漫画制作の役に立った技法書を紹介してもよかですか~?
先日、漫画の読切が商業誌に載りました!
商業誌に載るのは実に4年ぶり、オリジナル作品が商業誌掲載されるのはなんと初めてです!
同人でいくらか一次創作もやっていたとはいえオリジナル作品を作った経歴が少ないので載るまでに色々本を読んだり講座に通ってみたりしたのですが、その中でも主にネームやシナリオの面で素人に毛が生えた程度の人間にとってはすごく役に立ったなと思う本などを紹介します。知は共有されるべき…と思っているので…。絵はしらん…なんか好きな作家のまねっこしながら同人誌しこたま出したらまあまあ描けるようになるんとちゃうか…
参考になれば幸いです!
この記事の筆者について
【はやく本題話してよ~!って人は読み飛ばしていいです】
細かい掲載歴や作品などは個人サイトを見ていただくとして、だいたいどのくらいのレベルで漫画を描いてるヤツが「役に立つ!」と思った本なのかの参考までにさらっとこの記事を書いた人間のことを紹介しておきます。
普段はゲーム会社でデザイナー。趣味は同人誌制作。
同人歴としては主に二次創作、数年に1回程度一次創作、2010~2020年の10年でおよそ50冊ほど同人誌を出しました。
2016年からは版権作品の公式アンソロ執筆を、2020年からは半年ほどコミカライズ連載。その後3年ほど病気でほぼ断筆。もともと漫画家志望だったわけではなく同人がきっかけでスカウトされた感じです。
商業誌で執筆するまではネームを一度もちゃんと描いたことがありません。もちろんプロットもやってません。原稿用紙に直。なので技巧的なものの知識はあまりなくずっと雰囲気でやってた。雰囲気で50冊出した。
オリジナル作品の商業誌掲載は今回(2024年9月)が初めて。
好きな漫画家は主だったところを挙げると村枝賢一、浜田よしかづ、弐瓶勉、山口貴由、清水栄一×下口智裕、宮田紘次、柳沼行(敬称略)。
◆シナリオ面で役に立った本
「ストーリーメーカー 創作のための物語論」大塚英志 (著)
多重人格探偵サイコなどの原作の大塚英志先生の創作「実用書」。
1000円しない新書だけど、マジでこの本の言う通りにやったら出来はともかくなんとなく筋の通った話が作れるようになったのですごい。帯に「読むな、使え。」って書いてるのは伊達ではなく、本文中で提示にされる問いに答えていくと物語作成に必要な要素が出揃っていくタイトル通りの「ストーリーメーカー」です。この本が1000円しないのおかしいよ!!!!
「料理を作るように小説を書こう」山本 弘 (著)
SF作家の山本弘先生の小説の書き方の本。
小説の書き方の本なのですが、文法など小説特有のものはほとんどなく、どうやってアイデアを出しキャラクターを考えお話にしていくかをエッセイのような親しみやすさで紹介してくれる本です。
特に設定の穴を埋めようとすることでさらに良いアイデアを見つけられることを紹介した「穴を埋めれば宝が見つかる」や、キャラクターは一面的でなく多層的に作られていることを解説してくれる「キャラクターはレイヤーで考える」といった章は漫画でも大事なことだと思う。
「大人になっても「書くこと」を好きでいたい君へ シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート」新井 一樹 (著)
これはちょっと番外編で…この本が特にというよりは脚本の基礎を身につけられるシナリオ・センターの通学の8週間講座がめちゃくちゃ良かったんですよね。授業の内容自体はシナリオ・センター系の本が「シナリオの基礎技術 新版」と「プロ作家・脚本家たちが使っている シナリオ・センター式 物語のつくり方」と出てるのでどちらか読めばほぼ把握できるんですけど、毎週宿題で短いシナリオを描いて添削してもらうというのがすげえハードだけど良くて、やっぱ手を動かさないと技術って身につかないんだよな~~~って思った…。多少もう絵が描けるなら下手に大金払って漫画講座行くより2万くらい(安!)払ってシナリオ・センターの8週間講座行くのがいいですよ…!
で、手を動かすことさえ自分でできるぜ!って人は前述の2冊のどっちかを買って実践すればいいと思うんですけど、あくまで「脚本(映像作品の台本)」を作るための技術の本なので映像演出を文字でどう表現するかみたいな内容も多くて(もちろん漫画にも役に立つけど)、漫画のお話を考えるための知識速攻!!って感じではないんですよね。
それで最近子供向けに出たこの「14歳からの創作ノート」が「お話を作る」までシンプル化されてていて過不足なくてめちゃくちゃいいなと思いました。子供向けだけど本質は全然外してない本なので、むしろ自分程度のレベルだったらこのくらいの柔らかさから始めたほうが良かったんじゃないか!?と思います。漫画のために今から買うならシナリオ・センター系の本だと最初はこれが一番いいかも。
◆ネームや演出などで役に立った本
「まんが家になろう 」飯塚 裕之 (編)
大昔に小学館から出ていた子供向けの入門書です。子供の頃に親が買ってくれて後生大事にしていた本なのですが、大人になって漫画まともに描くようになって読んでみるとあれ!?ずいぶん話のレベルが高いなとなった本です。
特に山岸栄一先生の「コマ割りのルールとフキダシのルール」、高田裕三先生の「読者のための絵とは?」は大人になってからのほうが擦り切れるほど読んだかも。この2つ読んでおけばめったに読みづらい漫画にならんと思う。特にの特に!!!高田裕三先生の「読者のための絵とは?」は構図や画面構成について描かれた章でこーれがマジですごい。↓こんな内容小学生向けの本でやってたのすごすぎ、高度。
ただこの本めちゃくちゃ古いし絶版本なのでもう中古しかない。読みたい人は頑張って状態いいのを探してくれ…。
「マンガストーリー&キャラ創作入門」田中 裕久 (著)
タイトルに偽りがある!この本、ネームの本だ!!
このタイトルだと実際必要な人には届かないんじゃないかと思うのですがめちゃくちゃいい本です。「このくらいのページ数の漫画にはだいたい何個くらいエピソード(出来事)をいれるとちょうどいい」みたいな、企画を漫画に落とし込むロジックを優しく解説してくれます。
実際にはコマの大きさや作風でページ数単位のエピソード数は人によって前後すると思うのですが、この本の考え方は実践するたびに身にしみていて、自分なりの「◯ページの漫画に◯個エピソードをいれる」が見つけられてかなりプロットからネームに起こすのが早くなった気がします。
この本の著者の田中裕久さんの本は結構良書が多くて、色んな角度からの漫画が描けな~い!の悩みに寄り添ってくれるので新刊出るたび買っています。ただ、タイトルだけだと全部漫画の一般的な入門書に見えるので通販よりかは本屋さんでそれぞれ内容確認して買うのがいいと思います。
◆番外編:創作活動に向き合う精神面での学びになった本
「ネガティブクリエイティブ つまらない人間こそおもしろいを生みだせる」藤井 亮 (著)
CMディレクターやTAROMANの監督などをされている藤井亮さんの本です。こんな面白おかしい作品を作ってるからには本人も面白いに違いない!→いやそんなことはないが…という切り口の創作論。原稿をやり始める直前に発売されたのですがそのタイミングで読めてとても良かったなと思います。
好きなとこいっぱいあるんですが一番好きなのは「仮想ライバルを恥ずかしいほど高くする」の章。
目標はボールを投げるイメージで、重力がかかるのでおこがましいほど高いところをめがけて投げてやっとそこそこの地点に届く…TAROMANを作るときにマジでシン・ウルトラマンをライバル視していた…(ニュアンス)といったようなことを書かれていてなるほどな~!となった。
なので、自分もこの記事の筆者紹介であげたような好きな作家より面白いもの描きたいぜ~という気持ち、気持ちだけはね、持って描いたので頑張れたかなというのがあります。気持ちだけね。
…でも私はシン・ウルトラマンよりTAROMANのほうが好きだよ藤井監督…!
まとめ
いかがでしたか?(いかがでしたかブログ)
この記事でなんか漫画うまくいかねえ~みたいな人が運良く助かるといいなと思います。でも、14歳からの~のところでも書きましたが、なんぼいい本読んでも実際に手を動かさないと身につかないのはマジ。一緒に頑張ろうな…。
品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)さんが「プロだけが知っている小説の書き方」という本の書評でこういうことを書いていました。
この書評がめちゃくちゃ好きで(めちゃくちゃ良い文なのでリンクから全文読んでほしい)、たしかにな~と思い、最近は意図的に精神的エナドリ・自己啓発として創作論や技法書を読んでいる気がします。
なので自分はお気に入り開陳したので、みなさんも目が醒めたり単純に味がうまかったりするエナドリ(技法書、ハウツー本)ぜひ教えて下さい。
ちなみにマジのエナドリはユンケルとチョコラBBハイパーを重用しています。