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【詩】「さよならを言えないままに」

夜の闇の中を走る電車の中
扉にもたれて
ただ流れる景色を見てた

一分にも満たない時間の間だけ
僕の好きな夜景が広がる
色とりどりの明かりを
まだ見飽きていない

十年としか区切れないその時の流れの中で
静かに佇んでいた街の風景に
少なからず癒されてきたのだろう

さよならを言わないままに
僕は今日一つの扉を閉めた
傷つけるだけ傷つけて

悔む気持ちが僕の中に満ちたとしても
僕は赦されることはないだろう
それを知りながら僕は多分明日も笑う

想いくれた人に何も還せないまま
僕は少し滲んだ景色を見てた
思いやれない自分がどうしようもなく哀しくて

言い訳をするようにしか人を見つめられない
この夜景を見る僕の心は憧れなのに

いつものように電車は
長いトンネルに入っていく
出口の明かりはいつもと同じだけど

さよならを言わないままに
僕は今日一つの扉を閉めた
傷つけるだけ傷つけて

・・・そして僕はきっと明日も笑う
誰かを想えない哀しみをどうにもできないままで

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