パリ節約ごはん : パスタ焼きそば。
「郷に入っては郷に従え」をモットーにフランスで食事を作っているため、お醤油やみりんなど日本の調味料は買ってもいなければ、航空便や船便で持ってくることもなかった。
フランス人だってフランスの食材で三食生活してるんだから、2年半くらいならなんとかなるでしょ。
そう思っていた。
でもね、やっぱり私の中のDNAが日本の味を求めるときがやってくる。
突如、体の奥深くからぶわ〜っと「なんでもいいから日本食が食べたいぃぃ!!」っていう欲望。
だからといって帰国するわけにはいかないし、日系食材が豊富に揃う京子(2区)に行くのもなんだか負けた気がする(なんの勝負?)。
というよりも、こちらで買う日本食材は当たり前だが高い。
なので、ここでそれらを使って日本と変わらない食事をしようと思うと、「パリ節約ごはん」というものがもやは崩壊してしまうレベルなのだ。
そこで私は考えた。
できれば家にあるもので「日本食っぽいもの」を作ってみようではないか、と。
あくまでお金をかけずに、でも舌も心も満たされるものを作ろうとはなんとも無謀な挑戦とも思えるのだが、ネットで探してみると「これなら我が家でも!」というものが見つかった。
それが、パスタ焼きそばだった。
この料理は平たくいえば、麺はパスタ、具や味付けは焼きそばというもの。
パスタの麺で焼きそば気分が味わえるはずがない!
と疑ってかかっていたのだか、
「焼きそば麺とパスタ麺は材料がほぼ同じなのでやってみたら案外いけますよ」
というたくさんの口コミ目にしたことにより、作る決心がついた。
このときは、自分の中の何かが限界を迎えていたのか、ガレットやらムニエルやらコルドンブルーやらそういうものは一切食べたくなかったのだ。
材料と作り方
材料(3人前)
パスタ麺 3人前
ウスターソース 100cc
和風だしパック 2袋
塩、胡椒 少々
油 少々
お好みの具
我が家は夫婦揃って大食漢のため、大抵3人分を作り、それを2人で食べるというスタイルだ。
もし適量を食べるご夫婦がいらっしゃったら、この数字から少しずつ引いていただけるとなんとかなると思う。
あくまでも材料の量は目安なので。
では作り方にうつる。
①パスタを茹でる
本当にこれが焼きそばになるのだろうかという疑いが全く晴れない光景。
②具を炒める
ちょうど冷蔵庫にキャベツとベーコンがあったので、それを炒める。
あ、この匂い、焼きそばだ!
焼けたベーコンとキャベツのにおい、これはまさにいつも日本で焼きそばを作っていたときにかいでいたもの。あーなつかしい。
焼きそばを作っている気分になる。
③パスタを具に投入し味付け
茹で上がったパスタを具を炒めていたフライパンへ投入。
そしてクライマックスの味付け作業に入る。
このウスターソースはフランスで買ったもの。
そして茅乃舎の出汁パックは我が家が「唯一」日本から持って来た日本食調味料だ。
これは出国する直前に、海外経験のある前職の先輩がくれたもの。
そのときには、「ありがとうございます♡」といいながら、心の中では「使うことあるのかなぁ。」なーんて強気なことを思っていたのだが、まさか2ヶ月足らずでお世話になるとは。
しかも焼きそばで。
いずれにせよ、この出汁パックを渡してくれた先輩には今となっては大変な感謝しかない。
先輩、ほんとーーーーーーーにありがとう。
やっぱ経験者をなめたらあかん。
話はそれたが、作り方の続き。
ウスターソースを入れ、出汁パックを2袋贅沢にまぶす。
本来は1パックで十分らしいのだが、味見をしてみるとこちらのウスターソースは酸味が日本のものより強く、それを緩和されるためにもう一袋追加してみることにした。
(ちなみに和風だしの顆粒でも全く問題なしとのこと。というより私がみたレシピはそれ少々と書かれていた。)
そして塩胡椒で味を整えて完成したのが、こちらのパスタ焼きそばだ。
どっからどうみても焼きそばである。
ウスターソースの影響なのか、味は少しピリリとしており、日本の焼きそばのようなまろやかさはないのだが、それでも食べすすめて行くと焼きそばそのものに感じた。
心配だったパスタ麺も、途中からはそのことを忘れてしまうほどよく馴染んでいた。
もちもちとしていて、全く違和感がない。
辛いものが苦手な夫には、少々刺激が強すぎたらしく最後まで食べられないといって残していたが(残りはもちらん私が貰った)、私には十分すぎるほど焼きそばの味が堪能できたように感じた。
たしかに前述したように、少しピリリとした味は舌に残る。
だが、たまに鼻に抜ける出汁の風味が、私の食欲をどんどん加速させるのだ。
あ〜、これだよ。この味。
私のDNAが今、喜びの舞をしているのがわかるわい。
和風だしが自宅にあれば、フランスでもソース焼きそば(仮)を楽しめることがわかったが、この和風だしさえも、ここにいては大変な高級食材のため、なかなか頻繁に利用するのは少し憚られる。
ただ、10ユーロ近くも払ってモノプリなどのスーパーでサーモン寿司を買う気にもなれないし、和食を食べにいくにもかなりの出費が発生するため、それに比べるとなんて有難い料理だろうと心から思う。
私のように、郷に入っては郷に従えを教訓にするがために、日本から何も持っていかないという方もきっといらっしゃるとは思うが、「和風だし」だけはどうかキャリーケースなどに忍ばせることを強くすすめる。
人間やはりどうしたって育った町や国の味が恋しくなるときがやってくる。
そのときに和風だしがあれば、そのままお湯に溶いて飲むだけでも満たされるだろうし、このようにフランスの調味料を使いながらでも、料理をわずかながら「和風」へと変身させることができるのだ。
一時帰国をする予定はまだないが、その際には必ず「出汁パック」だけは買い忘れないようにと今から心に誓っている。
やっぱりたまには和食が食べたいよ。
日本人だもの。