グリーグが語る、《トロルドハウゲンの婚礼の日》作品65-6
Note上で展開する、架空のラジオ番組《クラシック・エトセトラ》。
この番組では、毎回異なる音楽家がパーソナリティーを務め、
自身のお気に入りの曲と、その曲にまつわるエピソードを語っていきます。
今日の担当は、作曲家のエドヴァルド・グリーグさんです。
(お話は史実に基づき構成しています)
こんにちは、ノルウェー出身のエドヴァルド・グリーグです。
今日は、僕と愛する妻ニーナにとっての大切な曲を
皆さんに紹介しようと思います。
曲は《トロルドハウゲンの婚礼の日》といいます。
いとこだった妻ニーナとは
僕が24歳、彼女が22歳の時に結婚しました。
彼女との結婚は僕の人生に
ノルウェーの自然のような深くて力強いエネルギーをもたらしてくれました。
結婚した年に、僕は《叙情小曲集》っていう作品を書き始めました。
これは、ピアノのための小さな作品を集めた曲集です。
僕の心が思い描いた物語の風景、目の前に広がる自然の情景、
その一つ一つを音楽にしたような作品です。
今日紹介する《トロルドハウゲンの婚礼の日》も、
この曲集(第8集)の中の作品として発表した曲です。
もともと、この曲は、ある大切な友人の誕生日のために書いたものなんです。
僕は、曲の最初を素朴で温かな行進曲風にしています。
友人の誕生日をお祝いするってすごく素敵なことですよね。
お祝いされる方もだけれど、お祝いする方もワクワクしますよね。
嬉しい気持ちを抱えてみんなが集まってくる、
そんな幸せな情景を描いたんです。
そんな気持ちを込めたからか、僕もニーナもこの曲を気に入ってしまって・・・
僕たちの結婚30周年祝いの時にも、
この曲を僕たち自身の祝いのために使ったんですよ。
パーティーは、
ノルウェーで最も有名な滝ヴェーリングスフォッセンを目の前にした
山の上のホテルで行ったのですが、
大自然を背にした庭にテーブルをたくさん置いて・・・
どこまでも続く大きな夜空の下で、
200人以上の合唱団がお祝いの歌を歌ってくれた
夢のような美しい一日でした。
あ、曲のタイトルの「トロルドハウゲン」っていう言葉、
皆さんにとっては、聞き慣れないと思います。
それもそのはず!
これは、僕がつくった「トロル」と「丘」を組み合わせた造語で、
僕たちの家、そう、僕の最高傑作であるニーナと僕の家の渾名なんですよ。
だから、この曲を出版するときに、
僕たちの結婚30周年のお祝いと
僕とニーナのこれからの幸せを願って
《トロルドハウゲンの婚礼の日》という名前にしたんです。
すごくいい名前だと思いませんか。
それでは、さっそく《トロルドハウゲンの婚礼の日》を聞いてください。
ピアノは、ヴァルター・ギーゼギングさんです。