんは昔からKIYOSHI YAMAKAWAさんのファンでいつも曲を歌っていました。そのおぢいちゃんのために歌いに来てくれませんか?ギャラがいくらなのか私はただの女子高生なので業界の相場はわかりません。だけど払えるだけのお金は十分にあります。私は大好きなおぢいちゃんに最期のプレゼントをしたいのです。せめて最期におぢいちゃんの好きなKIYOSHI YAMAKAWAさんに歌を歌ってもらって心安らかにあの世に旅立って欲しいのです。だからお願いです。おぢいちゃんのために歌いに来てください』
この女子高生の余命幾許もない祖父にKIYOSHI YAMAKAWAの歌を聴かせたいというピュアな願いはすぐに叶えられた。KIYOSHI YAMAKAWAから返ってきたメッセには絵文字と顔文字で埋め尽くされた異様な文面でおぢいちゃんの所に歌いに行ってあげるよと書かれていた。このメールを目にした時女子高生はこのあまりに異様なメールに引きまくったが、やがて冷静になってメールをろくに知らない年寄りが故の反応だと判断しおぢいちゃんに 結構可愛いとますますKIYOSHI YAMAKAWAが好きになったのだった。
このKIYOSHI YAMAKAWAとファンの女子高生のやりとりはすぐに世に知られる事になった。余命いくばくもない祖父のために女子高生がKIYOSHI YAMAKAWAにコンタクトをとりあっさりと彼の承諾を得たという出来事は驚きと共に語られた。今まで生死さえわからなかったKIYOSHI YAMAKAWAが余命いくばくもない老人のために歌うだなんてなんて感動的なのか。あの長年公の場から姿を消していたKIYOSHI YAMAKAWAが今長年のファンのために歌いに現れるなんて。しかし皆このあまりに出来すぎた話に疑問も持っていた。そのKIYOSHI YAMAKAWAって名乗る人物は本物なのか。もしかしたら最近出没している彼の偽物ではないのか。
しかし憶測を重ねても真実は解明出来なかった。SNSのKIYOSHI YAMAKAWAのアカウントは公開限定されているし、運良く彼のフレンドになっていた音楽ジャーナルがいくらインタビューをしたいとメッセージを送ってまるで無反応であった。KIYOSHI YAMAKAWAが反応するのは例の女子高生のような純粋なファンだけであった。だがその純粋なファンは皆一様に口が固かったのだ。
KIYOSHI YAMAKAWAの現状はSNSのバナーに貼り付けられた写真で窺い知れた。その写真は彼が今いるらしい店の外観が写っているが、それは彼のアルバムの『アドヴェンチャー・ナイト』のゴージャスさから想像出来ないぐらい陰惨なものである。店は物理的に潰れかけていて、傾斜している部分は重さに耐えきれなくて反り返ってさえいた。その店の看板の店の名前の下には『シティポップの○○のカラオケ教室生徒募集!』と書かれているが、一部確認できない部分がある。恐らくそこにはキングと書かれていたのだろうが、塗装代すら払えないのかずっと禿げ散らかしたままだ。店の前もゴミなどが散乱していてとてもバーとは思えない。KIYOSHI YAMAKAWAのファンなら見たくもない現状だろう。そんなものをわざわざバナーに載っけるとは一体どういうつもりだろう。もしかしたら彼はこの陰惨な写真を載せることでリスナーにありのままの現実を突きつけて自分に近づかせないようにしているのかもしれない。
しかしそうだとしたら彼は自分のリスナーを見誤っていたことになる。なぜならリスナーのKIYOSHI YAMAKAWAに対する愛はマリワナ海峡よりもずっと深いものだったからだ。深海の奥底で孤独に眠っている魚だって彼らの呼び声の大きさに目を覚ましてしまうほどの。だから女子高生とKIYOSHI YAMAKAWAの事が知れ渡るとリスナーもマスコミも一斉に女子高生と彼女の祖父であるKIYOSHI YAMAKAWAのヘビーリスナーの家に突撃してしまった。だが孫の女子高生ここぞとばかりにブランド品を身に着けまくったいで立ちで玄関に現れて頑としてそれらの取材を撥ねつけた。
「今はおぢいちゃんをそっとしておいてください。体中が緑色でもう死ぬ寸前のおぢいちゃんにはKIYOSHI YAMAKAWAさんの歌を静かに聴いてもらいたいだけんです。私の取材だったらなんでも受けます。芸能界からのスカウトだってガンガン受け付けています。だからおぢいちゃんだけはそっとしておいて……」
この女子高生の切実な言葉はその場に集まったすべての人間の心をダイナミックに打った。彼らは女子高生に向かっておじいちゃんを大切になといって、それから君の取材やスカウトは絶対しないから大丈夫だと言ってその場を去ったのだった。
KIYOSHI YAMAKAWAがやってくる前日。もう待ちきれなくなっていた男は孫に向かって明日KIYOSHI YAMAKAWAをどうやって迎えればいいかを相談していた。部屋にあったKIYOSHI YAMAKAWAグッズの大半はヤフオクで売ってしまったし、これじゃKIYOSHI YAMAKAWAを歓迎出来るものなんかないよと悲しんだ。だが孫娘はにこやかに笑っておぢいちゃんのKIYOSHI YAMAKAWA愛があるじゃないと言って祖父を励ましたのだった。二人はそれからKIYOSHI YAMAKAWAの事を語り合った。祖父は孫娘の知らないKIYOSHI YAMAKAWAのとっておきのエピソードを話して喜ばせた。孫娘はおぢいちゃんのためにスマホのYouTubeでKIYOSHI YAMAKAWAを流してあげたのだった。祖父はそれを聴いてやっぱりレコードがいいゼとつぶやいたが、それを聞いた孫娘はちょっと怒った表情で今はレコードなんてかび臭いものよりYouTubeの方がずっといい音出しているのよとホントなのか嘘なのかわからない事を言って祖父を宥めたのだった。祖父と孫娘は共に過ごすこのひと時が貴重なものであることを身に染みて感じていた。もうじき来るであろう終わりの時まではせめてこんな風に二人の好きなKIYOSHI YAMAKAWAについて語り合いたい。きっと明日は自分たちにとって最高のイベントになるであろう。そう思ったのだった。
孫娘が部屋から去った後、男は一人天井を見上げてKIYOSHI YAMAKAWAがやってくる明日を思った。もうKIYOSHI YAMAKAWAを聴きながらあの世に逝ってもいいゼ。そんなことさえ考えた。だけどマイハニー。遺されたファミリーの事を考えると怖くなるゼ。俺はラストドライブに逝くには早すぎるんだ。
朝の光と共に男は目を覚ました。奇跡の土曜日。神々しいまでの光が俺を包んでいるゼ。今日はKIYOSHI YAMAKAWAがマイホーム。俺の家にやってくる日だゼ。男の妻とその娘夫婦はKIYOSHI YAMAKAWAを迎えるために似合わないブランド物の服なんか着てせっせと部屋を飾り立てていた。その家族たちを仕切っているのが、八十年代のアイドルみたいな恰好をした孫娘である。孫娘は鬼の形相で家族たちに指示を出していた。彼女はKIYOSHI YAMAKAWAに使ってもらうカラオケセットの配置のために音響テストを何度もやりその度に置き場所を変えていた。その孫娘の仕切りっぷりをベッドから見ていた男は幼かった頃の彼女を思い出して感慨深くなった。あのベイビーがこんなに素敵なガールになるなんてナ。俺のシティポップ魂を引き継いだシティポップガール。そのうちお前はKIYOSHI YAMAKAWAの『アドヴェンチャー・ナイト』のジャケットのスポーツカーの助手席に相応しいレディになるゼ。
そうして準備を進めていると玄関の電話が鳴った。男はそれがKIYOSHI YAMAKAWAからの電話だと確信し早く出ようと弱り切った体に力を込めて身を起こそうとする。だがおじいちゃん孝行の孫娘はオラァ動くんじゃねえと祖父の肩を骨が折れんばかりに押さえつけ私が出るよと玄関へと駆けて行った。
「ああ!ウチはそこの角っちょで」とか「三軒目のそば屋の裏」とか「さっきも言ったでしょ。そこは右だって」とか電話口で孫娘娘が細かすぎる道案内をしているのを聞いて男の胸は高まった。もう少しでKIYOSHI YAMAKAWAが来る。あのシティポップのキングが自分のそばで歌ってくれるんだ。人生最大のラグジュアリー体験。体験した瞬間俺はインマイヘブン。もう死んでしまうかもしれない。さぁカミングマイホーム。横断幕あげてアンタを歓迎するゼ。
やがて玄関のチャイムが鳴った。孫娘に率いられた妻と娘夫婦は一斉に玄関へと向かった。男はKIYOSHI YAMAKAWAとの初対面に死にそうなぐらいの緊張感を覚えてその時を待った。「さぁ、上がってください」「あっ、ちょっと土足はさすがにご遠慮ください」なんて家族の喋る声が聞こえる。バカ野郎KIYOSHI YAMAKAWAに靴なんか脱がせんじゃねえゼ。俺はあのシャレオツなシューズを履いたKIYOSHI YAMAKAWAが見たいんだゼ。足音がだんだん大きくなってきた。もうじきKIYOSHI YAMAKAWAがこの部屋に現れる。
「ジジイ~!死にかけのテメエのために歌いに来てやったぜ!まだ生きてかぁ~!もしかして死んでたりしねえだろうなぁ~!」
乱暴にドアが開いて押し入ってきたデブのジジイのこの言葉を聞いて男は頭の中に無数の?が出てくるのを感じた。男はなんか金ラメの下品なジャンパーにスウェットを着て首と腕には金メッキのやすそうな、というかそこら辺の百均にでも売ってそうなネックレスをつけている下品なジジイを見てこれがKIYOSHI YAMAKAWAと唖然とした。
「おうどうしたんだジジイ!まさかショック死したわけじゃねえよなあ~!このKIYOSHI YAMAKAWAさまの喉チンコ震わせた美声を聴くまで死ぬんじゃねえ!」
「……失礼ですが、あなたは本当にKIYOSHI YAMAKAWAさまなのでしょうか?随分昔とイメージが変わってしまっているもので」
「バカヤロウ!俺の他にKIYOSHI YAMAKAWAがどこにいるってんだよ!全くお前らファンはいつまでも昔のイメージにこだわってやがるんだから!いいか?人ってのは時代と共に変わるんだよ!いつまでも変わらずにいる事は出来ねえんだよ!」
死の淵にいる男にとってKIYOSHI YAMAKAWAの言葉は傷口に塩を振りかけるように残酷なものだった。確かに人は時代と共に変わる。それは自分たちにとっては当たり前の事実だが、KIYOSHI YAMAKAWAのようないつまでも変わらないと思っていたシンガーでも同じなのだ。男はそうですねとつぶやいて泣いた。孫娘はそのおぢいちゃんに駆け寄って彼の肩をふん捕まえるように抱きながら「おぢいちゃん」と言って号泣した。男は孫の圧迫面接より遥かに酷い圧迫に耐えながらKIYOSHI YAMAKAWAに向かって感謝の言葉を述べた。
「KIYOSHI YAMAKAWAさん本当にありがとう。僕はずっとあなたのファンだったんです。僕はあなたをここに呼ぶために手放してしまいましたが、今までずっとあなたのレコードやあなたが載っていた雑誌なんかを買い集めていました。僕はあなたを聴いて本当の意味で音楽に目覚めたんです。あなたを聴いてから今まで聴いていた他のアーティストのレコードを全部売ってしまいました。僕にとってあなたこそ本物のシティポップなんです!」
男はこうお礼を言って泣きはらした顔でKIYOSHI YAMAKAWAを見つめた。だが彼はKIYOSHI YAMAKAWAが顔を真っ赤にしているのを見て恐ろしくて目を伏せた。KIYOSHI YAMAKAWAは全身をわなわな震わせて拳を振り上げて叫んだ。
「シティポップだぁ~⁉」
男はなぜKIYOSHI YAMAKAWAが怒っているのか分からなかった。何故彼はシティポップと聞いただけでこんなに激怒するのか。自分は本当に彼の音楽を最高のシティポップとしてずっと聴いていたのに!
「ど、どうしてそんなに怒るのですか?僕はただあなたへの感謝を伝えたかったのに。もしかしてシティポップが御嫌いなんですか?」
「ああ!大嫌いだね!あんなものは学生さんの遊びだ。俺みたいに北国の田舎に生まれて中学卒業して集団就職で東京に来た俺にとっちゃゴミみたいなもんでしかねえ!俺は演歌歌手になりたくて北島四郎親分に弟子入りしたんだ。北島先生のパンチの縫い付けだってやらされた。それから作曲家の遠藤満先生のとこでみっちり喉チンコを鍛えられたぜ。プロになってから俺は命さえとられかねない体験を何度もしている。ヤクザに捕まって海に沈められそうになったことだってあるし、ヤクザの組の本部でディナーショーをやってた時他の組がカチコミに来てその組員の一人が売った鉄砲玉がこめかみをかすめたことだってある。あのシティポップの連中はそんな体験一度だってしたこたねえだろ!だから奴らは拳が効かねえしょうもねえ歌しか歌えねえんだよ!」
「でもあなただってシティポップを歌っているじゃないですか!」
男の心の叫びであった。KIYOSHI YAMAKAWAはこの痩せこけて肌がバクテリアまみれの死にかけの男が発した魂の叫びを聞いて俯いた。
「そうだ。確かに俺はシティポップを歌っていた。そして今そのシティポップで小遣い稼ぎをしているんだ。情けない話だぜ。こんなゴミみたいな代物で食ってるなんてさ」
「何があったのか知りませんが、そんなにシティポップを嫌わないでください。あなたが成してきたことを否定するような事はやめてください。僕はあなたが嫌っているシティポップと共に人生を歩んできたんです。あなたが出した『アドヴェンチャー・ナイト』は僕の生涯のフェイバリットアルバムでした。多分僕のように『アドヴェンチャー・ナイト』を人生の最高の宝物だと思っている人は沢山いるんです。その人たちのためにも否定しないでください。あの『アドヴェンチャー・ナイト』はあなた自身が思っているより遥かに偉大なアルバムなんです!」
男は息も絶え絶えでこう言った。それは文字通り命がけの叫びであった。孫娘がおぢいちゃんと叫んで再び全力で祖父の骨がバラバラになるぐらい抱きしめて叫んだ。
「おぢいちゃんのためにお願いします!死にゆくおぢいちゃんのために『アドヴェンチャー・ナイト』を歌ってあげてください!それが私たちのおぢいちゃんへの最期のはなむけなんです!」
すると今まで脇で見ていた他の家族までも出てきて同じように男を骨が粉々になるぐらい抱きしめてみんなで訴えた。
「お願いします!どうか歌ってあげてください!私たちの一生のお願いです!」
この一家そろっての涙の訴えにさすがのKIYOSHI YAMAKAWAも心を動かされた。彼は鼻を啜りバカ野郎どもがと男泣きした。
「たくピーピー泣くんじゃねえぜ!お前ら俺に歌わせたくてギャラ払って俺を呼んだんだろ。歌ってやるぜ」
「じゃあ」と孫娘は祖父のために喜んでさっそくとKIYOSHI YAMAKAWAにカラオケセットを見せたが、しかしKIYOSHI YAMAKAWAは首を横に振って断り手に持っていたラジカセを見せた。
「お嬢ちゃん、これで大丈夫だぜ」
そう言うとKIYOSHI YAMAKAWAはラジカセからテープを取り出して鉛筆でテープをクルクル回して最初まで戻して再びラジカセに戻した。そして彼は腕を広げて高らかにこう言った。
「じゃあ今からKIYOSHI YAMAKAWAのリサイタルをはじめるぜ。耳かっぽじって聴けや!」
KIYOSHI YAMAKAWAはそう言ってからラジカセのボタンを押してマイクを口もとにあげた。しばらくしてからかすかにストリングスが流れ始めた。男はそのむせかえるようなストリングスに少し、いやかなりの違和感を感じた。しかしKIYOSHI YAMAKAWAは自信満々にその喉チンコを全開にして歌い出したのだ。
「ああ~♪ アヴァンチュール・ナイトぉ♪ 熱海の夜はぁ~♪ ワワワワァ~♪」
このアドヴェンチャー・ナイトと似ても似つかないZ級にダサい歌謡曲に男の心臓は耐えられなかった。男は胸を押さえてそのまま倒れ込んだ。家族は男が突然倒れ込んだのを見て慌てて男を蘇生させようとその体を滅多打ちにした。
「ああ!おぢいちゃん死なないで!これはきっと何かの悪い夢よ!きっとそうなんだわ!」
「あああなたこんなひどい歌よく今ままで聴いていられたわね!こんなもの聴いてるから早死にしたのよ!」
「ああ!親父アンタやっぱりバカだよ!こんなものにずっと夢中になってたなんて!」
「ああ!お父さん!こんなゴミよりKIYOSHI MAEKAWAの方がずっといいじゃない!」
だがKIYOSHI YAMAKAWAはそんな周りの雑音など気にも留めず最後まで熱唱して手に持っていた一枚のレコードを突き出した。
「どうだ!これがシティポップの帝王KIYOSHI YAMAKAWAのアヴァンチュール・ナイトだ!な~にがアドヴェンチャー・ナイトだ!人の曲名間違えてんじゃねえ!」
このKIYOSHI YAMAKAWAの言葉を聞いてたった今死亡が確認された男の家族は我に返ってKIYOSHI YAMAKAWAが自慢げに見せているレコードジャケットを見た。そのレコードは男が持っていたレコードと瓜二つだったが、しかしレコードの帯のコピーが微妙に違っていた。
『シティポップの帝王登場!スティーリー・ダンの完璧さとボズ・スキャッグスの熱いソウルを持つ男が歌う危険な恋のアヴァンチュール!』
「おおどうしたい。お前らそいつがどうかしたのかい。そうか……死んじまったのか。まぁ、最後に俺のアヴァンチュー・ナイト聴いて死んだんだから幸せな最後であったよな。じゃあ残りのギャラはちゃんと振り込んでくれよな。俺も餞別にこのレコード置いていくからよ」
亡き男の家族はこのあまりの無神経さにカッとしてKIYOSHI YAMAKAWAのパチモノに詰め寄った。孫娘は亡きおぢいちゃんを抱えて泣き叫んだ。ああ!おぢいちゃんごめんなさい!私のせいで!私のせいでこんなことに!しかし孫娘はおぢいちゃんのバクテリアにヒビが入っているのを見てハッとして離れた。まさかおぢいちゃん?
その時確実に医者からも死亡を宣告されていた男はばっと身を起こした。家族一同は男がバクテリアが剥けて生き返っているのを見て驚愕した。死さえ乗り越える怒りに囚われた男はKIYOSHI YAMAKAWAのパチモンを睨みつけてこう叫んだ。
「お前誰だよ!」
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