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rasw
科捜研の砦 を読んで
1話目『罪の花』
科警研の尾藤の仕事ぶりになんだかもやもやしながら読み進めたが、科捜研の砦こと土門が現れることで、私も尾藤も心が晴れやかになる。
土門誠という人物は、不愛想だけれど、科学捜査に対する真摯な態度がかっこいい。愛想のない頼れるスーパーマンのような存在。そんな存在をどこかで待ち望んでいる自分がいるんだろうな。彼の裏表のない実直な姿がとても魅力的に思える。
2話目『路側帯の亡霊』は、交通捜査課の三浦のイライラから始まる。1話目の尾藤の時もそうだけれど、なぜ、この登場人物たちにもやもやするのか。それは、自分に似たところがあるからだろう。
自分の生き方や仕事への取り組み方に疑問を持っている。その不安が、文章から伝わってくる。でも、この物語はそんな人物たちを多面的に描いてくれる。だから、自分も救われたような気分になるのだ。
3話目以降も、科捜研という科学的な切り口の面白さと、人間を深く見つめるドラマ的側面が合わさってとても魅力的な物語になっている。
そんなスーパーマンのような彼の、別の側面を見せてくれるのが最後の『神は殺さない』だ。そして、つらい日々が続いたとしても、私たちは、互いを支え合うこと、正直でいることを諦めたくない生き物なのだな、と思う。
土門誠のその後を描いた『最後の鑑定人』は、未読なのでこれから読むのがとても楽しみだ。
蛇足かもしれないが、この本は、表紙の手触りがとてもいい。なんというか安心感がある。紙の本はやっぱりいい。