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グリーグが語る、《トロルドハウゲンの婚礼の日》作品65-6


Note上で展開する、架空のラジオ番組《クラシック・エトセトラ》。
この番組では、毎回異なる音楽家がパーソナリティーを務め、
自身のお気に入りの曲と、その曲にまつわるエピソードを語っていきます。
今日の担当は、作曲家のエドヴァルド・グリーグさんです。
(お話は史実に基づき構成しています)



こんにちは、ノルウェー出身のエドヴァルド・グリーグです。

若き日のグリーグ


今日は、僕と愛する妻ニーナにとっての大切な曲を
皆さんに紹介しようと思います。
曲は《トロルドハウゲンの婚礼の日》といいます。


いとこだった妻ニーナとは
僕が24歳、彼女が22歳の時に結婚しました。

グリーグとニーナ(1899年)


彼女との結婚は僕の人生に
ノルウェーの自然のような深くて力強いエネルギーをもたらしてくれました。
結婚した年に、僕は《叙情小曲集》っていう作品を書き始めました。
これは、ピアノのための小さな作品を集めた曲集です。
僕の心が思い描いた物語の風景、目の前に広がる自然の情景、
その一つ一つを音楽にしたような作品です。

《叙情小曲集》第4集の表紙

今日紹介する《トロルドハウゲンの婚礼の日》も、
この曲集(第8集)の中の作品として発表した曲です。

もともと、この曲は、ある大切な友人の誕生日のために書いたものなんです。
僕は、曲の最初を素朴で温かな行進曲風にしています。
友人の誕生日をお祝いするってすごく素敵なことですよね。
お祝いされる方もだけれど、お祝いする方もワクワクしますよね。
嬉しい気持ちを抱えてみんなが集まってくる、
そんな幸せな情景を描いたんです。

 ヴェーリングスフォッセン©︎Kenny Louie – originally posted to Flickr as The Vøringfoss


そんな気持ちを込めたからか、僕もニーナもこの曲を気に入ってしまって・・・
僕たちの結婚30周年祝いの時にも、
この曲を僕たち自身の祝いのために使ったんですよ。
パーティーは、
ノルウェーで最も有名な滝ヴェーリングスフォッセンを目の前にした
山の上のホテルで行ったのですが、
大自然を背にした庭にテーブルをたくさん置いて・・・
どこまでも続く大きな夜空の下で、
200人以上の合唱団がお祝いの歌を歌ってくれた
夢のような美しい一日でした。

あ、曲のタイトルの「トロルドハウゲン」っていう言葉、
皆さんにとっては、聞き慣れないと思います。
それもそのはず!
これは、僕がつくった「トロル」と「丘」を組み合わせた造語で、
僕たちの家、そう、僕の最高傑作であるニーナと僕の家の渾名なんですよ。

エドヴァルドとニーナ・グリーグの家「トロルドハウゲン」©︎Andreas Sandberg 

だから、この曲を出版するときに、
僕たちの結婚30周年のお祝いと
僕とニーナのこれからの幸せを願って
《トロルドハウゲンの婚礼の日》という名前にしたんです。
すごくいい名前だと思いませんか。


それでは、さっそく《トロルドハウゲンの婚礼の日》を聞いてください。
ピアノは、ヴァルター・ギーゼギングさんです。


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夏目ムル
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