
勿忘草、語ります。/安心したから
一つひとつ丁寧に答えてもらって安心したから、語る。
───もう少し大きいキーボードが欲しいな。
文章を打ち込んでいたら、不意に思った。
実は先月、お試しで500円の小さなキーボードを買った。スマホ用のワイヤレスキーボードだ。
そのキーボードが、非常に使いやすい。
フリック入力が苦手な私にとって、この小さなキーボードは、お助けアイテムだった。
ただ、1つだけ難点がある。小さすぎるのだ。お試しで買ったものだから、打ち込みやすさまで考えていなかった。
こんなにワイヤレスキーボードが便利だとは、思わなかった。こんなに大活躍してくれるなら、少し大きめのワイヤレスキーボードをもう一台買ってもいいかも!
それは、とっても素敵なアイディアだ!
でもでも、高価なものは買えないなぁ、、、
よし、リサイクルショップだ!
というわけで、、、
早速、地元のリサイクルショップへ!!
あまり立ち寄らないパソコン周辺機器コーナーへ足を踏み入れた。コードみたいな小さなものから、パソコンやスピーカーなど大きなものまで、多種多様なデジタル機器が揃っていた。
キョロキョロ辺りを見渡しつつ、目的のものを探す。キーボード、キーボードは、、、
こ、ここか?
最近のキーボードは凄いね。
キーの部分が七色に光るもの。
左右が分裂していて打ち込みがしやすいもの。
キーが丸くて可愛いもの。
私が持っている小さなキーボードと同じくらい、小さなキーボードも何台かある。
これ、打ち込みする度光るのかな?
夢中でキーボード叩いていられそうなぁ。
これ可愛くて、ずっと見てられる。
色も淡い青色で綺麗だなぁ。
たくさんキーボードがあって、夢中で店内を見渡した。何周も何周もしてあれこれ見ていた。
そして、棚の奥に押し込められていたソレを見つけた。
最初は、電子辞書かなと思った。
単行本よりちょっと小さくて、
真っ黒なケースに入っていたソレは、
折りたたみ式のキーボードだった。
黒いカバーにおおわれたそのキーボードは、周りのキラキラしたキーボードの中で、地味にひっそりと置いてあった。
派手じゃない。それなのに、何故か目が離せなかった。なんでだろう。これかなって思った。
この子は、私の新たな仲間になる子かな、と思ったのだ。
ただ、問題があった。
そのキーボードには、説明書も付属品もなかったのだ。箱もなく、透明なビニールで包まれていたため、中身が見れない。
つまり、使い方が全く分からないのだ。
商品の説明のところに「ワイヤレス」とは書いてある。でもキーボードが折りたたまれたままなので、接続方法は皆目検討がつかない。
う〜ん?
充電方法は?
充電用のコードは何タイプだろう?
家にあるので代用できるかな?
あと、ワイヤレスキーボードだとして、接続操作はどうすれば、、、
これが欲しい。
多分、とってもいいものだ。
私の中の予感がそう叫ぶ。
でも、分からない。
なんにも分からないのだ。
困った、、、、、、
困ったので。
私はチラリとカウンターを見る。
ちょっと、聞くだけ。
買いたいけど、内容が分からないから。
ちょっとだけ、聞いてもいいかな?
店内の明るいBGMに背を押されて、私は店員さんに話しかけてみた。
「あの、このキーボードについてお聞きしたいのですが、、、」
店員さんは、調べ物をしていた手を止めて私の所へ来てくれた。
「はい。どうされましたか?」
少し若い、ポソポソと話す店員さんだった。
「これの充電についてお聞きしたいのですが、、、」
店員さんは、ちょっと困った顔をしながらも私の質問に答えてくれた。
私の質問は2つ。
1つ目は充電方法。
2つ目はワイヤレス接続の方法。
店員さんは、「ちょっと待っていてください。」を繰り返しながら、私の質問に丁寧に答えてくれた。
店員さんの言うことには、、、
・付属品があったようだが、今お店にはない。
・充電のコードは、よくあるものだった。
・家にあるものでも代用できそうだ。
充電は、何とかなりそうだ。
ありがたい!
あとは、ワイヤレスの接続方法だが、、、
これに関しては、説明書がないから接続方法が分からなかった。
分からないものは仕方ない。
充電ができるなら、買ってから色々調べてみようかなぁ。
私は店員さんにお礼を言って、その場を去ろうとした。すると、店員さん私に4回目の「ちょっと待ってください。」を言った。
3分くらい待っていただろうか。
店員さんが、戻ってきた。
そして、私を「こちらにきていただけますか?」と言って、カウンター内に招いた。
え、ここに入っていいの?!
おっかなびっくりカウンター内を進む。あるデスクにたどり着くと、店員さんは、店員さん専用のパソコン画面を私にみせた。
そこには、私が買おうとしていたキーボードの説明が書いてある、ホームページが開かれていた。
調べてくれたのだ。
しかも、そのパソコンの隣には、私が一目惚れしたキーボード。
買うかどうかも言っていない私の質問に答えるため、キーボードの透明な包みを外して、実際に中を見せてくれたのだ。
店員さんは、相も変わらずポソポソ話している。
でも、熱い心を感じた。
誠実。
そう感じた。
分からないことが多くて不安だった。でも、こんなに親切に教えて貰えた。だから、私は安心して説明に耳を傾けた。
店員さんの説明が終わる。
充電コードと充電方法と接続方法。
私が知りたかった全てがわかった。
私は、このキーボードの購入を決めた。
お会計中、店員さんはキーボードの型番を指さした。
「この型番で調べると、使い方が出てきますよ。」
最後のフォローまで、完璧だった。
買ってもらったら終わりじゃないんだな。
使う人のことも考えてくれるんだな。
丁寧に接してもらえたことが、嬉しかった。
そんな素敵な出来事を経て、私の元に新しいキーボードがきた。
パチパチという音が響く中で、私はこの文章を打っている。
私の予感は的中した。
使い心地最高だ!!
いいなと思ったら応援しよう!
