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料理家のセブ島留学。フィリピン料理「アドボ」を20人分作ってみた
フィリピンの家庭料理「アドボ」を作って食べてみたい。
これが、セブ島に留学した目的の1つです。アドボとは日本の親子丼や肉じゃがに匹敵するくらい定番の家庭料理なんです。
今回はエッセイですが、最後にレシピも載せています。
先週末、語学学校の在校生やフィリピン人のハウスキーパーさん総勢20人に料理をふるまう機会をいただきました。
不安と期待が交錯するチャレンジでしたが、終わってみれば一生忘れることのないであろう思い出の一つになりました。
|煮込み料理をごはんにかけて
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そもそも数年前、「煮込み料理をごはんにかけて」というタイトルのレシピ本を買ったんです。色々な国の煮込み料理が紹介されている中で、日本の豚の角煮に似た味付けで、買いやすい材料で作れるものがアドボでした。
フィリピンの代表的な家庭料理で、肉や野菜を酢、醤油、ニンニクなどで漬け込んで煮込んだ料理全般のことを「アドボ」と言います。スペイン語で「漬け込む」という意味の「adobar(アドバール)」が語源です。
フィリピンに行った事がなかったので、どんな味になるのかと楽しみに作ったのですが、おいしいけど日本の豚の角煮を鶏肉で作ったバージョン?と何が違うんだろう…?という疑問と好奇心が湧き上がりました。
いつかフィリピンに行ったら本物のアドボを食べてみたい…!と願うようになったんです。
|塩気と酸味の強いビーフシチューみたい
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まず、作る前に実際のアドボを食べて研究をしよう…!と思い、レストランでオーダーしてみると、思っていた以上に素敵な盛り付けで出てきました。
ペロリと食べきれそうな見た目ですが、日本人にとっては塩辛すぎて半分しか食べられませんでしたが…。得てしてフィリピン料理は塩辛いのです。
その味わいは、豚の角煮というよりも「塩気と酸味の強いビーフシチュー」という表現のほうが合う気がしました。
もちろん家庭料理なので、それぞれの「うちの味」があるのでしょうけど、実際に食べてみたことで味のゴールが見えました。
|海外のスーパーでの買い出し「あるある」
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いざ20人分の材料の買い出しをするところからドキドキとワクワクの連続でした。
スーパーに行ってみると手羽元とは別に「手羽元っぽい部位」が売っていて迷ったり、グラム売りなのでいちいちお店の人に「これで何gくらいある?」と確認したり、味の決め手となるお酢が透明ではなくポカリスウェットのように白濁した見た目で動揺したり…。
今までに20人分の料理を作ったことがない上に、一度しか作ったことのないレシピを、使ったことのない調味料で味付けして、果たして出来上がる料理はおいしくなるのか…?という不安に飲まれそうでした。
失敗したら、みんなの夜ご飯が台無しになるので…。
海外のスーパーで買い物をするのはとても楽しいのですが、作った料理をほぼ初対面の人たちに食べてもらうとなると、プレッシャーを感じるものですね。
ただ、それ以上の好奇心でこれから始まるクッキングタイムがますます楽しみになるお買い物でした。
|料理は言語。作ってみた&食べた感想
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味のベースは日本人にも馴染み深い「しょうゆ・酢・砂糖」の組み合わせなのですが、主にお酢の味や食材の味の違いが絶妙にフィリピンらしい味わいを作っているなと感じました。
最初は、こんなにお酢をたっぷり入れたら酸っぱすぎるんじゃないの?と思ったんです。でも、煮込むほどに酸味がおさまりコクが出て、まるでケチャップを入れたような味わいになりました。
20人前なので思ったよりも時間がかかり、最終的に「塩気と酸味の強いビーフシチュー」みたいになるまで煮込むことはできなかったのですが、お酢の効果で手羽元はホロホロになり、暑さが吹き飛ぶさっぱりした味でごはんがグングン進みました。
そして、大人も子供もフィリピン人のメンバーからも「おいしい!」の声をたくさんもらい、胸をなで下ろしました。
|フィリピンらしい味って、結局なに?
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結局のところ、フィリピンらしい味とは、料理に用いる材料だけの話ではないんだなぁと感じました。
どんな空気感の中で誰(国籍とかメンバー)とどんなシーンで食べるのかも味の印象を大きく左右するもので、つまりは「五感で食べる」ってことです。
全く同じ材料の料理を日本で作って食べるのとフィリピンで作って食べるのとでは、気温や湿気はもちろんのこと、その国独特の空気感が違いますし、フィリピン人と一緒に食べ、窓の外に南国っぽいバナナの木が見えれば、自ずと「フィリピンの味だなぁ」と感じるものなのでしょう。それがまた、料理の面白いところですもんね…!
料理を通して新しい発見や体験ができることが心底楽しかったですし、「同じ釜の飯を食う」のように心と心がつながる感覚になりました。料理は、ひとつの「言語」と言っても過言じゃないかもしれません。
あぁ、やっぱり料理は楽しい。
そして料理をしながらもっとスムーズに英語で説明ができたら、楽しさは倍増するでしょう。そのためにも、料理のYoutubeを英語で始めるのが帰国後のmust事項です。
|やりたい事は、人に言い続けるべし
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最後に、今回の料理教室企画はわたしの力だけで実現できたわけではありません。
セブ島への留学を提案してもらっただけでなく、企画から当日の買い出しから写真撮影まで全面的にサポートしてくれた友人もりやんの視点から書かれたnoteも紹介します。
冒頭書いたように、私も、30代後半にキャリアについて大きく悩んでいたこともあり、彼女の気持ちがなんとなくわかる気がしました。
そして、私が今後、やりたいことの1つに、日本で素晴らしい技術を持っているスペシャリストの技術や、プロダクト、サービスが、海外の人にまで届いていくお手伝いができたらと思っていたこととの大きな重なりを感じます。
それもあり、彼女の次の挑戦との出会いは、私にとっても運命的なものを感じるようなところがありました。私の関わり方次第では、私にとってもとても意味のある取り組みになるだろなと思ったのです。
たしかあれは直島で1日の最後に銭湯に入った後、宿舎に戻るバス停の前でのやりとりだったと思うのですが。
なっちゃんの冒頭のテーマ感を聞かせてもらった際に、私の方で、ここがいいんじゃないと浮かんできたイメージのもと、セブ島にある語学学校、クロスロードの岡本夫妻を紹介させてもらいました、
もし今やりたい事があるけれど自分では何をどうすればいいか分からないと悩んでいる人がいたら、「やりたい事を色んな人に話してみる」のを強くオススメします。
わたしの場合も、まさか今回の企画を含めた留学先を具体的に提案してもらえるとは思ってませんでした。思わぬところからチャンスやご縁が飛び込んでくるものなんだ...と痛感しました。
そして、その流れに乗っかるのは正直とても怖いです。でも、コンフォートゾーンを抜けると、そこには新しい世界への扉があるのだとしみじみ感じた経験でした。
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最後に、アドボの材料と作り方を書いておきますので、良かったらぜひ作ってみてくださいね!
|材料
《2人分》
鶏肉 4本(200〜300g)
ゆで卵 2個
玉ねぎ 1/2個(100g)
にんにく 1かけ
油 大さじ1/2
★調味料
しょうゆ 大さじ1
砂糖 小さじ1
酢 大さじ3
水 200ml
ローリエ、黒コショウ 適量
|作り方
1.玉ねぎとニンニクをみじん切りにします。
鶏肉に塩(分量外:適量)を振って10分おきます。キッチンペーパーで浮き上がってきた余分な水けをふきとります。ゆで卵を作っておきます。
2.フライパンに油をしいて、鶏肉の両面をこんがりするまで焼きます。塩(分量外:適量)をふって味をつけます。
3.鶏肉を端によせて、玉ねぎとニンニクをしんなりするまで炒めます。
4.水、しょうゆ、酢、砂糖、ローリエ、黒こしょうを入れて、沸騰したら弱火にして15分煮込みます。
5.蓋をあけて、トロッとするまで中火で煮詰めれば完成です。ごはんにかけて、半分に切ったゆで卵を添えて召し上がれ。
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