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【海のはじまり】第9話:こまかすぎる感想

第9話。夏と弥生の物語。
あまりにも涙が溢れすぎて手で顔を覆ってしまい夏と弥生が涙で見えない程度には嗚咽号泣しましたが、なんだか視聴後の感覚としては、すっきりしました。(それだけ泣いたからだよ)

苦しいけれど、でも、弥生さんが自分のためにした選択によってずっと背負おうとしていたものを手放すことが出来て、ほっとしたというか。
とりあえず、私は弥生さんと飲みに行きたいし、夏くんを抱きしめてあげたいです。

この「こまかすぎる感想」は、いつも一度リアタイ視聴した後、SNS等での感想は追わずに一晩考えて、そのまま観直しながらつらつらと書き綴っています。
そうしてアップした後に、皆さんがくださるコメントやSNS等での感想を追いかけて、こんな感じ方があるのだなと噛みしめる時間までが、私のこの夏の「海のはじまり」ルーティンです。

さて、今回も長文いきます!



番組情報

「海のはじまり」公式サイト


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第9話 夏くんの恋人へ…今夜明かされる、弥生の秘めた想いとは

夏と弥生のはじまり

過去の回想シーン。仕事で弥生のオフィスを訪れた夏。
夏を見つけた弥生、「イバタ印刷の…」と話しかけ、挨拶を交わす。
これが二人のはじめての出会い。

あんなスラっとしたイケメンが担当だったら嬉しいし、あんな綺麗なお姉さんが担当だったら嬉しいな。(雑念)
ここから二人の物語を描くだけでもきっと大満足な「月9」だったのに、このキャスティングでただのラブラブ胸キュン物語にしない贅沢さよ。
もう8話分も夏くんと弥生さんを見てきてしまった私の眼球はすっかりこの二人の共演に慣れてしまっていましたが、あらためてこのお二方の美しさを目の当たりにして、いやこれすごいありがたい月9だよな、と噛みしめました。

弥生さんのオフィスビルは何度か登場していますが、かなり大きなビルに入っている会社なので、そこそこ大手の化粧品会社の優秀な社員なのでしょうね。
身なりもいつもキチンとしているし、シゴデキな綺麗なお姉さん、という印象に、1mmの嫌味もなくてすごい。
同性から見ても憧れるというか、友達になりたい感じ、有村架純さんの雰囲気が素敵ですよね。

一方、印刷会社の営業さんである夏くん。
エレベーターでフロアまで向かう途中、弥生が「雨やんでました?」「外暑かったですよね」ととりあえず天気の話題を振るも、夏は「ええ」「まあ、はい」としか答えず、会話が続かない。
大丈夫か、営業!(笑)

こういうトークって初対面のエレベーターとかでのあるあるトークで、別に答えってちゃんとしてなくていいというか、話題を広げなくともとりあえず目的地に着くまでの数秒~数分を変な感じにしないために、笑顔を貼り付けて適当に会話をすればよいシーン。
弥生さんのお天気トークだってきっといつも使っている定番トークだろうし、夏くんだって新入社員じゃないんだから、こんな場面何度も経験してきたはずなのに。
夏の反応に、口角は上げたまま笑顔を保ちながらも、「つまんない人だな、早く着かないかな」みたいなことを思っていそうな弥生さんの様子に共感しました(笑)

夏くん、これからプレゼンとかあるのかな、営業で新規取引先、しかも(多分)大手相手の初対面って、それなりに緊張する場面だとは思うけれど、その緊張感でいっぱいいっぱいな、真面目な感じが伝わってきました。
適当に上辺だけの会話で人に合わせない、というのもなんだか夏くんらしいですね。

よくよく考えたら夏くんってなんでその性格で営業?とも思いますが、就活の対策をしている時に、特に何がやりたいというわけではなく、とりあえずそれなりのところに、というようなことを言っていたので、恐らくと職種というよりも企業で選んで、結果的に営業部に配属されてしまった、という感じなのですかね。
…なんていうことまで妄想してしまうから文章が長くなるんですよね。

初めての商談を終えた後、夏を見送った後の弥生の同僚・彩子たちの夏に対する印象は、「もったいないなあ。見た目いいのになんか喋るとぱっとしなくて。曖昧な返事されると不安になるよね。なんかちょっと惜しいですよねえ。」という言われよう。
でも弥生さんはにこにことただその話を聞いているだけでした。
夏くんはやっぱり、見た目はいい設定なんですね。リアルで良い。
弥生さんがこの時点で夏に恋愛感情を抱いたかはわかりませんが、少なくとも夏に対して、「この人だめだな」みたいなネガティブな印象を初対面で抱いた様子はなさそうでした。

迷子の男の子

その後、昼休憩に出た弥生、オフィス前で泣いている男の子と、その前で困っている夏を見つけ、駆け寄る。
男の子のそばにいたものの、いるだけで何も出来なかった夏に対して、弥生は笑顔で男の子に話しかけ、「大丈夫です、また来週お願いします」と夏に挨拶をして、パパとはぐれた様子の男の子の手を取り、交番へと連れて行きます。

夏くん、子どもにどう接したらいいか分からないし、絶対上手く出来ないことをわかっているのに、目の間に困った人がいたらどうしてもスルーは出来ないという、不器用で優しい性格がこのシーンからも感じ取れますね。
「似合ってなんかいなくてなにもかも足りないのに 投げ出し方も分かんなくてここにいる」という、back numberの主題歌の歌詞が浮かびます。

弥生さんたちと別れてから今まで、ずっとここであたふたしてたの?(笑)
泣いている子を前に絵に描いたようにあたふたしている夏くんが可愛かったです(笑)

それに対して弥生さんは、一瞬で状況を把握し、次の行動を選択し、実行する。
出会った頃から変わらない、夏くんらしさと弥生さんらしさが感じられます。

その後、男の子を送り届けてコンビニに寄り戻って来た弥生がオフィスに入ろうとすると、後ろから「あの…」と弥生を呼び止める夏。
大丈夫だったかと気がかりで弥生が戻るのを待っていた夏は、ありがとうございましたと頭を下げ、男の子が無事に親に会えたと聞き安心し、ではまた、とオフィスを後にしました。

この時の夏くんは、ただ本当に弥生さんへの申し訳なさというか、男の子&弥生さんがその後どうなったか心配で戻って来て、解決したと知りほっとして去って行った、という感じでした。
一方で弥生さんは、その夏の背中を見送る表情から、夏に対する印象が、"ネガティブではない"から"良い人なんだな"に変わったように感じるシーンでしたね。

夏の性格

夏くん、もし彼がもうちょっとスマートに振舞えるタイプの人だったら、たとえば弥生さんと一緒に交番まで行くとか、交番があるなら自分が一人で連れて行くとか、やり方は色々あったと思います。
弥生さんと出会えなかったらどうしていたんだろう(笑)

ちょっと原点に立ち返るのですが、夏くんのプロフィールにある、「めんどくさいことや、頭を使うことなどを避けるようにして生きてきた部分もあり、特に大きな挫折を経験したこともなく生きてきた。」という性格設定。

あらためて今回の第9話で描かれた夏と弥生の関係性においても感じることですが、弥生との関係も、水季との関係も、こういう夏くんの"面倒なことはなるべく避けたい"という性格がずっとベースにあるんですよね。
夏くんの人に対するベースがこれなんだろうな。
徹底して設定に忠実。
人なんてそう簡単に変わらないし。

だからといって、夏くんは独特の優しさ、穏やかさ、誠実さも持ち合わせているから人を攻撃しないし、面倒なことを器用に避けられない不器用さによって結局自分が損をすることが多いから、周りの人は彼を助けたくなったり、あえて「母性」という言葉を使うと、彼女とか母親の立場から見ると母性をくすぐられるようなところもあるのかもしれません。

いつかの感想でも書いたけれど、主人公がこういう性格って意外とあまりなかったような気がして、でもすごくリアルで人間みがあって、この設定こそが物語を動かしていると思うし、こういう尖った個性がないけれど常に漂う性格を、少ない言葉数でしっかりと匂わせながら"いそう"な感じで説得力を持たせて演じられる目黒さんは、やっぱりすごいなと改めて思います。

夏くんのこと、私たち結局好きっていうか、嫌いになれなくて、やきもきしながらも応援してしまう、みたいなところあるじゃないですか。
これは女性だから抱く印象なのでしょうか?
それは月岡夏というキャラクターの造形に加えて、目黒さん本人が持つ雰囲気とかイメージがあるからこそで、そこがなければ、この「月岡夏」というキャラクターが成立しなければ成り立たない物語なので、やっぱりキャスティングってとても大切だなと思います。

弥生さんが来て男の子を預けてしまったというのも、夏くんのこういう面倒くさがりで甘えんぼな性格がふいっと顔を出してしまったからで。
任せるなら任せてしまって、次に仕事で会った時に「大丈夫でした?」と聞く程度だってよかったのに、そんなスマートさはなくて、気になって戻る。
戻ったところで弥生さんに会えるかわからないのに、会えたところで特に話すこともないのに、とりあえず戻ってみる。
不器用で、でも誠実で、やっちゃってからぐるぐる考えるようなところだったり、ぐるぐる考えた末に決めると意外と強めに一歩踏み出せちゃうところだったり、やっぱりこんな些細なシーンでも、設定に忠実な夏くんらしさがちゃんと表現されていますよね。

二人の恋の始まり。
ここまで二人を見守って来た視聴者としては絶対に覗き見てみたいし、この恋が始まりそうな雰囲気がとても素敵で、単純に楽しめるシーンでしたが、夏と弥生の二人の性格、関係値を描く上で欠かせない重要なシーンにもなっていて、観直すとあらためてたくさんの要素が散りばめられていたと感じます。


恋のはじまり

何度目かの打ち合わせを終え、夏を見送る弥生と同僚たち。
彩子が夏の印象を「相変わらずだなあ」と残念そうに言い、もう一人の同僚が「でもほんと真面目で一生懸命だね」と言うと、「そうなんですよ。気遣い出来るし、聞こうとしてたこと先回りして資料準備してくれてたり、物腰柔らかいから細かいこと相談しやすいし。奢らず謙虚。何より優しい。」と弥生。
この時の弥生さんは、夏に対する好感がかなり上がっているように見えました。
弥生の話を同僚たちは「へえ~」と聞いていましたし、いつも夏を見送る時、弥生だけ一歩前に出ているので、仕事上の細かい話をする主担当は弥生だったのでしょう。
よく知らないとぱっとしない感じだけれど、ちゃんと話すと誠実で、人の好さが伝わる、それが夏くんなんだろうな。
ちゃきちゃき器用に営業成績を上げるタイプではないけれど、一度ご縁のあった取引先とは仕事をしっかりと形にして信頼も得る、みたいな営業さんなのかもしれませんね。
弥生の言葉から、真面目に誠実に仕事をする夏の姿が浮かびます。

弥生の元恋人との出来事や、自分のことを本当は相談したいタイプだと言っていた弥生の言葉を振り返ると、夏のこういった優しさや穏やかさ、相談が出来て一緒に考えて進めていけるというところに、弥生が惹かれていったのは理解出来ます。

日が変わって、「また機会があればよろしくお願いします」と、最後の打ち合わせを終えてエレベーターに乗り込んだ夏。
見送った弥生に、「いいんですか?もう会うことないよ?」と声をかける同僚ですが、弥生は帰ろう帰ろうと切り上げます。
この時点で、弥生は夏に対して、同僚にも漏れだす程度には好感を抱いていたんですね。

夏も、いつもと違い、この日のこの時、エレベーターの扉が閉まるまでの間、夏は弥生のことだけを見ていました。
そしてその後すぐ、弥生が席に戻った頃に、夏は弥生に「月岡です。さきほどはありがとうございました。お仕事まだ時間かかりますか?」と電話。
30分ほどで帰れると弥生が伝えると、「その後ってご予定ありますか?」と夏。
その会話の後、仕事を終え、急ぎ足でオフィスビルのロビーまで出て行く弥生。
ちょっと小走りになっちゃう感じ、もう気持ちがときめいていて可愛い。
夏を見つけた弥生、弥生を見つけた夏、お互い笑顔で歩み寄っていく。

ここよかった!!!!!!!
何その笑顔!!!!!!
好きです!!!!!!!!(壊)

お仕事は終わって、仕事関係なしに惹かれつつある二人が何か新しい関係を始めていきそうなキラキラ感が、いつもより明るくクリアな印象の映像と相まって、とても美しかったです。
そして超月9でした。

夏くんのとびきりスマイルが、飼い主が見えて嬉しそうなわんこみたいで。
弥生さんのとびきりスマイルも、好きな人を見つけたときめき感があって。
あんな笑顔見ちゃったら、もう、好きです、私は。(何)
夏くんが結構ぐいっと頑張って弥生さんにアプローチしたんですね!!
いつも車道側を歩くし、荷物持ってあげるし、男たるもの、みたいな突然の漢気があるんだよな、夏くん。

夏くんに対する女性からの印象って、もしかしたらきっと彩子たちが言っていたような「ちょっと惜しい」みたいな、頼りなさげな印象を抱かれることがきっと多いのかもしれません。
その中で弥生さんは夏に対して、夏の良さや仕事ぶりを評価しながら向き合ってくれる存在だったのかなと思うと、夏が仕事をしながら少しずつ弥生さんに惹かれていったのもわかる気がします。
なんか夏くんって、やっぱり本質的には甘えん坊というか、お母さんみたいなお姉さんに引っ張られる方が楽なタイプだと思うので、そういうところも弥生さんは夏に合ったんだろうな。

ああ今日で最後だな、百瀬さんともう会えないのか、もう少し話してみたいな、誘ったら迷惑かな、お食事くらいなら来てくれるかな、百瀬さんも好感は持ってくれてそうだしな…なんてきっとぐるぐる考えながら最後の打ち合わせにやってきて(仕事しろ)、いざ仕事が終わって、扉が閉まって、やっぱりこのままサヨナラはやだ!ってエレベーターの中で確信して、降りてすぐ電話をかけたんでしょうね。
こうだと決めた時の夏くんのエンジンかかる感じがちゃんとここで発動したからこそ、二人の関係がはじまったんだな~。いいな~(本音)

前回「恋のおしまい」のラストで、弥生さんと食事に行った様子の夏が、次の約束をしようとLINE画面とにらめっこするシーンがありました。
この日このまま二人で食事にでも行って、仕事は終わったけどちょっとまたごはんでも行きましょうよってお互いになって、連絡を取り合って、付き合うようになったんですかね、いいな~(本音)
もっと見たいです!(挙手)

社会人になってからの恋愛って、ドラマや映画だと運命的な出会いが訪れて本能的に恋に落ちてしまって…みたいな描かれ方も多いけれど、実際大人になってからそういうことってあんまりないじゃないですか。
仕事とか、なんらかのきっかけで出会った二人が惹かれ合っていく時、この夏と弥生のような感じで、何か決定的な出来事があったわけではないけれどなんとなくお互い惹かれ合っていく、みたいなのって結構リアルで。
「この人のことが好きだ!!もうお前を離さない!!」みたいな熱量はないかもしれないけれど(どんな?)、「いい人そうだな」が入り口になるみたいな。
学生時代の夏と水季の恋愛とはやっぱり違う、このくらいの年齢の二人の恋のはじまりとしては、こういうのって全然アリだし、リアルだし、お互い前回の恋愛が結構波風立ったものだったので、優しくて穏やかな凪いだ海みたいなリズム感が心地よくて惹かれ合う、みたいな、そんな出会いだったんだろうな。

今回ひとつのピリオドを打つかたちにはなってしまったけれど、きっとちゃんと二人だけのキラキラした思い出もたくさんあって、普通にお互いが好き同士で一緒にいたカップルなんだよなと、ときめくと同時になんとも言えない胸がきゅっとなる感覚にもなるシーンでした。

まだオープニング5分でこの掴み。
通常運転です。


クリスマスデート

夏、クリスマス時期に弥生と待ち合わせをしたショッピングモールへ到着。
もうこの二人はあれこれあって付き合い始めている様子ですね。
おめでとうございます!!
仕事で打ち合わせをしていたのは夏だったから、その年の冬でしょうか。
初めてのクリスマス?いいな~(本音)

そばにいた小さな女の子と楽しそうに会話をしている弥生。
女の子の母親が迎えにきてすぐ、その様子を見ていた夏が「弥生さん」と声をかけると、「私の方も来た!」と嬉しそうに夏の方を向く弥生。
ここの弥生さん可愛かった。
本当に可愛い子だよ弥生さん。
そして夏の呼び方が「百瀬さん」から「弥生さん」になってる。いいねいいね。

-夏「ほんと子ども好きだよね。」
-弥生「月岡くんは子ども苦手だよね。」
-夏「得意ではないけど…」
-弥生「でもいつか親になるにはいいことかもね。子ども扱いしないってことでしょ?」
-夏「…不安すぎる。」
-弥生「楽しみだけどね。」
-夏「うん!不安だけど、結構楽しみ。」

「海のはじまり」第9話より

こんな会話をしながら手を繋いで歩いて行く二人。
今までで一番幸せそうで月9っぽいタイトルバックだったような気がします。

初めて夏の家に海ちゃんがやってきた時だったでしょうか。
弥生が夏に「月岡くんは子ども苦手だもんね」と言ったことがありましたが、二人の出会いのあの迷子少年のエピソードがあったからこその言葉だったんですね。
そして弥生がここで言った「子ども扱いしない」の台詞は、以前朱音さんが夏に言った言葉とも重なります。

この時の二人はまだ、海ちゃんの存在は知らなくて、こんなことになるなんて想像もしていなくて。
きっと二人でこのまま付き合って、その先には結婚があって、家庭があって、そんな未来を描いていたんだろうなと思うと、展開を知る身としては胸がしめつけられますし、本当に人生って、自分にも相手にも何が起こるかなんてわからないものだなとつくづく感じます。

夏くんの、「うん」と「ううん」の間みたいな曖昧な返事をする癖。
この癖をよく理解されておそらく緻密に演技プランを組み立てた上での、目黒さんの「うん」と「うんでもううんでもない返事」と「NO」の絶妙で丁寧な使い分けによって、夏の心情が表現されるシーンがこの物語には多くて。
曖昧さから手に取るように伝わる迷いや配慮、はっきりした時に見えてくる意思や感情の強さ、今回の第9話でも特に後半戦でそのテクニックが連発されていたので後述しますが、このデートシーンでの、楽しみだと言われた後の夏くんの「うん!」が、本当に心から無邪気にそれを楽しみにしているような「うん」で。
こんなにハッキリした陽の「うん!」って今までなかった気がして、だからこそ今現在の展開との対比にもなる、印象に残るシーンでした。


お母さん

場面変わって現在。
場所は違えどそんな煌めいた思い出のあるショッピングモールの入り口に、一人ぽつんと物憂げな表情で立っている弥生さん。
弥生さんがあの時のクリスマスデートを思い出していたとしたら苦しすぎる。メリークリスマス。(情緒平気?)
やっぱり幸せに浸ったまんまでトキメキ続けることなど許してはくれない、そう、それが「海のはじまり」です(誰)

やってきたのは夏と海。
二人が来るとわかっていてこんな表情になってしまうくらいには、余裕もなく、思い詰めている様子の弥生さん。
そんな弥生さんの表情に夏はすぐに気付きますが、笑顔をつくって歩き出す弥生に対して、その場では夏は何も言えません。

子ども服売り場で海の洋服を選んでいる3人。
試着の際に、店員が弥生に向かって言った「お母さんも一緒にどうぞ」の一言に、一瞬固まる弥生と夏。
無邪気に「一人で大丈夫」と一人で試着を始める海でしたが、弥生も夏もなんとも言えない表情。

買い物を終え、トイレに向かう弥生と海と、二人を座って待つ夏。
弥生と手を繋ぎながら、嬉しそうに話し出す海。

-海「お母さんもどうぞ、って。」
-弥生「ね。間違われちゃったね。」
-海「弥生ちゃん、ママに見えるんだね。」
-弥生「私がほんとにママになったら嬉しい?」
-海「うん!」
-弥生「そっか。」

「海の始まり」第9話より

あるあるで誰も悪くない展開により、またライフポイントを削られてしまった弥生。
夏と弥生と海が3人で歩いていたら、外野から見ればまず第一にきっと家族に見えて。
以前初めて3人で図書館に向かった時の弥生さんは、そんな風に外野から「憧れのやつ」に見えることが嬉しかったんですよね。
それから今、自分が母親になることが自分次第で本当に現実になるのだということが迫ってくると、以前の「憧れ」は、もう前みたいに心が高鳴るものではなくて。
そんな変化を感じさせるシーンです。

ところで「お父さん/お母さんもどうぞ」とか「ご主人様/奥様は~」とかって、外野は何の気なしに声をかけてしまうけれど、いろんな事情や経緯を持った人ってきっとたくさんいるんだろうな。
だからって全方位に配慮しすぎてしまうと接客なんて成り立たなくなってしまうけれど。
ちょっとしたことが、誰かの心をえぐってしまうというのは、あるあるですよね。

海ちゃんが弥生に言った「うん!」も、さきほどの回想シーンの夏の「うん!」と重なるような無邪気さで、それすらも今の弥生さんにとっては心をえぐる一言なんですよね。
このお買い物の間、弥生さんは全然楽しくなさそうで。
「早く帰りたい」みたいな気持ちすら伝わってくるようで。
きっとそんな自分のままで夏と海と「ママ(仮)」みたいな顔して一緒にいることも苦しかったでしょう。
弥生の様子の変化には何話か前から夏くんは何か感じ取っている様子があったものの、直接聞けずにいたまま、第9話、二人の関係が展開していきます。

別れたい?

帰宅した海。
「弥生ちゃんと一緒に選んだ!」と、嬉しそうに買ってもらった洋服を朱音さんと翔平さんに見せます。
弥生ちゃんまでいなくなってしまったら、海ちゃん、夏くんもいなくなっちゃうの?って、怖いだろうな。

海ちゃんを送り届けた二人の帰り道、弥生の表情を少し見つめた後、「弥生さん、どうしたい?海ちゃんとのこと。」と切り出す夏。

-弥生「どうしたいって?」
-夏「一緒にいる時、辛そうっていうか…」
-弥生「え、ごめん、機嫌悪そうだった?なんだろう、お腹減ってたからかな。」
-夏「そうやってずっと無理に愛想笑いしてるし。…別れたい?…別れたいの?」
-弥生「…別れたくないよ。」

「海のはじまり」第9話より

この会話の後、弥生さんが真っ直ぐ前を見つめて少し先を歩いて行ってしまって、夏くんが少し駆けて追いつきます。
前回スーパーでは、先に歩いて行ってしまう夏と後ろで立ち止まる弥生の構図でした。

夏くんが最初に"海ちゃんのこと"をどうしたいかと切り出したのは、"自分とのこと"を聞くと、別れを切り出されてしまいそうで怖かったからでしょうか。
「別れたい?」と口にした時の夏くんの表情を見て、一番気がかりで、でも聞けずにいたのはきっとこのことだったんだろうなと感じました。

それに対して弥生さんは、「今ここでは本音は言わない」という意思が伝わってくるようでした。
察しの良い弥生さんだからこそ、ここ最近の自分の様子に夏が気付いていることすら気付いていたんじゃないかと思います。
でも、夏の前で100%仮面をかぶりきって強がれるほど弥生さんも余裕はないし、もうそんな風に自分をごまかす必要はない、そういう段階じゃない、ちゃんと自分で考えなければという意思のもと、"ここでは言わない"と決めた、意思を示さないという意思の強さを感じたシーンでした。

-弥生「別れたいの?」
-夏「別れたくないよ。」
-弥生「私が母親になるのって、」
-夏「なってほしいよ。」
-弥生「じゃあいいんだよそれで。」

「海のはじまり」第9話より

それでいいと言った後、また弥生さんが先を進んでいってしまって、夏は少し後ろで弥生さんを見つめるという構図でした。

夏くんの「別れたくないよ」が、弥生さんに被せるように即答していて。
自分の意思としては別れたくないけれど、もし弥生がそう思うのなら、自分の立場としては弥生の意思を尊重するしか出来ない、そんな怖さを抱えながら弥生と向き合おうとする夏の必死さ、切羽詰まった感じが伝わってきます。

弥生さんが「私が母親になるのって、」の後に続けようとした言葉がなんだったのかも気になります。

やっぱりここでは、本音は言わない。
きっとそう決めて、会話を終わらせた弥生。
この後の二人、どんな感じで都内まで帰ったのでしょう。
日陰で陰る二人、うるさいほど鳴く蝉の声、漂う不穏な空気、隣にいるのに届かない感じ、逆光で暗くなる夏の表情。
もうだめかな、だめそうかも、と思ってしまうシーンでしたね。

トイレと嘘

現在、職場で帰り支度をする弥生のもとへ夏から着信。
「そっち行っていい?」という夏の言葉に、少し嬉しそうに「ごはん行く?行きたいラーメン屋さんあってね」と弥生が二人で行くつもりで答えると、「南雲さんに夜予定があるから海ちゃんと一緒に外食でもしてきてって言われて」と夏。
それを聞き、仕事がもうちょっとかかるかも、海ちゃん待たせちゃうから二人で行ってきて、と断る弥生。
「三人」で過ごそうとする夏と、「三人」を避けたい弥生です。

夏くんは南雲家ステイを終えた後、平日もなるべく顔を出したいと朱音さんに伝えていましたので、仕事終わりに夏くんから朱音さんに連絡をしたのかもしれません。
朱音さんは、夏から海の父親になりたいという意思といずれ二人で暮らしたいという思いを受け取っていましたので、いつもの南雲家以外の場所で、夏が海と二人で過ごす時間を練習として持てるようにと、外食を提案したのかもしれませんね。
翔平さんも朱音さんも夜いないということはなさそうなので、朱音さん的なアシストだったように思います。

結局夏は海を連れてファミレスに行き、大和も召喚。
公式Xによると、夏が弥生さんに会いに行くために大和に海ちゃんを迎えに来てもらったとのことです。
でも弥生さんの家で手紙の件を伝えた時の夏とこのファミレスの夏のワイシャツは違うみたい。
夏は電話での弥生の様子が気がかりで、このファミレスの後に弥生の元へ行って会ったとか?
またはそこで会えなかったから、別日にマンションで待ち伏せしてまで会いに行ったのか?
いずれにせよ、夏くんが弥生さんに対して、少し焦っているというのが感じ取れますね。

この時ファミレスで、海ちゃんがトイレに行くシーンがありました。
一人で行けると海ちゃんは一人でトイレに向かいましたが、ショッピングモールでは弥生さんと手を繋いでトイレに行った海ちゃん。
明らかに対比にしたいシーンかと思われます。
やっぱり性別ごとに親が担う役割って、確かにありますよね。
同性同士でなければ、例えばトイレや温泉は、一緒に行けないから。
水季と海という女同士の組み合わせにおいてその障壁はなかったけれど、今後夏が海を男親として育てていくにあたり、本当は一緒に行って監督したい状況でも、どうしても無理なことってあって。
この物語は、ひとり親でもふたり親でも、どのようなかたちも否定する物語ではないけれど、そういう性別による役割ってあるよね、という現実を示すシーンだったように思います。

夏くんは「一人で行ける?」と気に掛けていたし、海ちゃんが席を立った後、すぐに話を始める大和とは違って、海がトイレまで歩いて行く様子をずっと見つめていました。
以前より増して親である自覚が芽生えてきた夏の変化が感じられると同時に、今後こうやってひとつずつ、小さかったり大きかったりさまざまな壁にぶち当たる度に、夏はきっと、自分を一人でひと時でも育てた母親や、海を一人で育てた水季の苦労、弥生さんにいかに頼っていたかということを思い知っていくのかな。
頑張ろう。夏くん。

「弥生さん本当に仕事忙しいの?」と大和に聞かれ、「忙しいのは多分嘘。あんまり三人で会いたくないみたいで。」と夏。
気付いてるんだよね、ちゃんと。
でも、待ってるんだよね、きっと、弥生さんが本音を言ってくれるのを。
夏と弥生、今はちょっと気まずい距離があるけれど、弥生が抱える過去を打ち明けた時から、二人の関係性って確かにより強固になった気がして。
弥生さんは時間をかけても本音をちゃんと言ってくれるし、月岡くんはそれを待ってくれる。
そういう、この二人の間にある、二人ならではの関係性がちゃんとあって、だから今は夏は待ちの時間。そう決めてじっと待っているんだろうなと思いました。

津野くんテレフォン

別日、夏からの電話を受け、図書館から出て来た津野。
夏は職場での昼休みか何か、仕事の合間にわざわざ津野に電話をかけた様子。
それくらい弥生さんの様子はやっぱり気がかりだったし、困った時に津野くんが浮かんだんですね。
以前弥生さんと津野くんが一緒に帰ったことも知っていますし、その時に二人で何か話したのかなと思って、津野くんへのテレフォンを発動したのだと思います。

仕事中かと聞かれ、「休みだけど職場にいます。海ちゃんが遊び来てて。大丈夫ですよ、離れたんで。なんです?」と津野。
まだ夏休みですもんね、海ちゃん。
夏からの電話を受け、きっと何かしら大人の話であろうと予測し、海ちゃんから離れてから電話に出る、気の利く津野くんです。

海ちゃんが自分で津野に連絡したのか、朱音さんが連絡したのかはわかりませんが、実際夏は働いている以上、仕事がある日の日中はこんな風に、津野くんみたいに誰かしら大人の手を借りなければやっぱり子どもと暮らすって難しくて。
今は津野くんの存在があるけれど、今後どうなるのかなと考えさせられるシーンでした。
津野くんも、自分は親じゃないけれど、こんな風に頼りにされて、いやな気持はしないかもしれないけれど、応えてあげているのって善意でしかなくて。
その善意を、悪くとらえれば搾取されているのですから、こんな状態がもしいつまでも続いてしまったらまた不和も生まれそうで、勝手ながら心配していしまいます。
夏くんもそういうの、気にしそうですよね。

弥生さんから何か聞いているかと夏が尋ねると、水季からの手紙を読んでいいのか悩んでいたと伝える津野。
「母親になる人に宛てた手紙なんじゃないかって。それで読むの躊躇ってて。南雲さんがわざわざそういう相手に手紙書くって…うん…」と津野。
それを受けて少し驚きつつ、「いや…母親になる人とか、そういうことじゃないと思います」と夏。
「だからまあ読んだ方がいいと思いますけどね。何かに迷ってるなら、なおさら。」と津野。

本当はこの言葉を、弥生さんに読んでほしいっていうことを、手紙を渡す時に夏が弥生に直接言えたらよかったのかもしれないけれど、津野のアシストを受けて弥生がそれに迷っていることを知った夏は、後にちゃんと自分の言葉で、弥生さんに読んでほしいのだということを伝えます。

ちょっと張り詰めたシーンでしたが、電話が終わり津野が海の元へ戻ると、「お友達?」と海に聞かれ、「お友達ではない」、と半笑いで即否定した津野くん、笑いました(笑)
友達ではないです。他人ですから。僕関係ないですから。
そんな声が聞こえてくるようでした。

確かに夏と津野の関係をなんと呼ぶのか、どんな定義にも当てはまらない気もしますが、私はいずれ夏と津野が何の言葉にも定義されない特別な関係を築いていくことと勝手に信じています。
津野くんが基本姿勢ツンケンしていて、夏は基本低姿勢で、でもたまにムスっとした夏がしれっと津野くんをいじって、津野が「は?」ってなる、みたいな、あの以前の図書館での「ショートコント・あやまらないんかい」みたいなくだりをもうちょっとカジュアルに出来る、そんな二人になっていくと信じています(笑)


本音

恐らく津野に電話をしたのと同じ日かな、弥生が帰宅すると、マンション前に夏の姿。
弥生さんが夏の姿を見つけて少し驚いていた感じがあったので、連絡せずに会いにきたのでしょうか。
連絡したらまた避けられちゃうかもしれないから、かな?
これ多分手紙のこと言うぞ、そんな決意を感じさせる緊張した様子で立っている夏くんと、意を決して笑顔で夏を受け入れたような弥生さんでした。

キッチンに並んで立ち、夕飯の支度をする二人。
「三人でいるの、辛いんでしょ?」と切り出す夏くん。
出てます出てます夏くんのクセ。
今日これ言うぞって決めたら、不器用すぎて「今?」っていう絶妙なタイミングで切り出してしまういつもの感じ(笑)

「だからそんなことないって」とかわす弥生さん。
夏くんはきっと「今日話すぞ」って意気込んできているけれど、弥生さんは準備がまだ出来ていなかったわけで、今日もきっと、まだ話さないって決めている弥生は、夏の言葉をかわそうとします。

ところが引かない夏くん。
「俺も本当のこと言わないからだよね」と、水道の蛇口を止めて、弥生の方を向いて、まずは自分の気持ちを話し始めます。

「子どもがいるって知って、最初は面倒だと思った。このまま弥生さんと二人で、いつか家族が増えたりしながら、今はまだ二人でいたいと思ってたから。でも、今は海ちゃんもすごく大切で、弥生さんが母親になってくれたら嬉しいし、正直、そうなったら楽だと思った。一人で親になるの、不安だったから。辛そうなの少し前から感じてたけど、無視した。三人でいたかったから。なのに、無意識に無神経に、弥生さんの前でも水季の話ばっかりして、気持ち尊重するなんて口だけで、自分の思い通りにしようとしてた。甘えてた。」

「海のはじまり」第9話 - 月岡夏

この話を聞きながら、弥生は作業を止めず、夏の方を見ずに、「鍋、火かけて」「お皿出して」と挟みます。
この構図、以前描かれた、病室での水季と津野のみかんヨーグルトの前の場面と同じですね。

本音を一方的に話す水季と、聞きたくなくて話を逸らそうとする津野。
本音を一方的に話す夏と、今は向き合えなくて作業を止めない弥生。

水季と津野の時は、水季の言葉は半ば独り言のようでもあり、津野は受け入れがたくて話を逸らしました。
夏と弥生の場合は、弥生の本音を聞きたいがゆえに自分の本音を打ち明ける夏と、しっかりと自分と向き合いたいからこそ今は何を言われても何も答えられないと意思の固い弥生、という感じ。
気持ちをぶつける側と、受け取る側と、気持ちが揃わなければどんなに相手を想った言葉であっても届かない。
会話とかコミュニケーション、キャッチボールって、やっぱりどちらか一方だけではなくて、二人が向き合わなければ成り立たないものです。

夏がここで言えた本音って、基春さんとの再会の場面でああやって本音を口にすることが出来たから、それによって自分の中でも言語化されて整理出来たことだったように思います。
本当は二人でいたかったと、それを夏がここでぽろっとこぼせたことは、弥生にとっては聞けてよかったことだったかもしれません。
夏の中でも、弥生さんに対する本音ってきっと本当にただこれだけだったはず。
でも、目の前に自分の子が現れて、知りませんなんて、迷子の男の子もスルー出来ない夏にはやっぱりどうしても出来なくて。
夏くん的にはもう今、やっぱり、「夏・弥生・海の三人」か、「夏・海の二人」しか、選べないんですよね。
「夏・弥生の二人」を、もう夏は選べない。

面倒だと思った、でも向き合わなければいけない、そこに弥生さんがいてくれるなら、楽だと思った。
何も取り繕わない、本音だね。夏くん。

自分が一人で親になる覚悟なんて出来ていないこと、弥生さんに甘えてしまっていること、そういう自覚は夏くん自身の中でもどこかにきっとあって。
でも、弥生さんが隣にいようと、母になろうとしてくれながらそばにいてくれる限り、自分は弥生さんの善意や母性に甘えてしまう。
それが楽だから、弥生さんが苦しそうでも向き合えずにいたけれど、もしこのまま弥生さんが隣にいたら、自分は弥生さんの善意や母性を搾取してしまう、利用してしまう。
そういう自分自身の情けなさや弱さを自覚すること、自覚しながらも不安や心もとなさが上回って甘えてしまうこと、何よりやっぱり自分は弥生さんを好きだから一緒にいたくて、離れようなんて自分からは言えない、そんな思いをぐるぐる抱えていた夏くんも、それはそれでキツイなあ。
そんな自分の事を、無意識、無神経、尊重なんて口だけ、思い通りにしようとしてた、そんな風にちゃんと言えるのって、やっぱり夏くんの誠実さだったり、どんなことも人のせいにしない性格が感じられます。
そしてここでこう言葉にするまでに、夏くんは夏くんなりに一人でぐるぐる考えて、弥生さんの本音を引き出したいなら、そしてもしこれからも一緒にいられるのなら、ここでちゃんと向き合わなければいけないと覚悟を決めたんだろうな。

そんな夏に対して弥生は、ふーっと息を吐いて、「ちょっと、待ってもらってもいい?今は本音というか、言えてないことがありすぎて、まとまらない。結論もまだ出せてない。辛い。だから、自分がどうしたいかがわからない。」と伝えます。
これも、弥生さんの本音だね。
これに対して夏は、「うん」と、ここでは曖昧じゃない、はっきりと「うん」と言って、受け止めます。
弥生が何かをごまかそうとしているとか、遠慮してるとか、そうじゃなくて、考えているからこそ今は待ってほしい、それを理解したから、それを尊重したのだと思います。

以前は、色々と決めさせようと急ぐ弥生さんに「待って、決めさせようとしないで」と夏が止めました。
今回は、弥生さんが「待って」と止めた。
月岡くんは待ってくれる、弥生さんなら言ってくれる。
やっぱりそういう二人なりの信頼関係があってこその「待って」だと思います。
結局この場では弥生は本音を語ることはありませんでした。

よくある恋愛ドラマだと、こういうシーンで夏がゴリゴリ押して弥生が感情大爆発して泣きじゃくって、気付けば抱き合い…みたいになりがちですが、この場で感情的にぶつけ合うのではなく、お互いそれぞれの時間を持ったうえで、きちんと"話し合い"をして決別したというのも、私はすごく納得でした。
夏と弥生はもう、ただの恋人ではないから。
親になるかどうか、海ちゃんとどう向き合って歩んでいくかの決断において、愛だの恋だの感情だけで解決に向かわせない。
どこまでも筋の通った、姿勢を正した作品だと思います。

最後に、「手紙読んだ?」と聞いた夏。
弥生がまだだと答えると、「わかんないけど、母親になる人とかじゃなくて、俺と一緒に親になるかどうか悩んでくれた人に宛てたんだと思うから。だから、弥生さんが読んで。」と夏。
「わかった」と答えた弥生に、「俺は別れたくない。三人でいたい。」と伝え、この日は帰宅した夏でした。

水季が夏に宛てた手紙。
まだ内容は明かされていませんが、前回ラストに部屋でその手紙に目を通しているようなカットがあったので、もうこの時点で夏はそれを読んでいると思います。
水季が「夏くんの恋人へ」と宛てた手紙の内容が、親になるか悩んでくれた人に宛てたものだと夏が思えたのは、何かしらその水季の夏宛ての手紙が影響しているのかもしれません。
または、水季ならきっとそうするって思ったのかな。
夏宛ての手紙の中身も、気になるところです。


水季の手紙

その日の夜、引き出しから水季の手紙を取り出した弥生。
手紙がしまわれていたのは、妊娠のエコー写真をしまっていた、あの引き出しでした。

弥生はついに手紙を読みます。水季の手紙、全文です。

「夏くんの恋人へ
はじめまして。面倒なことに巻き込んでしまって、ごめんなさい。ハッキリしない夏くん、まだ幼い海、短気な母、気の抜けた父と、厄介な人たちに挟まれて、それはそれは窮屈だったと思います。海を妊娠しているとわかったとき、最初は中絶するつもりでした。相手のことを考え過ぎたせいです。でも、珍しく他人の言葉に影響され、自分が幸せだと思える道を選ぶことにしました。夏くんではなく、海を選びました。そのおかげで、海を産んで、一緒に過ごすことが出来た。海を見るたび、話すたび、思うたびに、正しい選択だったと思えています。多分人より短いから、幸せな人生だったと言うのはちょっと悔しいし、他人にあの子は幸せだったと勝手に想像されるのは、もっと嫌です。でも、海と過ごした時間が幸せだったことは、私だけが胸を張って言える事実です。誰も傷つけない選択なんて、きっとありません。だからといって、自分が犠牲になるのが正解とも限りません。他人に優しくなりすぎず、物分かりの良い人間を演じず、ちょっとズルをしてでも、自分で決めてください。どちらを選択しても、それはあなたの幸せのためです。海と夏くんの幸せと同じくらい、あなたの幸せを願っています。」

「海のはじまり」第9話 - 南雲水季

水季の手紙をモノローグに流れる映像。
水季は病室で夏宛ての手紙を書いた後、封筒に封をしようとして、ふと思い立ち、「夏くんの恋人へ」という手紙を追加で書き始めていました。
この時点で夏が弥生と付き合っていることを水季が知っていたかどうかはわかりませんが、夏が言うように、「一緒に親になろうか迷ってくれる人」への手紙だからこそ、宛名が「恋人へ」だったんでしょうね。
まだ母親でも、妻でもない、一人の女性である誰かへ。
アパートで見かけた弥生さんが浮かんだかもしれないし、弥生さんではない別の女性であったとしても、もしいつか夏が海の存在を知り父親になると決めた時に隣にいるその誰かに、自分は迷惑をかけてしまうし窮屈を強いてしまうだろうけれど、どうか自分の幸せのための選択をしてほしい。
水季はそんな想いで手紙をしたためたのでしょうか。

ここから、映像と文章の重なり方が美しくて、切なくて、素晴らしかったです。

弥生の家から重い足取りで一人で夜道を歩き自分のアパートへと帰宅する夏。
夏が階段を上がるところで、まだ明るい時間に水季が海と手を繋ぎ楽しそうに二人でアパートへ帰宅する映像に切り替わり、モノローグは「海を見るたび~」の部分。
値引きしたコロッケを美味しそうに食べる二人。
薬を海に見せないように隠す水季。
実家の縁側に並んで寝そべり絵本を読む二人。
「海と過ごした時間が幸せだったことは、私だけが胸を張って言える事実です。」
他人は、苦労した母子家庭、若くして亡くなった母親、と、かわいそうだと二人を語るかもしれないけれど、そして実際に苦労は絶えなかっただろうけれど、水季にとってそれは、確かに正しくて、幸せだった日々。

帰宅し、現像に出していた弥生の写真を眺める夏。
この時の水季のモノローグは、「誰も傷つけない選択なんて、きっとありません。だからといって、自分が犠牲になるのが正解とも限りません。」
これは弥生だけでなく、夏にも向けられた言葉のように受け取れます。
何かを選ぶ時、誰も傷つけないなんて、何も手放さないなんて、きっと無理。
水季はきっと夏に対しても、自分が背負う一択ではなく自分の人生のために決断をしてほしいといったことを書いているような気がしますが、夏が海を選ぶのなら、それは犠牲心や義務感からの決断ではなく意思であるべきだし、弥生を傷つけずにそれを選ぶことは出来ないという現実、だからこそ夏も、自分の人生を自分の意思で選ぶべきだというメッセージに聞こえます。

そして最後、「他人に優しくなりすぎず~」の部分、その文を読む弥生の表情には、どこかはっとしたような印象がありました。

ここ、「私があの日ノートに書き残した言葉だ!」とピンと来たかどうかまではわからなかったですが、そこまでは確信していなかったのではないかなと私は思いました。
そこまでピンときていたら、夏くんに聞きそう。
もしもそこまで弥生さんが気付いていたら奇跡だしドラマチックでそれはそれで良いのですが、言うてももう7年前くらいの出来事、そしてきっとあの時ノートに言葉を残した時の弥生って、少なくとも通常の精神状態ではきっとなくて、半分虚ろな状態でどこにも吐き出せなかった想いをそこに書き綴った、という感じだったと思うので、自分が書いた言葉の一言一句を覚えていないような気がする。
でももしかしたら、この水季の言葉を読んで、自分がかつてあの体験をした頃に思ったことを「そうだった」と思い出したのかもしれない。
「あの時ノートに書いた!」ではなくて、「私もこう思ったことがある。そうしようってあの時思ったんだ。」、そう思い出してはっとした、みたいな感じに思いました。
シンプルにそんな過去とは切り離されていて、水季の言葉にはっとした、というのもあるかもしれません。
これは受け取り方はさまざまですね。
いずれにせよ、誰かにと託した言葉が、巡り巡って自分の元へやってくる。
水季から弥生へ、女性から女性への、この物語にテーマに通じるエールであるとも思いますし、例えば親から子へ、その子がまた子へと、誰かを想って願って託すものは、きっとずっと巡っていく、そんな壮大な円環を感じさせるような流れでした。

仲良くしてくださいね

回想シーン。水季の病室にやってきた津野が、「夏くんの恋人へ」と題された手紙を書いているのを見つけ、「それはいらないんじゃない?」とぽつり。
ここで津野くんは手紙の存在を知っていたんですね。
「要りますよ」と答えた水季。
夏と恋人がこういう展開になることを予測していたかのようで。
水季なりにどこまでも夏のことをわかっていて、想っていたんだろうな。

その人(恋人)のせいで会うのやめたんでしょと言う津野に、「せいってことはないです。この人なんもしてないし。私が勝手に会わせないって決めたんです。」と水季。
どこまでも自分の選択。
以前津野が弥生に、水季が海を連れてアパートまで行って弥生の姿を見て引き返した話をした時、津野は「まあそれは南雲さんの判断なんで。あなたが何かしたわけじゃないし。南雲さんそういう人なんですよ。そういうこと知らずに代理されるのなんか嫌なので言っておきます。」と言っていました。
「あなたが何かしたわけじゃないし」というのは、この時の水季の言葉を受けてのものだったんですね。
もしいずれ海ちゃんが「前にママとアパート来たの」とか言い出した時に、弥生さんが「もしかして自分のせいで水季さんは夏と会えなかったのでは」なんて思ってしまったら、的な配慮もあって、だからこそ津野はこれを弥生さんに伝えたのかなと思うと、これはもう本当に勝手な妄想なのですが、ぐっときます。
「南雲さんが誤解されたら嫌なんで言っておきます」みたいな。
勝手に、ありがとう、津野。

両親や海ちゃん、そして津野宛てには手紙を書かないと言った水季。
「ダメ元で聞くけど」と自分宛ての手紙の有無を確認した時の津野くん、好き。(何)
このやりとりの前に、この津野と水季の二人には、特別編で描かれた恋のはじまりとおしまいがあったのだと思うと、それもそれで胸がきゅっとなりますね。

「今会える人には書きません。残すものがないと、出来るだけ直接伝えようって思えるし、限界ギリギリまで生きられるような気がするから。」と言った水季。
するべきことがあると、生きる力が湧く。
最後の最後まで実家を頼らず、実家に戻ってすぐに体調が悪化してしまったことにも繋がります。
会えるうちに、会える人に、自分の言葉で、自分の本音を伝えること。
その難しさと尊さについて、考えさせられます。

最後、「もし会うことあったら仲良くしてくださいね」と、夏くんの恋人と仲良くしてと津野に頼んだ水季。
「やだ…なんかやだ…」と首を振る津野くんが本当に嫌そうで(笑)
嫌ですよね、かつて好きだった女の元恋人の恋人と仲良くするなんて(笑)
でもきっと、津野がなんやかんや弥生を気に掛けていたのって、こうやって水季に言われたからなんだろうな。
水季の選択や行動は、この物語をドライブする要素として良くも悪くも影響は大きくて、ひっかきまわしていると言えばそうなのかもしれないけれど、それが誰かの意思を呼び覚まして動かしているような部分もあって。
死んだからといって、消えるわけではない。どうしたって居続ける。
その表現を担うのが水季という存在。
やっぱり水季が夏に残した手紙が気になりますね。


弥生の決心

雨の中、夏のアパートへやってきた弥生。
もう顔が、何か決意した顔してる…!
ちょっと不安げに迎え入れる夏くん。
いよいよ二人、決戦です。

ちょっと話は逸れますが、女ってこういう、こうって決めたらスパンといける、みたいな強さ、ありますよね。
特に恋人と別れる時って、あれこれ限界まで悩んだとしても、もう決めたら、長引かせない。スパっときめる。
だからこの弥生さんの行動の早さと意思の強さには共感。
逆に勢いで、揺らがないうちに決めきる必要もあるし。

よくよく考えるとやっぱり、夏と弥生のこの状況・関係性って、それを続けるも終えるも弥生に委ねられていて。
夏は別れたくないという意思を示したけれど、夏の立場ではそれを弥生に強いることは出来ないから。
自分が手綱を握っている、その状況で答えを出さなければいけないのってすごくキツイけれど、弥生の何かを決意した表情から、この時点で、別れを予測した視聴者は多かったのではないでしょうか。
夏くんもきっと、多分そうだろうなって覚悟しながら、向き合ったんだね。

たくさんの荷物を抱えてやってきた弥生。
手作りしたパッチワークのポーチ、ひらがなカタカナのドリル、「もりのとしょかん」の絵本、水色のイルカのパペット。
どれも海ちゃんのために選んだもの。
図書館好きな海ちゃんが好きそうな絵本だし、以前は女の子だからとピンクのイルカのぬいぐるみを渡したけれど、今回は青が好きだから水色のイルカ。
海ちゃんへの理解度がちゃんと上がっているのも、弥生が誠実に海と向き合ってきたからこそで。
でもそれらのプレゼントを、夏に預ける弥生さん。
もう完全に、これは、それですね。
明らかに何かを感じとりつつも、夏は弥生に「もうちょっと待ったほうがいい?」と声をかけ、弥生が今日自分に伝えにきたのであろう答えを、聞きます。

二人でいたかった

弥生さんの言葉、全文書き起こしです。

「誰かの役に立ててるって思いたかったの。私がいないとだめだなってことあると、やれやれって思いながら安心した。最初は居心地よかった。三人でいて楽しいし、なりたかった母親にもなれる。三人でいて何の不満もなかった。三人じゃないって気付いて。ずっとどこかに水季さんがいるの。それ感じて、奪い取ったみたいな気持ちにもなるし、水季さんのこと知らない自分だけが仲間外れみたいな疎外感もあるし。本当、仰る通りで、三人でいるの、だんだん辛くなった。でも、月岡くんのこと、好きだしなあ。海ちゃん可愛いなあ。お母さんになりたいなあ。別れたいとかじゃない。一緒にいたい。でもいると苦しい。でも、頼られると嬉しい。お母さんに間違えられて、嬉しくて苦しかった。お母さんさせてもらえるのに、水季さんにはなれないから、嫉妬してたの。私なんかよりずっと大変な思いしてきたってわかってるのに。羨ましくて仕方ない。月岡くんが水季って言うたびに、海ちゃんがママって言うたびに、羨ましいとか、悔しいとか、ちょっとずつ溜まってった。二人のことは好きだけど、二人といると、自分が嫌いになる。三人でいたい三人でいたいって言ってくれて嬉しいんだけど、嬉しいのに、やっぱり私は、月岡くんと二人でいたかった。」

「海のはじまり」第9話 - 百瀬弥生

弥生さん。弥生さん。弥生さん。弥生さん。弥生さん。

すみません、ストーカーみたいな字面になってしまいました。

はあ。もう。弥生さんの本音すぎて。もう本当に本音すぎて。何の文句もない本音。もうそれ以上でも以下でもない、本音。何の反論もございません。

とても人間らしくて、誰のせいでもなくて、どうすることも出来なくて。
台詞自体が本当に過不足なさすぎる完璧すぎる台詞だし、有村架純さんの、淡々と冷静に話をしながらも、途中で目を閉じたり感情を整えようと間を置いたり、涙をこらえて、顔を背けて、涙が溢れて、時々笑ったり、パペットを撫でたり、そういうお芝居も相まって、そこにいた夏くんのように、ただただ弥生さんのこの本音の吐露を受け止めていました。
何の文句もなかった。
「でもそれは!」とか「だったらこれは?」とか、何もない。
そうだよね。苦しかったよね。自分を嫌いになるのが辛かったんだよね。二人でいたかったよね。
ただただ受け止めるしかない本音。完璧。
他人はこれまでを見守りながら、誰が可哀想だとか、誰が辛いだとか、勝手にあれこれ言ってきたかもしれないけれど、弥生さんの人生や感情は弥生さんだけのもので、向き合うのも手放すのも選ぶのも全部弥生さん。
そうやって向き合ってきた弥生さんだけが、決める権利と言語化する権利を持つんですよね。
弥生さんの言うことがすべてで、それが本音。
ちょっと語彙力が追い付かないのですが、圧倒的でした。

「月岡くんと二人でいたかった」。
冒頭の二人の恋のはじまりや、クリスマスのショッピングモールでの会話を思い返すと、本当に切ない。
この前に夏くんが弥生さんに言った「二人でいたいと思っていた」に対する返事のようでもあって。
二人とも、同じだったんだよね。同じだったのに。
「二人」という選択肢を、もう二人は、選べない。

弥生さんが抱く水季への嫉妬というのは、夏が自分より水季を好きだ、みたいな浅い嫉妬心ではないと私は思っています。
だって水季はもういないし、弥生さんには踏み込めかい過去はあっても、これからの未来をつくっていけるのは弥生さんだけだから。
でも、どうしたって水季との間にできた海ちゃんがそこにいる以上、それは、水季とも一緒に生きて行くってことで。
その存在のどうしようもなさ、どうしたってそこにいるということ、それには敵わないということ、それを、嫉妬という言葉で語ったのかなと思いました。

途中少しだけ言葉を言いかけようとした夏くんも、もう黙って聞くしかなくて。
目黒さんの呼吸とか唇を噛むような細かな演技、滲む涙のお芝居も、素晴らしかったです。


お母さんにはならない

弥生さんが一通り言い終えた後、弥生さんの右手にいたイルカのパペットを外してあげて、代わりにティッシュを渡してあげる夏。
そして、夏は、そのパペットと卓上にあった海ちゃん用のプレゼントを、すべて一度床へ下ろします。
もう二人は、「二人」を選べるただの恋人同士ではなくなってしまったけれど、今、この二人の関係について選択をするこの場面においては、水季も海も排除して、二人で向き合いたい。
そんな夏の気持ちが表現されていたように思います。

水季と海の存在はどうしたって目を逸らすことは出来ないし、どう考えたってこの二人の選択に無視できないほどの影響は及ぼすのだけれど、誰かのせいではなく、二人が、それぞれが、自分たちの意思で選択をするのだということ。
そのことも、水季や海を感じさせる要素をいったん二人の前から下げた演出から感じます。

「あとは?あと言いたいことある?」
そう聞いた夏。
もう、その先の答えなんてきっとわかってたよね。
弥生さんには、まだもう少し、きっと言おうと決めてきたことがあるはず。
きっとそう思ったのではないでしょうか。
いったん涙を拭い落ち着いた弥生を夏が促し、弥生は伝えます。

-弥生「海ちゃんのお母さんにはならない。」
-夏「…うん。」
-弥生「月岡くんとは、別れたい。」
-夏「…うん。」

「海のはじまり」第9話より

うん。うん。うん。うん。うん。うん。うん。(涙)

弥生さんが「お母さんには"なれない"」ではなく「お母さんには"ならない"」と、意思のかたちでちゃんと言葉にしたのが、私はなんというか、言葉が間違っているかもしれないのですが、とても嬉しかったです。

自分が母親をやれるのか、モヤっとした気持ちをどうしても抱いてしまう自分に対して、私に出来るのか、無理かもしれない、ってきっと散々悩んできたであろう弥生さん。
そんな弥生さんが、私にはなる資格がない、なれない、逃げ出した、そういう言い回しではなくて、色々悩み抜いた末に下した、「ならない」という決断。
家族や母親というものに対する理想や、手を離してしまうことやモヤっとした気持ちを抱いてしまうことへの罪悪感、そういうものを背負ってしまった重苦しさを手放して、自分のために、「ならない」という選択をした。
それが伝わってくるこの言葉を、弥生さんの言葉ではっきりと聞けたことが嬉しかったし、この時の弥生さんの言い方、夏のことをちゃんと見て、涙を流さずに、穏やかに、でもはっきりと伝えたこと。
もっとどうにかならなかったのかなってどこかで思ってしまう部分はあるけれど、たらればなんてないし、今の弥生さんが、この決断に至って、それを夏に伝えられたこと、悲しいのだけれど、どこか清々しささえあって。
ずっと苦しかった弥生さんが大きな荷物を手放して解放されたこの瞬間に、私はほっとしました。

一方、夏くん。
予測していたとはいえ、言葉にされるとちょっとやっぱりキツイですよね。
この時の2回の「うん」の言い方が秀逸すぎてちょっと震えました。

1回目の「うん」は、消え入りそうな、弱弱しい声。
そして2回目の「うん」は、もうほとんど聞こえない、息だけが響くような音。

かつて、この部屋で水季と向き合って同意書にサインをしたあの日の夏くんともどこか重なるようで。
好きな人に苦しい思いをさせたことをただ心から悔やんで、なんの言い訳もせず、何か言うことも出来ず、ただ受け止める。
やっぱり夏は、選ばれない。
そう思うとちょっと夏が苦しいのですが、このシーンではこうするしかないよねやっぱり。
弥生さんが解放されて、夏が孤独と覚悟を背負う
そんなシーンだったように思います。


同じ。よかった。

少し涙も落ち着いて、やっぱりどこかすっきりした様子の弥生さん。
「そっちは?言いたいこと、あとは?私が頑張ったせいで頑張らせちゃったでしょ。ちゃんと言っていいよ。」と、夏に本音を言うように促すのですが、この台詞、夏が別れたくないとしがみついてこないであろうことや、夏は海を選ぶであろうこと、それをきっと弥生さんもわかっていただろうけれど、一方的に伝えて去るのではなく、あくまで二人の選択として別れを決断しようと扉を開く感じ、とても好きでした。

-月岡夏「三人が無理なら、どちらか、選ばなきゃいけないなら、海ちゃんを選ぶ。」
-百瀬弥生「うん。よかった。私も、好きな人と離れても自分が納得出来る人生と、辛い気持ちのまま二人のために生きる人生、どっちにするか考えて、自分を選んだ。二人のこと選ばなかった。だから同じ。よかった。」

「海のはじまり」第9話より

夏くんも、よく言った。頑張った。
「海ちゃんを選ぶ」と言った後の表情。
ととも苦しそうで、自分がそう言うことでこの関係は終わってしまうけれど、でも覚悟を決めて言った夏くんです。

弥生さんもきっと、夏が海を選ぶことはわかっていたし、そうあるべきだと思っていたし、そうしてほしいと心から思っていたはず。
もし選べたなら二人でいたかったかもしれないけれど、今はもうこの状況で、海ちゃんより自分を選んでほしいなんて思わないはず。

夏は、海との「二人」を選んだ。
弥生は、海と夏という「二人」を選ばなかった。

「選ぶしかなかった」でも「選べなかった」でもなく、意思で、選んだ夏と、選ばなかった弥生さん。
やっぱりどこまでも、「選択」の物語。

人生は選んだものと選ばなかったもの、その両方で出来ている。
そうやって選んだり選ばなかったりして進んでいく人生は、自分のもの。
人と関わって、影響を受けて、時に流されたり迷ったりすることもあるけれど、自分は自分の人生しか生きられないし、自分の人生を生きるのは自分だから。
自分の意思で、選ぶこと。
その結果、この二人は、別れという選択をしたけれど、そこにはたくさんの涙が流れたけれど、前に進むための選択。
答えは違ったけれど、同じ気持ちで、した選択です。

帰るねと言って立ち上がった弥生を玄関まで見送ったところで、「待って」と腕を掴み「送ってく」と夏。
ここ、弥生さんに対する誠実さも感じられるし、とはいえそんなすぐには断ち切れない名残惜しさのようなものも感じられました。
そしてなにより、過去、あの時水季とは、同意書のやりとりをした後きっと夏は何も言えずに出て行く水季を見送って、そのまま水季と会えなくなってしまった。
その経験って夏の中に少なからずトラウマみたいな感じで残っていると思うのですが、それを繰り返さないように、もう少しだけ、駅まで送る間だけ、一緒にいたい、その気持ちに素直になって行動した様子の夏くんでした。


二人の時間

雨が止んだ道。弥生の右手を握る夏。
「今日まではいい?駅送ったら、それで終わりにするから。それまで海ちゃんのことも忘れて、今日、終わるまで。」

頷き、手を繋いだまま歩き出す二人。
恋人繋ぎに変えて、初めて出会った時みたいに天気の話をして。
昔みたいに笑い合って。
駅のホームに到着しても、ベンチで手を繋いだまま並んで座って、どうでもいいような職場の話をして笑い合って。
水季のことも、海ちゃんのことも忘れて、他愛のない、二人の話。
最後の、二人の時間。

う”う”ううううううううう(涙)

リアタイで所見をした時は、涙を垂れ流しながらも笑顔っていう、情緒大丈夫?っていう顔でただただ観ていました。
この二人、別れるんですよ?(涙)

仮にこういう時間を、海ちゃんと出会ってからも二人が意識的に持つことが出来ていたとしても、いつかはぶつかってしまったであろう二人の問題。
そう。
やっぱり、冒頭で描かれた二人の関係値にもあったように、やっぱりこの二人って、弥生さんのお姉さん感、もっというお母さん感、あえて言葉にすると「母性」のようなものと、夏くんの年下彼氏感、幼さ、甘えんぼ素質とのバランスがうまくハマって心地よい二人だったから、もし海ちゃんのことがなければそのまま穏やかに結ばれた二人だったかもしれないけれど、いずれはどこかでそのバランスが取れなくなる危うさもあった二人だったと思います。

付き合っている分には、そしてもし大きな波風が立たなければ、どちらかがスルーしたり我慢したりしながらなんとなくやれたかもしれない。
でも本質的には根底にあった課題、バランスがある意味取れているのだけれどある意味アンバランスみたいなその危うさが、この海ちゃんの登場によって浮き彫りになってしまって、思っていたよりも早く想像と違うかたちで直面してしまった、そんな二人だったようにも思います。

そんな二人があえて最後に、恋人としての二人の時間をつくったこと。
「父親にならざるをえなかった彼氏」でも、「母親になれなかった彼女」でもなく、ただの恋人同士として最後の時間を過ごして、ちゃんと別れること。
これがきっとこの二人にとってはとても意味のあることで、別れが決まっているからこそこんな風に穏やかにすごせた時間だったんだろうな。

0時を過ぎていたことに気付く二人。

-百瀬弥生「ま、終電あるうちは今日だよね。」
-月岡夏「うん。今日の終電だから。」
-百瀬弥生「だよね。じゃあまだ今日だ。まだ今日。」

「海のはじまり」第9話より

恋人同士の名残惜しさを表現するシーンとして、とても素敵。
もう今日じゃないけど、まだ今日だよね。
もう少しだけ。もう別れるって決めてるけれど、もう少しだけ。
そう。
未練というより、名残惜しさ。
未練って、いつまでも過去に向いているようなイメージがあるけれど、名残惜しさって、愛おしい過去を想いながらも進んでいくというイメージ。
この二人の間にこの時あったのは、未練じゃなくて、名残惜しさだったように感じます。

少しだけ無言になって、なんでもない話するの久しぶりだね、と話す二人。
弥生さんは少し笑って手を離そうとしますが、夏くんは、やっぱり弥生さんへの想いをあらためて感じてしまったのか、ちょっと想いが溢れそうになってしまい、弥生さんが離そうとする手をぐっと繋ぎます。

-百瀬弥生「水季さんの手紙読んで、別れるって決めたの。」
-月岡夏「何書いてあったの?」
-百瀬弥生「幸せになれる方を自分で選んでねって。あんなに嫉妬してたのに、水季さんのこと好きになっちゃった。だから、海ちゃんのことも好きなままでいれる。読んでよかった。」

「海のはじまり」第9話より

水季に対する嫉妬心がなくなって好きになったって、きっと本心。
こう話す弥生さんの表情は本当にすっきりしていて。
三人でいる時は自分のことが嫌いだったけれど、この選択によって弥生さんは、夏と海のことを好きなままでいられるし、自分のことも好きでいられる。
この選択が、自分が納得できる選択だと、苦しみながらも色々な可能性を考えた上で答えを出した弥生さんの清々しさが伝わってくるようでした。

一方夏は、電車のアナウンスが聞こえ、弥生が終電の前の電車に乗ると言い出すにつれて、名残惜しさが高まってきてしまったようで。
名残惜しさなのか未練なのか、一瞬感情が溢れてごっちゃになってしまって弥生を繋ぎ止めようとする夏を、先回りして制するように、弥生は海ちゃんには自分から伝えさせてと言い、「もう少し話そう」という夏の言葉も制します。

-月岡夏「もう少し話そう。」
-百瀬弥生「これからも、何かあったら頼って。もう二人と関わりたくないとかそういうのはないから。あ、海ちゃんのママが出来たらそれが一番だけどね。」
-月岡夏「俺やっぱり弥生さんのこと、」
-百瀬弥生「頑張れ。頑張れパパ。応援してる。ちょっとだけお母さん出来たの、本当に嬉しかった。それは本当。本当に本音。頑張れ。」

「海のはじまり」第9話より

まっすぐ前を向いて、努めて笑顔で話す弥生。
「俺やっぱり、」と言いかけた夏は切実で、でもその言葉を聞いてしまったら、弥生さんも揺らいでしまうから。
そしてそれは、今目の前の感情に身を任せようとするだけで、本当の意味で自分が納得出来る正しい選択に、二人にとってならないから。
被せるように、遮るようにして弥生が言った「頑張れ」。
前を向いて、笑顔で、少し距離を置いて、でも夏を鼓舞するような「頑張れ」。
「しっかりしなさい」と夏に伝えるかのような「頑張れ」。

繋いでいた手を離して、その手を夏の肩にそっと置いて、「頑張れパパ。応援してる。」。

ただただ涙がこぼれしまう夏。
一方でもう弥生さんは、なんかもうお母さんみたいな顔なんですよね。
最後にもう一度「頑張れ」と、今度はちゃんと夏の目を見て笑顔で伝えて、ホームに到着した電車、乗り込む弥生、その背中を見つめる夏、流れるback number、嗚咽する私(不要)

弥生さんが夏に背を向けて座ったのは、泣いている自分を見せたくなかったし、泣いている夏のことも見れなかったから。
ここで笑顔で手を振るとかしなかったのもよかったな。

もしここで夏が強引にでも弥生さんを引き留めたりしたらもっとドラマチックなのかもしれないけれど、そんなことはしない二人。
動き出す電車。泣きじゃくる夏。
もうむせび泣くような夏の姿が、お母さんから手を離された子どものようで。
あの時オフィスの前で迷子になっていた男の子のようで。
夏くんがここまで感情剥き出しでむせび泣いたのって初めてで、それだけの想いがあったのだろうと思うと同時に、ここで一度「一人」になった夏くんがとても孤独で、かわいそうにも見えるシーンでした。

夏くんって、水季の妊娠の時には選択権がなくて、一方的に別れを告げられて、知らない間に水季は亡くなっていて、娘がいて、弥生さんと別れて。
これだけ並べると結構やっぱりキツイ、キツすぎる。
ここでもまた、手を離されて一人になってしまった夏くん。
今回は苦しい結末とはいえ、弥生さんとは二人で決めることが出来たのがまだ救いかな。
やっぱりことの発端である水季とは、あの時、夏には選択権がなかったから。
理由はどうであれ夏があれ以上踏み込まなかったというのはあるのだけれど、やっぱり自分の人生に責任を持つのは自分だけとはいえ、二人の間の出来事を決めるのは、一方的であるとモヤモヤが残るもの。
どんな結論であれ、あの時水季と夏がもっと二人で話せて悩めて決断することが出来たら、また違っていたはずで。
それが出来なかったことを、学生だったとか若かったとか未熟だったとかで済ませてはいけないけれど、今回離れたとはいえそこの話し合いをちゃんと二人で出来た夏と弥生。
向き合うことって面倒だし、根気が必要だけれど、そこから逃げずに向き合って、一緒に選ぶこと、その納得感というのは、やはり大きいよなあと思います。


海ちゃんとの「二人」になる前に、一度こうして「一人」になったことで、覚悟が決まるという部分もあるだろうけれど、このホームで泣きじゃくる夏くんは、ただただ幼い子どもみたいでした。

そう、なんか夏くんってやっぱり、どこか年下彼氏感というのか、今どきの男の子感というのか、そういう男性像として描かれているのだとは思うのだけれど、どこか幼くて、甘えてしまって、面倒なことから背を向けてしまう、そういう弱さに対して自分自身自覚しながらもなんとなく変わることからは避けて来て、変わらない自分を包んでくれる母性あるしっかり者の弥生さんといるのが心地よかったんだよね。

そんな関係が付き合っている分には弥生さんも心地よかったから、だから二人は成り立っていたのだけれど、こうして別れを選択して、最後にちょっとだけ弥生さんに縋ろうとしてしまう夏くんの感じとか、小さな男の子みたいに泣きじゃくる感じ、その夏くんのキャラクター特有の幼さがよく表現されていて、これは目黒さんの演技力に加えて、目黒さん本人がもつ雰囲気、キャラクターがかもしだす、他の人だったらやっぱり成り立たない夏くんのシーンだなと思いました。
なんかもう、なんだろう、「よくここで引き留めなかったね。よく謝らなかったね。」って、とりあえず褒めてあげて抱きしめてあげて頭を撫でてあげたくなる感じが、目黒さんの夏くんにはありますよね。
こんな泣きじゃくる男の子の手をちゃんと離した弥生さんも、ほんと偉いよ。
お母さんみたいだったもんな。

弥生さんはきっと、ここで自分が手を離すことで、夏が今まで逃げていた部分に向き合って、またひとつ覚悟を決めることが出来ると、もしかしたらそこまで考えての決断だったかもしれませんね。
もちろん、まず第一に自分のため、自分の人生のためにした選択だけれど、同じように自分自身の人生のためにきっと海を選ぶであろう夏くんにとっても、自分が身を引くことで、覚悟が決まるきっかけになるなら、三人を客観的に見た時にもこの決断がベストなのではないか、とか思っているかもしれません。
苦しかったけれど、とことん悩み抜いた末にそう思う決断を出来たのなら、悩んだ時間に価値はあったし、納得してこれからを生きていける。
「応援してる」は心からのエールであったと同時に、自分が当事者ではなくなり外野へ、またはそのもっと外へ降りるという意思を明確に線として引いたようでもあり、悩み抜いて出した結論への意思表示でもあるように響きました。

そんな弥生さんも、電車の中でやっぱり一人で泣いていて。
夏くんとさっきまで繋いでいた右手をぎゅっと左手で握りしめながら、声を殺して号泣する弥生さん。
この選択には、納得していると思う。
でもやっぱり、好きな人だから。今も好きだから。
お互い好きで、でもお互いを選ぶことは出来なくて。
だけど何かを選んで、その分何かを手放して、進んでいくしかなくて。
それぞれの場所で泣く二人が選んだこの決断が、正解かどうかはこの先が決めるもの。
どうかどうか、それぞれに、納得できる未来がありますように。

なんとか呼吸を落ち着けて、意を決したように立ち上がり歩き出した夏くん。
誰もいなくなったベンチ。
次の場所へと、歩き出した二人でした。


夏の覚悟

一人で南雲家にやってきた夏。
駆け寄ってきた海に向かって、珍しく自分から両手を広げた夏。
海ちゃんを抱き上げたり膝に乗せたりはあったけれど、自分を選んでくれることを確かめるように手を広げて、飛び込んできた海を、その存在を確かめるように目を閉じてぎゅっと抱きしめて。
一人になって、親になる覚悟をようやく決めた夏のその決意を表しているようで、もう海しかいない、逃げ道を断った夏が海に縋っているようにも見えました。

そんな様子に何か感じ取った朱音さん。

-南雲朱音「どうかした?」
-月岡夏「二人で暮らしたいと思ってます。一番大切にします。他の何よりも絶対優先します。頑張ります。」
-南雲朱音「当たり前でしょ。そうじゃないと困ります。」
-月岡夏「はい。」

「海のはじまり」第9話より

夏の言葉を聞いて、少しだけ頷いて微笑んで、「当たり前でしょ」と声をかけた弥生さん。
夏が時間をかけて大切な人との別れを経て辿り着いたこの決意を、静かに受け止めた朱音さんのあたたかさとエールを感じましたし、大人にどんな事情があろうが目の前の命は待ってくれないのだという現実の重みも感じます。

海ちゃんに呼ばれて、玄関で頭を下げて、両手をぐっと握りしめて、南雲家へと入っていった夏。
その背中には、またひとつ段階を上げた覚悟をした夏の、父親になるという固い意思が感じられました。

何よりも優先して、一番大切にする。
夏がこれを言葉にしたことにはすごく意味があるけれど、これってきっと、水季が一人で母になることを決めた時と同じもの。
水季の手紙にも、そういう決意で海を産んだのだというようなことが、もしかしたら書かれていたかもしれませんね。

夏なりに色々悩んで、決して簡単ではない道のりを経て、決めた覚悟。
でもこれって、親としてのスタート地点にやっと立ったに過ぎなくて。
夏は9話かけてここに至ったけれど、果たして人が親になる時、どれだけの覚悟を本当の意味で背負って歩き出せるものなのか、こういう経緯があったからこそ夏が至ることの出来たステージだと思うと、考えさせられるものがありますね。


次回予告にも少しありましたが、まだまだこれから、というか一生、壁は有り続けるし、問題も起こり続ける。
弥生さんと別れて、甘えを断って覚悟をした夏が、自分が自分がと自分を追い込んで背負い過ぎてしまいそうな予感もして、かつての水季のようになってしまいそうで少し心配でもあります。
実の親は一人だとはいえ、やっぱり本当にひとりで子どもを育てるなんて無理だから、夏の周りにいる人たち、月岡家のみんなや、朱音さんや翔平さん、津野くんが、そんな夏をちょっと立ち止まらせたり、支えたり、していってくれるのではないかなと思います。

弥生さんとの関係も、ここでブチっと途切れるわけではなさそうですよね。
「三人」でいることから解放された弥生さんは、また新しいつながりとして夏の支えになれる気もしますし、かつての「silent」の、ハンバーグをこねる紬に湊斗がポワポワのヘアピンの電話をしたシーンとか、そのあとも湊斗が新しい関係性の中で色々力になったように、弥生が夏に対して必要なフォローをしてくれるような気がします。
その先でもし弥生の気持ちが変化するならそれもそれだし、そうじゃないならそれもそれだし。
サブタイトルの「選べなかったつながりはまだ途切れていない」にも通じそうです。

とにかく第9話、一度夏と弥生の関係に区切りがつき、苦しかったけれどどこかスッキリしたような感覚でした。
やっぱり私は、同性の弥生さん目線で物語を観てしまうからなのでしょうか。
皆さんの感想も楽しみです。

しかし。
今回の夏と弥生。
端的に結果だけを言葉にすると、「昔別れた女との間に子どもがいたから今カノと別れた男」と、「付き合っていた男に子どもがいたことを知って別れた女」で。
こういうのって、こういう字面だけ聞くと、「ひどい男」とか「薄情な女」だとかって居酒屋とかで酒のネタに語られていそうですよね。

でも、弥生と夏と水季の物語だけでも、これだけの関係性や、それぞれの迷い、苦しみ、願い、想い、とても他人には計り知れない当事者だけの経緯があって。
やっぱり他人が勝手に想像をして、わかった気になって誰かの事を語るって、本当に余計なお世話だし、身勝手だし、無意味だなとつくづく思います。

一方で、自分たちの真実は自分たちだけが持っていればいいとも思えて。
誰にどう見られようが、なんと思われようが、そういう「誰か」が自分の人生に責任をとってくれるわけではないのだから、まず自分が自分のために生きて、自分のための選択をすること。
そのことが出来ているということが、きっと自分の人生の支えになるということ。
いつもどんな場面でも100%それを貫くって、難しいかもしれないけれど、何かに迷ったら、自分のための選択をすること。
それを軸にするだけでも、より自分の人生を自分らしく、自分が生きているのだという実感を持てることに繋がる気がします。
そんなことを教えてくれた、夏くんと弥生さん。
幸せになってね?絶対だからね?(涙)
なんか、ありがとう。
ただただありがとう。
おいしいもの食べて、ゆっくり寝てね。
そんな気持ちです。




さて。いよいよ残すところあと3話です。信じられません。
すでに幸せだったなあ、この3ヶ月。

何がどこまで描かれるのかハラハラしてきました。
ラスト3話、集大成ですね。見守りましょうね。

今週もありがとうございました!!

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