【短歌】夏の調べ
汽笛鳴る海猫歌う夏の空
白波拍手港の調べ
【旅立つ夏の物語】
ブォオオオオン、という船の汽笛が鳴った。
その音に惹き付けられたように、海猫が出港間際の船に寄り添う。白波がバシャバシャと大きな拍手を上げる。
そうして、波と海猫を引き連れて、船は水平線に向かう。
私は、コンクリートでできた港で海に出る船を見送りに来た。潮風が肌にまとわりつく。
今日は、ずっとそばにいた息子の門出。
嬉しくもあり、寂しくもある。
船の中に消える息子を見た時、うみねこのように船について行けたなら、と思った。
でも、あの子が決めた道だ。
背中を送ってやるのは、大人の仕事。
疲れて帰ってきた時に暖かいご飯を準備してやるのも、大人の仕事。
今私があの子にできることは、背中を見てあげること。
もう一度、汽笛が「行ってくるよ。」というように落ち着いた声で港にいる人々に挨拶をした。
ブォオオンと低く響く音に耳を傾けながら、白波に包まれる船を見送る。
白波が立てる拍手喝采の中、船は小さくなっていった。
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