(本)ニシダ『不器用で』
ブックカフェで読ませてもらいました。
感想と要約を一緒に記録しておきます。
1章:遺影 2章:アクアリアム
常に劣等感を抱える主人公。
周囲の人と比べ、自分の家が貧乏であること、そして、そのことにより、みんなと同じ様に給食費を払えないことは、劣等感を持つに十分な理由だった。
そんな主人公は、クラスに同じ人種を見つけると、その人に対して同属意識を抱くが、その人が自分よりも努力することなく、自らの環境を甘んじて受け入れることに対して腹を立てる。
そう言う自分は、見栄を張って強い人と組み、影響力のあるグループに所属するが、自分の本当のステータスが見られそうになると、同属を売って犠牲にした。
そのことを後悔してか、高校では、今度は自分より劣っていると感じる人種の近くに自分の身を置く。
鈍臭く、かつ、人の心も持ち合わせてない様なやつであると思っていた。
しかし、大学時代に彼へ連絡を取り、彼が本当は慈悲深いやつであると知ってしまう。
当時、引きこもりがちになっていた主人公。その現象を病気の為だと定義するため、病院を巡り、病名と薬でようやく自分を守っていた主人公にとって、彼への電話は、自分に対する承認欲求を満たすための、手段であったのだろう。それなのに、余計に自分の惨めさを突きつけられる結果になってしまった。その日の出来事は、主人公に深い傷をつけることになっただろう。
2章:焼け石
まっすぐな好意を向け、大切にしてくれる人が現れる。
今の彼氏に特段不満があるわけではない。
でも、一緒に過ごした年月よりも、自分を満たしてくれるまっすぐな愛情は、主人公の心を射止める。
男の子の好意の向け方は計算がなく、ピュアで綺麗だった。
女の子が彼氏がいることの告白を憚った時点で、心が靡いていたのだろう。
でも、素直に彼氏の存在を告白し、靡いている事実に動揺する主人公を見ると、自分の損得計算を息を吐く様には出来ないくらいには、ピュアなことがわかる。ニシダが割とピュアな人を描きがちなことが意外だった。ニシダがピュアなのか、ニシダが恋人にピュアを求めるのか。
3章:テトロドキシン
自分の人生に価値を感じられず、虫歯の放置という怠惰なやり方で死期を早めることを厭わない主人公。
性欲という低次元な欲求をルーティン式に満たし、経験人数という一番手に入れやすい数字で承認欲求を満たす日々。
社会的地位などによる確固たる拠り所無い分、目の前の物足りなさを、手軽に埋められるものを好んでいる様に見えた。
異性や性欲に対して抗体がつく分、簡単に恋愛は出来なくなったようだ。
そこに現れた異色の女性は、周りからは避けられるが、肥えた主人公の舌を唸らせた。恋心が芽生えかかったとき、ようやく自分で自分の寿命の長さを縮めることをもったいなく思えるようになったらしい。
4章:濡れ鼠
自分の方が年上だからとう理由で、恋人に弱みを見せられず、苦しくなった主人公。少し自分に対して、引け目を感じている点では、他の主人公とも共通している様に思える。ちょっと引け目を感じて生きている人の生きにくさを、この本の題名の不器用という言葉は、表現しているのかもしれない。
余裕が無くなってくると、相手への信用は揺らぎだし、心配ばかりで心が埋められる様になる。結果として、焦りパンクした主人公は、恋人の元へ余裕なく駆けつけ、そのまま自分の心配を吐露した。
この自分の弱さを相手に見せる行為は、主人公にとっては、みっともない行為だったのかもしれない。ただ、恋人にとっては相手のからの愛と自分の存在意義を再認識できる出来事になった。
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