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Ton Koopman Harpsichord Recital

 先週の土曜日、高崎芸術劇場音楽シアターでTon Koopmanのチェンバロリサイタル。今回の来日でチェンバロのみを演奏する公演は高崎だけとのこと。

楽器モチーフのオーナメントが飾られていた

 スヴェーリンクからバード、ヴァレンテ、ブルーナにバッハ。パーセルに、ヘンデル。ファンタジアとトッカータがうれしい。
 語りはなく、弾き終わるたびに立ち上がってはにこやかに礼。そしてひたすら鍵盤に独り向かい合い、生き生きと対話する。言葉のない空間で天に昇るかのように響き渡る音、原体験に近い音楽、いつの間にか疲れた心に清い水が流れていくよう。

 この日のチェンバロはルッカース作をモデルとした82年製、施された意匠も音色も美しい。弦を叩くプレクトラムは時に、まるで群衆犇めく雑踏のような迫力のリズムを生み出す。ああ、典雅な印象の撥弦楽器だけれど、アグレッシブさを併せ持つピアノの祖先なのだなあ。素晴らしい演奏を前に在り来たりでしょうもない感想がふと頭を過った。

 休憩を挟み、後半はクープランのシャコンヌから。バッハ、デュフリ。悪魔のフォルクレ。本編ラストはヘンデルHWV430、充実のプログラム。
 万雷の拍手は鳴り止まず、捌けてはまた出てのトリプルアンコールに。曲名を自ら発しては弾き、会場がそのたびに惜しみない喝采をおくる。穏やかに満ちている。

 何百年と受け継がれてきたもの、それが現代にひらかれ息づき、その場にもたらされるもの。音楽シアターの音響も素晴らしい。得難い時間だった。

 帰りしなにもうひとつ、駅そばの高崎市タワー美術館へ。収蔵作品展「春夏秋冬◇四季巡り」、高崎音楽祭の時に垂れ幕を見かけて気になっていた。
 中島千波や東山魁夷らの近現代日本画作品をメインに、茶器等も展示されてコンパクトながら見応えがある。観覧料金一般200円は流石に気が引けてしまう安さで、ミュージアムショップへ。シェルの美しい栞を手土産とした。

駅の反対側にあったツリーはモダンだった

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なつめ
なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」