乾いてる場合じゃない、潤せ感性、潤え感情!
本を読もう、と唐突に決めた。
元から好きだった読書の時間は、社会人になってあっという間にぐんぐん減っていた。
いつしか、読まないことが当たり前になった。
いつでも何か、自分には大切なものが足りていない気がして。
知恵をつけたら少しはそれが満ちる気がして、本を読むぞ、となっても、選ぶ本はビジネス書が多くなった。
小説には知恵がない、と思っていたわけではないけれど、そこにある架空の物語に心揺さぶられたり、一緒に泣いたり、時に落ち込んだり。
そんなふうに贅沢に過ごす時間なんて、今の自分には高望みだぞ!となんとなく思っていたのかもしれない。
小説を読んでいると、だんだん文字を追っているのに映像が見えてきて、その世界にとっぷり入り込んでしまう時間がある。
きっと、本好きな方にはわかってもらえるであろう、あの感覚。
全ての本が、映像になるわけじゃない。
だから、映像を見せてくれる本との出会いは、
すごく貴重だし嬉しい。
そうだ、本を読もう。
と決めて、kindle unlimitedで探した本は、
threadsで本好きさんたちがおすすめしていることが多かった原田マハさんの本。
翼をください
小説を読むことから少し離れていたわたしは、はじめましての作家さんで。
前に少しだけ調べた時に、デビューが2000年くらいだったこともあって、若くしてデビュー、みたいな感じなのかな、同じ歳くらいかも?と思っていた。
読みはじめて驚いた。
この人の文章は、あまりに綺麗な映像になる。
そりゃもう、くっきりはっきり。
近視がどんどん進んで、裸眼では家の中くらいしか歩けないけれど、初めてコンタクトレンズを目に入れた時くらいの視界良好さ。
綺麗な映像になる、っていうのは、なんでも事細かに説明してあるわけではない。
登場人物たちの容姿が事細かに書かれているわけでも、状況の説明がひとつひとつなされているわけでもない。
けれど、その話し方、仕草、文字になったひとつひとつが彼らがどんな風貌をして、今どんな声で話しているのかを、伝えてくれる。
すごいぞ!原田マハ…!
実は、あらすじを見たわけでもなく、Kindle Unlimitedの対象作品だったから、なんとはなしに選んだ作品だった。
気になる作家さんだから、まずは読んでみよう。
くらいの気軽さで選んだ。
飛行機?いやいや、よくわからん。
各章のタイトル、年号と街の名前…?
いやいや、想像ができん。
と、少しだけ不安を抱いて読みはじめて、
上下巻読了したのが、今。
2日。
下巻なんて、仕事の休憩時間1.5時間と、帰宅してからの1時間少ししか開いていない。
映像になる本は、どんどん進む。
映画館に行かなくても、映画を観ているような気持ちで、どんどんページが進んでいく。
2日で、わたしはすっかり彼女の文章の虜になった。
映像という、エンタメの最前線みたいな装置もやすやす超えて、テレビもまだできない湿度や香りまで届ける文章。
すごいぞ、原田マハ…!(2回目)
あまりにすごい、と思いすぎて、思わずWikipediaで彼女を調べてしまった。
情報の精度がどの程度かはわからないけれど、彼女がちょうど母と同じ歳だと知った。
すごいぞ、原田マハ…!
なんて、敬意はたっぷり込めてはいても、気軽に呼び捨てにしている場合じゃなかった。
四半世紀くらい、人生の先輩である方が、こんなにもみずみずしい感性を持ち続けて、しかもそれを表現し続けているなんて。
デビューを数えてみたら、ちょうどわたしと同年代くらいの年だった。
(わたしだけなのかもしれないけど)肌と感性は、年齢が上がるにつれ、乾燥するもんだと思い込んでいた。
感動は薄くなり、感情は希薄になり、感動する本や映画は、わざわざ自ら泣くきっかけを作るなんてめんどくさ…とすら感じていたから。
それがどうだろう。
母親のような人生の先輩が、こんな素敵な視点で世界を見ていたとしたら。
乾いてる場合じゃないよ!!!!
と自分の背をばん!と叩きたい気持ち。
こんなふうに出会えてよかったし、
こんなふうに出会いたかった。
ジャストタイミングって、こういうことを言うのだろう。
公式のHPを見てみたら、プロフィールがご自身で書かれたもので、それもすごく面白く書かれていて。
人のプロフィールを読んで、ふふ、と笑っちゃったのは初めて。
読了して、次はどんな文章?
と全然毛色の違いそうな『ロマンシエ』を読んでいる。
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