パープル 〜古代の物語の注釈
古代に書かれた伝説の物語。後の時代の人々はその物語を長い時代に渡って解読しようと試みた。本文の脇に書かれた膨大な注釈。それは注釈者たちが幾世に渡って書き記したもの。ある時代に書かれた注釈。後の時代に書かれたその注釈の注釈。物語の注釈は歴史と共に積まれていく。それでも人はこの物語を解読出来ない。千年以上に渡っても人は物語の中にさえ踏み込めない。歴史の断絶。古代と現代の間の空白。いや違う。それは注釈者たちが先の時代の同人から汲み取り伝えようとしてきた試みの果て。注釈の注釈のそのまた注釈。注釈者たちの物語を解読しようとするその試みは現代の図書館の本に落書きをする中学生とさほど変わらない。注釈者の注釈によって文字さえ判読できなくなった書物を見て現代の研究者は先代の同人に対して歯噛みしながらこう思う。
『頼むから本に書き込みしないでよ。印字してないし、字が汚いからどこが本文でどこが注釈なのかわかんないのよ。しかも何故か注釈で論争までしてるし』
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