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ハドリアヌス帝の政治の方向性をあらわしたアドリアーノ神殿
今日、古代ローマ五賢帝の中でも非常に評価の高いハドリアヌス。
しかし、当時の元老院議員の間ではかなり評判が悪かったようです。
先代トライヤヌス帝の時代にローマ帝国史上最大となった領土のうち防衛があまりに困難な属州メソポタミアとアルメニアを放棄したことが領土拡大に貢献した元老院議員の気に食わなかったからか、意見が相違する執政官経験者を殺害したり身内を自殺に追い込んだからか。はたまたギリシア文化を好み美少年を溺愛したことが良くなかったのか。
そのため、138年にハドリアヌス帝が亡くなった後、歴代の皇帝のように神格化することを元老院が強く反対します。
しかし、養子であり後継者であったアントニヌス・ピウス帝が元老院を説得し、ハドリアヌス帝を神格化することに同意させたため、ネロ帝のように暴君として記録抹殺刑にあうのを免れました。
ローマには、このようにしてやっとのことで神格化されたハドリアヌス帝に捧げられた神殿の遺構が今でも残っています。
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先に亡くなり神格化された妻に捧げるためにハドリアヌス帝自身が神殿の建設を開始したとも言われていますが、その大部分は後継者のアントニヌス・ピウス帝によるもので145年頃に完成しました。
東を向いていた神殿は、全面に8本、側面に13本の列柱がありました。今日残るのは、北側の11本です。高さ15メートル、直径1.44mの列柱。現在の建物に囲まれていても、ひと際その迫力に目を魅かれます。広場の高さと同じ高さのところに立っているように見えますが、それは現在ローマ市街地の地面のレベルがあがったためで、実際は高さ4mのポディウム(基壇)の上に立てられています。
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そして、列柱の上部には、今でもエンタブラチュア(帯状装飾)が一部残っており、1695年に建築家カルロ・フォンターナによって設計された建物に上手く組み込まれています。
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大理石でできていたセラと呼ばれる内部の部屋も列柱で飾られていました。そのそれぞれの円柱の台座には擬人化された帝国の属州がレリーフで描かれおり、その台座の間は戦勝を記念するレリーフで埋められていました。今でもそのいくつかをカピトリーノ美術館でみることができます。
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快適なローマに長期間とどまることなく、大きな帝国を2度にわたり巡察してまわり、防壁を建造するなど防衛に力をいれたハドリアヌス帝。ハドリアヌスの神殿(イタリア語ではアドリアーノ神殿)のレリーフは、先帝までの帝国拡大路線から、帝国防衛、そして新しい平和な時代へ到達したことへの賞賛をあらわしていました。
ちなみに、アドリアーノ神殿は、ピエトラ広場と呼ばれる広場に面しています。ピエトラとはイタリア語で石、石材という意味。この場所には、何世紀にもわたり、神殿の大理石が放置されていたため、格好の採石現場となり、民衆の間でこのように呼ばれていたのが、正式名称になったそうです。
現在の指導者にも、現生での栄光ではなく、ハドリアヌス帝のように後世に評価されるリーダーを目指してくれることを願いながら。
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