【エッセイ】世界と心の結び目
花という世界の結び目、時間の流れの中わだかまった小さな渦。私たちの視線は、ときおり、その上で時間を過ごし、世界の秘密がそこにのぞいているような感覚を覚える。
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その向こう側を見たがっているのかはわからないが、私たちはその向こうとこちら側についてしか、語れない。向こうとこちらを行き来して、なんとかそれに触れよう、せめて掠めすぎようとする。
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ほどこうと願うほど、その結び目は硬くなり、からまっていく。ついには私たちの視線も、心も、その結び目に絡まった一部になっていく。
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絡まっていくことも、絡めとられていくことも、きっと願いの一部だろう。
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その花をそうやって結んだのは世界なのか、私たちなのか? 絡まっていくことで、その問いかけ自体解体される。
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結び目とは、そのためにすべてがこれまでありつづけ、これから先もありつづけるかのように信じられる、信じてもいいと思える「広がり」のこと。
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その結び目に時間は絡まるようにして、立ち止まるようにして、あっというまに過ぎ去っていく。
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なにかが消えてなくなるとき、それが結んできた結び目たちも、ともに解けて消えていくだろう。そうやっていくつ結び目が消えても、その消滅は感じられない。
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だからあなたは今、なにかを結んだり、結び目をさらにぎゅっと結んだり、ときにはほどいたりするのだ。
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あなたがいなくなるとき、あなたの結んできた結び目が花の開くようにいっせいにほころんで、解けてゆく。
読んでくれて、ありがとう。