「買えない味」 お味噌作り
「買えない味」 平松洋子著
そんなタイトルに惹かれ、古本屋さんで買ったエッセイ。
まだ、本棚にあって読んでいないのだけど
「買えない味」っていい表現だなーと思う。
2月は毎年恒例のお味噌の仕込み。
自分の家でお味噌を作るようになったのは
色々な偶然が重なったから。
たまたま家内が「お味噌ってどう作るの?」と聞いてきたので
私の子供の頃の親戚一同集まってお味噌作りをしていた経験を話しすると
「じゃーお家でもできるの?」
「まあね。でも大豆を潰す機械がないと大変かも・・」
と言ったあとで
脳裏には、奥に仕舞い込んだ粉砕機が浮かんだ。
ハーブをティーバック加工にする時
大きいハーブをある程度の小ささにするために
購入したその機械は、粉砕時に熱を発してしまい
ハーブの香りに影響してしまって
お蔵入りしていたものだった。
「あの機械、確か・・アタッチメントを変えると
ミンサーになるって、説明書に書いてあったなー」
「じゃあとは何が必要なの?」
「大豆と麹とお塩だなー道の駅に行ってみる?」
そうして立ち寄った道の駅に
見事に大豆、麹が販売されていて
「あれっ揃っちゃったね。これって作れって事なのかなー」
そういって始まったものだった。
それから毎年の恒例行事になり今年で10年程にもなる。
お友達が少しづつ加わり規模も拡大
昨年からは、ワークショップも開催するまでになった。
年々レシピも工夫され、
また使う大豆や麹に使うお米もこだわりを持つようになった。
今年使った大豆は「やさと」という在来品種で
知り合いの農家さんから分けて頂いた無農薬のもの。
お味噌用の大豆で、甘さと風味がとても良く
茹で大豆で食べても実においしい。
麹は、親戚が作るお米に、歴史あるお味噌屋さんで
麹種を付けてもらったもの。
前日に大豆を洗い、下茹でして一晩置き
翌朝、大豆を3~4時間かけて煮る。
直径33cm前後の寸胴鍋が2本
自家用を仕込む日はそれを午前、午後で2セット行うから
とても趣味とはいえない量で、しかもかなりの重労働なのだ。
私のおばあちゃん世代は、田舎の農家だったこともあり
自分のお家で作らないと食べられなかったのだと思う。
私の親の世代は、手間ひまかけても作ったほうが美味しいからと、
私の世代は、手間ひまかけるんだったら買った方が早いし安いからと。
そうやって暮らしてきた。
私の子供の世代は、作ることすらわからないまま暮らして
いくことになるのだろうか。
「買えない味」は
確かに手間ひまかけて作る、それぞれの家庭の「味」なのかもしれない
しかし
実はその「手間ひま」の中に大事なものが隠されている気がしてならない。
手間ひまは、その味を醸し出す「知恵」
永く、世代、世代に受け継がれてきた生きる知恵は
買えるはずもない。
多くの時間をかけ重労働も伴うけど
それでも余りある豊かさを毎日の食卓に届けてくれる。
この味は、本当の贅沢。
これから自家製は「買えない味」という事にしよう。