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薬を飲むことに罪悪感がある40歳過ぎの私のおなはし

とある、田舎の小学校に、何か理由をつけては学校を休む子供がいました。
少しお腹が痛いと、お腹がとても痛いと言って休み、風邪の引き始めの身体の違和感だけでも、これは熱が出るに違いないと学校を休み、靴下のかたっぽが見つからなくて休む子供です。
そんな子供なので、本当に風邪をひくと、いかに長引かせるか考えます。
薬を飲むなんてもっての外です。
熱が40度近くなり、いよいよ自分は死んでしまうのではないかと心配になる時か、目に見えて楽しみな予定があって、どうしても治したい時、そんな時にしか薬を飲みませんでした。
そのしょうもない子供が私です。

ありがたいことに、親は親で、甲斐甲斐しく声をかけて薬とお水をくれる性格ではなかったので、益々私は調子に乗るわけです。

そんな私は、大人になり出産をしました。
子供はすぐに風邪をひきます。
咳が出ます。
熱を出します。
私は自分が大丈夫だったので、多少の風邪なら「様子見る」スタンスになります。
人間の体にはそもそも治癒力があって、子供の時から薬で風邪を治すと、その治癒力がなくなるとか、なんとか、そんな風潮を耳にしたので、ちょっと子供が風邪っぽいなと思ったら、しっかり食べさて、暖かいお風呂に入れて、早々寝かす、それが一番だと思って育てました。
それでも熱が出るときは出るので病院に行って、処方された薬を飲ませてましたから、だったら早く病院へ連れていけよって話なので、何が正しいかは自己判断でお願いします。

そんな子育て時代を過ごし、私自身40歳を超えた頃です。

生理痛がひどくなってきました。
初めのうちは、「今回の生理はやけに重いな」という頻度の程度だったのですが、頻度は増していきます。
「気のせいかな」が確信に変わった時は、市販薬の生理痛の薬を飲まないと仕事が出来ない様になっていました。
婦人科へいくと、子宮筋腫がいくつかあって、その中のひとつが、場所が悪いところにあるとのことでした。
結果、生理が来ると、生理期間中は1日3回、痛み止めとそれに伴う胃腸薬を飲むことになりました。

非常に不本意です。

こんなに薬を避けてきた私が、そんなに毎月薬を飲むなんて、思いもしませんでした。

そして、それと似た時期にメンタルクリニックにお世話になることになり、こちらでも、薬を処方されることになりました。
こちらの薬は種類によって、朝晩の2回ずつの時もあれば、一日1回二錠服用する程度です。

その少しなのに、非常に不本意です。

今までひたすらに、薬を避けて避けて通ってきた人間にしたら、このたかだか数錠に、すごく抵抗があります。
何故か凄く罪悪感も出てしまいます。

そんな生活を送って3年が経ちました。

つい先日10年来の友人に会いました。
その友人は、数年前に貧血検査で引っかかり、薬をいつも飲んでいるということは聞いていました。
貧血検査で数値が「1」だったらしく、正常値がいくつなのか知りませんが、1と聞いた時は、驚きで声が出てしまいました。

その友人とは、毎度待ち合わせで会えたところから弾丸トークが始まります。
そのまま店内へ入り、そのトークのテンポのままメニューを選び、そのテンポのまま、注文をして、会話は途切れることなく、繰り広げられます。
このテンポはもはや、餅つきです。
どちらが杵を持つのか、どちらがお餅を引っ繰り返すのか決まりは無いので、自分が杵を持っていたつもりが、気がついたら「餅をひっくり返しますやん」ってことになってますが、お互い気にすることはありません。
友人は、私が軽快に杵を振り上げると、うまい調子にお餅をひっくり返しました。
なおかつ

「あ、ごめんね、ちょっと薬飲むよ」といって、バックからパチパチっと錠剤を何錠か出してきました。
なんともスムーズな、華麗な慣れた手つきです。

見たことの無い形と、その大きさに、さすがの私は杵を持つ手を下ろしてしまいました。

「お互い……歳取ったね」
と笑いとため息が混ざったような声が出てしまいました。

「私も常用している薬があるんだけど、なんだか罪悪感があって……」
と言うと、その友人は、

「分かるよ、凄くわかるよ。でもね、今はもうね、身体が必要としている時期なんだと思って、割り切るようにしてるよ」
と言ってくれました。

体が必要としてる時期……なんとしっくりくる言葉でしょうか。
ポロポロという乾いた音が聞こえました。
目からウロコが落ちる音です。

なんて、そんな音は聞こえていませんが、本当にそれくらい腑に落ちてしまいました。

この歳まで生きて、大抵の事はわかってきた気がしていたけれど。
もし、私のように罪悪感を感じている人がいましたら、一緒に思い出してくれると嬉しいです。

今は身体が必要としてる時期なんだよと。

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