
イメージという魔術
昨年NHKで放送された「映像の世紀」を見た
「ナチス親衛隊 狂気の実行者たち」という回
何の罪もない人たちが ガス室に押し込まれていく様子や、骨と皮だけになった遺体が積み上げられている光景など
ナチスドイツの残虐な行為は 何度見ても気持ちが重苦しくなるけど
今回は こういう政党が国民に支持されていたことについて考えさせられた。
ナチスドイツの経済政策は賛否両論あり
ヒトラーが指導者になって、分かりやすい形で豊かさが訪れたわけではないのに
国民は熱狂的に彼を支持していた

人気を集めた理由を読むと
世界恐慌の不安の中、強いリーダーへの期待があった等とあるが
個人的にいろんな資料や映像を見て感じるのは【イメージ戦略の巧みさ】
やってきたことは間違いなく人間未満だけど、ビジュアルセンスは飛び抜けていたと思う
(画家志望だったことも関係あるのかな?知らんけど)
ナチスドイツ時代の軍服は 今でも「世界一カッコいい軍服」と言われることも多く
衣装やキャラクターデザインを手掛ける人にインスピレーションを与えている
(あまりにも似てるとナチス礼賛かと炎上になったりする)

また、ヒトラーに才能を認められた映画監督 レニ・リーフェンシュタールの映像は
思想は別にして 映画として高い評価をする専門家も多い

現実のヒトラーは大量殺人を推し進めた小男なのに、映像を見ていると
階段を登って登場するヒトラーが とても頼もしく威厳ある人物のように映し出されている
会場の階段が 神殿みたいな重厚感あるものに見えてくるから、映像のマジックは怖い
市民が得られる情報がとても限られていた時代に
これを見せられたら実像を見抜くのは難しいだろうと思う。
加えて、よく言われるのが彼の演説の巧みさやカリスマ性
多くの人は、違ってたじゃないかと言われるのを恐れて
「〇〇は□□だ」と言い切れない
「〇〇は□□だと思う」という言い方をする
だから「〇〇は□□だ!絶対に」と言ってしまえる人は、特別な力があるような錯覚を起こさせる
新興宗教の教祖とかも そうだけど。
実際にやってたことは極悪非道なのに
そういう見せ方が民衆の心を捉え、支持された
怖いけど、自分だって騙されないとは限らない

【イメージ戦略】という言葉がある
SNSが浸透して それはより重視されるようになった
良質の商品を作り続けていたが売れ行きの良くなかった老舗菓子店が、プロにホームページを作ってもらったら 飛ぶように売れるようになった‥みたいないい話もあるけど
実態の伴わないものを高く評価してしまうこともある
長い付き合いの美容院があり
オーナー氏は ビルの一隅からお店を始めて3店舗を持つようになった才覚ある人だけど
最近の業界のあり方には思うところもあるらしい
「僕が若いときは お客さんに来てもらうために必死で技術を磨いたけど
今はYouTubeで面白く話をしてたり インスタで宣伝するのが上手い店にお客が来る
自分から見ると技術的にどうなんだという店でも それなりに流行ってる」
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受け取った情報から想像したものと、実際のそれとは違う
いちばん身近な例は買い物かも知れない
もちろん私も「え?」という経験がある

数年前、インスタやブログでよく見た5000円くらいのバッグがある
インフルエンサーがオシャレなコーデに合わせて
「高見え!」「合わせやすくてお気に入り♡」とオススメする画像を見ると確かに良さげ
とりあえず楽天のカートに入れて ちょっと保留

ところが
ある日 セカンドストリートに行くと、そのバッグが売られていた
画像で想像していたよりテカテカしていて
新品同様でユーズド価格でも買う気がしなかった
“ ダメとは言わないけど、高見えとは言えないな… どう見ても合皮のビニール感があるし ”
結局は報酬をもらってPRする『案件』の商品
買わなくて良かった。
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【イメージと実態は違う】ということを認識しておかないと
支持するべき対象や お金を出すに値するものを間違える
イメージと実態がほぼ同じもの、かけ離れてるもの
どのジャンルでもあるけれど
何処でどう見分けたらいいのか
今も私はよく分からない。