冬の馬・六月の春

作品等見た読んだものの感想・考察。あとエッセイ的なものも。 自分の感じたことを日々の思考や実感と結びついた言葉にするのが目標。 そうやって書いたものが別の誰かの実感とつながってくれたらうれしい。 その人の糧になってくれたらもっとうれしい。

冬の馬・六月の春

作品等見た読んだものの感想・考察。あとエッセイ的なものも。 自分の感じたことを日々の思考や実感と結びついた言葉にするのが目標。 そうやって書いたものが別の誰かの実感とつながってくれたらうれしい。 その人の糧になってくれたらもっとうれしい。

マガジン

  • エッセイ

    冬の馬・六月の春によって書かれたエッセイ、といいつつ、ここには雑文状の文章たちが収納されていく予定です。

  • 【完】刹那的たまゆらエセー

    後から推測するところ、この断片たちの主なテーマは、信じること、忘れること/ 裏テーマとして「なにかを創るとはいったいどういうことなのか」/ 最初に問題設定があったわけではなく、書く中でしだいにテーマが浮上してきた感じです/ そうした即興ゆえ、「テーマ」とは言いつつも、それだけではない外の事柄も巻きこんで、螺旋的に、うねるように、この断片たちは進んでいきました。ひとつひとつのページも、全体も/ そういった「流れ」や「淀み」みたいなものを感じとっていただけたなら、それもまた嬉しさ

  • トラペジウムまとめ

    『トラペジウム』について書かれた文章が入っていきます。

  • ガールズバンドクライまとめ

    冬の馬・六月の春によって書かれたガールズバンドクライについての感想をまとめていく予定です。よろしければ。

最近の記事

  • 固定された記事

エッセイ:世界はあった、かのように、うしなわれて

線より下は、本当のなかに嘘を、嘘のなかに本当を、まじえて書かれる。  以前、「感情移入」という言葉について記事を書いていたことがあった。それがどのページかはここでは書かない。プロフィールをさかのぼってもらえれば、デカデカ「感情移入」を題に含んだページが見つかると思うので、そちらをあたっていただければ。  それを書いている途中で、「感情移入」という言葉の文脈を無視して突貫していることにソワソワしてきたのだった。まちがいなく自分が知る以上の背景のある語だ。なのにそれを今自分の

    • 【めも①】触媒、イメージ、繰り返し

      思わず読み入ってしまう文章のなかには、ついその題名さえ忘れてしまうようなものがある。 ふと息をついて、何を言っていたのか、この文章は何なのかと、思い出したように題名に帰ろうとする。 きっとその文章は、題名を忘れさせるほど私たちの内部に入り込んでいたのだ。あるいは私たちの内部がそこで語っていたのだ。 そのとき、文章は触媒だった。私たちと私たちの内部とのあいだの。 触媒は、それ自体意識されないことによって、触媒となる。 ある文章が触媒になるというのは、文章が後景に追いやられて

      • 【エッセイ】輪廻

        誰にも気づかれずに、胸にしまっておかれた、誰も(自分でさえ)見向きもしないような秘密が、また今日も消えていく。 * なにも古びていきはしない。新しいものもなにもない。はじまりも終わりもここにはないのだから。秘密にさえならなかった果てだ。 ≒ 私たちの心にやってくるのは、二度と戻ってこないものばかり。いつか失われるものと、もう失われたもの。  ≒ 忘れ去られたものだけが、滅びない。思い出されるたびに、「それ」は滅びていく。けれどもそうやって思い出されるたびの滅びのひ

        • 【エッセイ】世界と心の結び目

          花という世界の結び目、時間の流れの中わだかまった小さな渦。私たちの視線は、ときおり、その上で時間を過ごし、世界の秘密がそこにのぞいているような感覚を覚える。 ≒ その向こう側を見たがっているのかはわからないが、私たちはその向こうとこちら側についてしか、語れない。向こうとこちらを行き来して、なんとかそれに触れよう、せめて掠めすぎようとする。 * ほどこうと願うほど、その結び目は硬くなり、からまっていく。ついには私たちの視線も、心も、その結び目に絡まった一部になっていく。

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        エッセイ:世界はあった、かのように、うしなわれて

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          104本
        • 【完】刹那的たまゆらエセー
          100本
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          3本
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          11本

        記事

          【エッセイ】「諦める」ことと「忘れる」こと

          なにかしらを「諦める」、「諦めた」というとき、そこにある状態は奇妙だ。その対象に向かう自分の感情や願望を断ち切ろうとするようでいて、そうやって断ち切ることそれ自体によって、新しい繋がりが生まれるからだ。 ≒ なにかを「完全に」諦めることはできない。別の言い方をすれば、「諦める」という言葉は、それ自体が常に矛盾している。 * 矛盾した状態を意味しているのではない。その言葉が連想させる運動、それ自体が矛盾している。 * 結局のところ、ひとつの絆ができあがってしまった以

          【エッセイ】「諦める」ことと「忘れる」こと

          【エッセイ】記憶の芯

          そのとき、先生が自分に言った表情は思い出せる。その言葉も。だけどその顔ははっきりと思い出せない。 * 言葉がはっきりと響いてくるほど、表情がくっきりとしてきて、それにつれて、そこにあったはずの先生自身の顔がぼやけていく。あるいは、その記憶から無駄が削ぎ落されて、純粋になっていったのだろうか。 ≒ もしそうやってぼやけていくのが純化だとして、そうやって記憶が純粋になっていくほど、それを思い出す瞬間のどこかが、ますます汚らしくなっていくように思える。 ≠ どんな人の顔

          【エッセイ】記憶の芯

          【エッセイ】誰のためでもない代わりに

          なにかを信じるというとき、それはいつも、誰かの代わりにだ。 * 誰の、何の名においてでもなく、代わりに。 ≒ それを信じきれなかった人の代わりなのか、信じなかった人の代わりなのか、疑った人の代わりなのか、憎んだ人の代わりなのか、そもそも信念も疑念も抱いたことのない誰かの代わりなのか。 * 誰の代わりに信じているのかは永遠にわからない。私たちがいなくなっても、その信念が消え去っても、この謎だけは残りつづける。 ≠ その誰かを忘れるほどに信じる感情は強まっていくか

          【エッセイ】誰のためでもない代わりに

          【エッセイ】覚めることのない眠り

          打ち明けることによって、隠れていくものがあり、それを明らかにしたいとでもいうかのように、告白が続々と積み重なっていく。隠れているものはいっそうふくらみ、その闇は濃くなる。 ≒ 目覚めれば目覚めるほどに、深くなっていく眠りがある。醒めているとは、あるひとつの眠りを貫いて、ほかのどんな眠りにも自分を明け渡さないことだ。 * あなたが目覚めなくても、別の誰かがその眠りから醒めるだろう。 ≠ いまだ誰にもたどりつかれたことのない眠りが無数にある。その先にある目覚めも含めて

          【エッセイ】覚めることのない眠り

          【エッセイ】考えることの麻痺

          無意味と意味のないことは、必ずしも一致しない * 私たちの心のどこかが、その都度意味のフリをしている。 ≒ なにか乗り越えなければならない対立が自分の内か外にあるとき、矛盾をどこかにつくりだすことによって、それを乗り越えている。 * その矛盾を見つけてはいけない。見つけた以上は、それを解体しなければならない。けれども、そうやって解体が完了したと見えるところでも、結局別の矛盾をまたどこかに設けただけだ。あたかも矛盾を移動させただけであるかのようだ。 ≠ なにかを

          【エッセイ】考えることの麻痺

          【エッセイ】比喩に潜んだ「弱さ」

          比喩とかたとえとか、とにかくそういったものには、必ずどこかに「弱さ」がある どこかと問うてみてもはっきりとはしないが、 そうやって結びつけられたふたつのもののあいだとか、 そうやって結びつける理由になった類似だとかあるいは経緯だとか、 そうやってそれらを結びつけようとした心だとか、とにかくどこかに、「弱さ」が潜んでいる たとえ話は、ある意味その弱さを隠すことであり、そうやって隠すことによって、その弱さをつくりだすことだ ≒ たとえ話を聞かされたときに、それが上手ければ上手

          【エッセイ】比喩に潜んだ「弱さ」

          【エッセイ】夢とか可能性のはざまについて

          私たちは他人についても世界についても夢を見ているに等しい。 ≠ なにかをできるようになるには、なにかができなくならないといけない。可能は不可能と裏表で、そうして不可能になったものを、乗り越えた私たちは知ることができない。 ≒ なにを乗り越えたのか、私たちが知ることはない。だから言葉によってそれを、せめてその陰影を、とらえておこうとする。 * なにかを怖いと感じるとき、その怖さに対して身構えることそれ自体が、その恐怖を呼び出すような節がある それが積み重なるうち、ど

          【エッセイ】夢とか可能性のはざまについて

          【エッセイ】わからなさから触れてくる

          自分の動機とか内面とか呼ばれるもの、感じているものを、まったく知らない言葉で書かれているところに出会ったときの、本能的な感情の動き。 ≠ わからない。さっぱり理解できない。けれどもなにかが触ってくる。その言葉の理解できるところと、わからないところの綾を通して、その感じは、自分のことだという感じは、触れてくる。 * その言葉がわかるということと同じくらい、それがわからないということが、その言葉が自分のことであるためには、つまり、誰のものでもなく感じられるためには、必要な

          【エッセイ】わからなさから触れてくる

          【エッセイ】(絶対的に)「できる」「できない」

          すべてを滅ぼせるような能力をもった存在は、きっと、それだけの能力をもっているために、すべてを滅ぼさない。 * すべてが滅んでしまえば、その力の行使先がなくなって、その力自体が無意味になってしまうからだ。その力それ自体が失われてしまう、と言い換えてもあまり差しさわりがないくらいには。 ≒ それよりは、その能力の一端を小出しにしながら、ゆっくりと時間をかけて、その滅ぼせるはずの「すべて」と共に、徐々に滅んでいくだろう。それが、その能力が能力として生きながらえる唯一の道であ

          【エッセイ】(絶対的に)「できる」「できない」

          【エッセイ】解体と弛緩

          どこかが痛むとき、その痛みを私たちは邪魔に思う。けれども邪魔なのはむしろ私たちのほうではないか。私たちがいなければ、痛みは痛みにならなかったはずなのだから。 * 体と私が、痛みを介して、お互いに自分の障害となる。痛みのむこうとこちら側。 ≒ 私たちがその都度言いたがっていることと、私たちが私たち自身から聞きたがっていることは、どこかズレている このズレを極小にできるのとが文章の上手下手ということなのだろうけれど、それを極小にすることに、なんの気兼ねもないということはな

          【エッセイ】解体と弛緩

          【エッセイ】心を置く

          ある感情が湧いてきたなら、それをあるがままにさせておく。そこに入り込もうとしないことによって、その感情に場所を譲る。 ≒ どんな感情も、私たちにはそれを感じきることはできない 私たちは私たちである以上、純粋に喜びも悲しみもしない それを感じること、それ自体がどういうわけか不純さを呼び込む だから、感じることは、感じないことでもある。すくなくとも、感じないことをそのどこかに含んでいる ≠ 風に吹かれながらふと心地よいと感じるとき、それを感じているのは誰だろうという問いが

          【エッセイ】心を置く

          【エッセイ】静寂性

          どんなふうに黙ってみても、求めていた静寂はやってこない。 ≠ どんな静寂を求めていたのかわからないけれど、ここにあるものは求めていたそれでないことははっきりと感じられる。 ≒ 今何が、どんなふうに黙り込んでいるのか。耳を澄ましたとたんに消えてしまう。 * それをずっと昔に、手放したことを覚えているような気がする。 * はっきりとそれは自分のものだと言えないモノについてしか、自分のモノだと言うことができない。 ≠ 自分のつくった喧騒の隙間を、無数の静寂が何と

          【エッセイ】静寂性