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「候補者 = Candidate」なのだろうか。

天気がいいので散歩をしていると、衆議院選挙の看板が立っていました。
選挙のたびに思うのは……

「『候補者』と『candidate』では、イメージ違いすぎるのではないか?」

ということ。

<日本語>と<英語>のイメージ差が大きなものの代表格なんです。

「候補者」という文字をみると、「あー、立候補した人なんだな」と思います。
もう少しちゃんと漢字を分解してみると、

「候」= 待つ
「補」= 地位につく
「者」= ヒト

つまり、なんとなく(議会などの)椅子取りゲームのイメージがあります。

これは、約二百年ほど前、明治あたりに英語の candidate の訳語としてつくられたようです。もちろん、英語も意味・・はおなじです。ただし、文字から見て取れるイメージがずいぶんと異なるのです。

じつは英語の candidate は、「白く光り輝く」という意味をもつラテン語 candeo が語源。ラテン語は古代ローマの公用語。古代ローマ二千年以上前に行われていた<選挙>のしきたりが、「候補者」をあらわす candidate という綴りのなかに潜んでいるのです。

飾りのない純白カンディドのトーガをまとって選挙会場であるマルス広場の演壇の上に立てば、ローマではそれが立候補の意思表示になる。
  塩野七生『ローマ人の物語 II』新潮社

これは「白く光り輝く」ロウソクの candleキャンドル や、室内を明るく照らす chandelierシャンデリアと同語源。

また、意外なところでは  candor 正直さ、誠実さ」や candid正直な、誠実な」もおなじ仲間です。白日はくじつの下にさらしても、まっさらなイメージなのです。

どうでしょうか。

日本の議会選挙の「候補者」のイメージと、英語の「candidate」のイメージ。

211019_02_候補_candiate

違いすぎませんか?

大学入試では、一語一訳で覚える英単語。
英語と日本語がなんとなく同じものをさしているようにみえますが、意外と<時間>や<空間>の奥行きが異なっていることが多いのです。

歴史的な文脈が違う、というのを実感できるのが、語源の醍醐味でもあります。

「ことばというものが、世界をいかに違った角度、方法で切り取るものか」
  鈴木孝夫『ことばと文化』岩波新書

英単語を見つめるときには、いつでもこのコトバを噛み締めるようにしています。

日々是精進、無知の知。感謝。明日もイイ日に。

◆最終更新
2021年10月19日(火) 11:17 PM

※記事は、ときどき推敲します。一期一会をお楽しみいただければ幸いです。

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