【グラストンベリーひとり旅④】チャリス・ウェル。聖なる井戸の音は子宮に還る。
私が泊まった宿は、おそらくチャリス・ウェルに最も近い場所。
歩いて3分ほど(宿と同じ道沿いにある)の、チャリス・ウェル。
◉Chalice Well
ここは庭園であり、全体がスピリチュアルなパワースポットらしい。
よく下調べをしないまま訪れたが、スタッフがとても親切で穏やかな笑顔で、パンフレットを指差しながら園内について説明してくれた。
入場料は£5。
ちょうど穏やかな晴れの日で、黄色になった木々と空の青さが絶妙にマッチしていた。
ロンドンでも初雪が降った翌日だったので、雪が残っている植物もたくさん。
11月後半のグラストンベリーはとっても寒い。
その水が流れてくるここは浅いプールのようになっていて、夏場は足をつけるとひんやり気持ちいいそうだ。
ダウンジャケットを着ていても寒い私の横で、何の躊躇いもなく裸足で入っていく男性!!
恐れ入りました。
鉄分がたっぷり入った自然の湧き水がライオンの口から絶え間なくあふれている。
この水は飲めるそうだが、一度に大量摂取することはおすすめしていないそうだ。
手のひらで少しすくって飲んでみると、その名の通り「鉄味」!
もしここを訪れたら、The鉄!のこの水を味わってみていただきたい。
こじんまりした、それほど広くない敷地のチャリス・ウェル。
至る所に見どころがあるのだが、中でも一番ここで有名なのがこの井戸だろう。
この井戸は、イギリスで最も古い井戸だそう。
約2000年もの間、水が流れ続けているらしい。
2000年…。
気が遠くなるような年月だ。
今も尚、絶え間なく流れ続ける。
1日約110000リットルの水が流れているという井戸。
私はこの井戸の前に立った時、なんとも言い表し難いのだが、
「この世からちょっとトリップする」
みたいな感覚に引き込まれ、しばらくの間何もせずにただ目を閉じてその音を聞いていた。
高くない音、どちらかというと低音の部類。
井戸の中で水が流れて音が聞こえてくるのだが、
「この音何かに似てるんだよな、知ってるはずなんだけど何だろう?」
そう思いながらその音を聞き続けた。
あっ。
思い出した、という感覚に近いかもしれない。
この音は、母のお腹の中の音だ。
子宮の中でずっと聞いていた音。
知らないはず、覚えていないはずの音を
「思い出した」
という感覚だったのだ。
この井戸の開けられている蓋に描かれているのは、”ヴェシカピシス”と呼ばれる、円が2つ重なってできた独特のサイン。
私が普段使っているオラクルカードにも1枚これが含まれている。
これが象徴するのは「両極にある2つのものの統合」。
男性性×女性性、物質世界×精神世界、天上界と地上界など。
これらの統合のサインであり、バランスを意味する。
このチャリス・ウェルはとても静かで優しい空気で包まれている。
鳥のさえずり、風の音、木々が揺れる音など、自然が奏でるオーケストラを心ゆくまで聞いていられるのだ。
「聴く」という漢字を使いたくない気持ちになるのは、無意識でそれらの優しいハーモニーが耳からすっと入り、魂へ届いていたからだろう。
自然に入ってくる、包まれている安心感。
私がこの井戸にいる時時ちょうどまわりに誰もおらず、私は井戸の前に腰をおろし、胸の前で両手の平を合わせ、しばらくの間瞑想した。
私の身体は38歳で、この世に私として生命を与えられてからたった38年しか経っていないが、この母親の子宮の中のような音を聞いていると、「前世」というものに触れたような気がした。
38年というのは”私として”存在している期間で、私になるずっとずっと前からこの魂は一緒に旅をしているのだ。
「身体はこの世の乗り物」と表現されることがあるが、まさにその感覚だった。
そう感じていると、この子宮の音は私の母の子宮も含まれているが、その前、さらにその前も私の魂は誰かの子宮の中にいたことがあるのだ。
何回輪廻転生を繰り返してきたのか未知であるし、そもそも生まれ変わりとか前世というものが存在するのを否定する人もいるだろう。
しかし、私が感じたことがすべてであり覆しようのない感覚なのだ。
私は確かにこの井戸の前で、「子宮」と「前世」の存在に触れたのだった。
月並みの言葉だが、この世に生を受けるということはなんとありがたいことだろうか。
私が今回生まれた日本と遠く離れたこの井戸に、今この時に縁があって訪れ、自然からたくさんのインスピレーションと気付きをいただいている。
私は私であることだけで十分だし、何をしてもいいし、何をしなければいけないということもない。
これの繰り返しなんだと思う。
朝の開庭時間に合わせてここにやってきたのだが、この井戸周辺で過ごした時間が一番長かった。
井戸の前から場所を変え、少し離れたゆりかごにも思えた木のベンチに腰掛けてまた、子宮の音を聞きながら目を閉じて瞑想した。
しばしば道行く人の足音が聞こえるが、みなさんとても静かで、大声で話している人は誰一人いなかった。
ここは観光客だけでなく瞑想やヒーリングをしにやってくる人も多いそうで、全体的にそういった人への心遣いと思いやりが行き届いた場所だと感じた。
言わずと知れたあのビートルズのジョンレノンが、名曲Imagineの着想、インスピレーションを得たと言われる「エンジェルシート」。
ここにジョンレノンが腰掛けていたのか。
私もレノンと同じように同じ場所に腰掛けてしばらく目を閉じてみた。
ここであの名曲が生まれたのも納得するほど、優しい。
寒いはずなのに、流れる時間と空気がとてもあたたかく優しい。
ここも優しく水の音が流れる。
園内の至る所にアンモナイトのシンボルが。
出口の方向へ足を進めると、大きな木が2本そびえ立っている。
これは、「男性性」と「女性性」を統合するシンボルだそうだ。
どちらが優れているなどの優越など、存在しないし無意味だ。
たしかなことは、この2つがなければ生命は誕生することができないということ。
私たちの中にも、男性性と女性性は両方存在している。
そのバランスをとっていくことが健康であれるひとつの秘訣であり、大切なことなのだ。
緑の芝生が美しいエリア。
先述したヴェシカピシスのシンボルが再び。
大きく、やさしく穏やかに流れる水。
この庭園には「水」がたくさん流れている。
水はとどまらない、とどまると苔が生え淀む。
ここの水は流れ続けているから故に循環していて、空気もクリアで常に浄化が行われているのだ。
気付けば、入園から3時間も滞在していた。
時間を忘れてしまうくらい、素晴らしい場所。
出口付近にショップがあった。
このショップは品揃えが豊富で、ヒーリング関係のグッズが一通り揃っている。
オラクル・タロットカードの種類も豊富。
ポストカードや天然石、チャクラ関連のグッズも。
私はここで、ハートチャクラに対応するグリーンのキャンドルを購入した。
しばらくグラストンベリーで過ごす中で、やはり私のハートチャクラが相当ダメージを受けていることに気付いたのだ。
人間、知らず知らずの内に無理をしているのだと思う。
いくら「無理しない」と努めていたって、ほんの少しの歪みが蓄積することでバランスを崩してしまう。
だからこそこの世にはたくさんの癒しのツールが存在している。
ヨガや瞑想は、私たちも日常に取り入れやすい。
私もヨガは以前長い間継続していたし、時たま瞑想もするが、その頻度では追いつかないくらいのダメージに気付けた機会だった。
自分の身体は2つとして存在しない唯一無二の、かけがえのないものだから。
この命尽きるまで、長い付き合いが約束されたパートナーだ。
もっともっと自分を労ろう、本気で大切にしようと、この素晴らしいチャリス・ウェルを後にしながら心に誓った。