買えない味 早春の味
農園では少しだけれど、自家用の野菜も育てている。
販売を目的としていないので、
葉っぱに穴が空いていても、人参が曲がっていても一向に構わない。
食べられればいいから。
夏は、レタスやきゅうり、トマト、茄子などを一通り
冬は保存食用に白菜と大根がメイン。
霜が降りる頃に、自家製のキムチと沢庵を漬けるのが毎年の恒例行事で
これが、本当に美味しい。
キムチ用の白菜は50株くらい植えるのだけど
実のところ全てきれいに結球して白菜にはならなくて
おおよそ1/3程度のものが、
まるで葉牡丹のように葉っぱが開いたまま大きく育ってしまう。
このオープンな白菜は根元が株にならないため
ひと塊で収穫できず、葉っぱを外から一枚一枚かき取って
サラダや浅漬などで食べるのだけれど、さすがに全ては食べきれず
多くの葉っぱや根っこは残ったままとなる。
一般的にこれら結球しないオープンな白菜は
販売する作物としては価値がなく潰されてしまうのだが
うちの場合、そのままにして冬を越させる。
すると翌春にそのオープンな白菜は、花芽をすーっと立ち上げ
黄色い花の蕾を沢山つける。
これが「白菜の菜の花」。
オープンな白菜は、冬に白菜として味わえなくても
シャキシャキと柔らかで、甘く、青い春の香りを放つ
菜の花に変身して再登場してくれる。
その柔らかな花穂を朝摘み取ってサラダで戴く。
ビネガーとお塩、少しのオイルに
温室で咲いていたローズマリーの花をぱらぱらと盛り付ける。
さっきまで農園で元気にしていた白菜の菜の花
元気ハツラツお野菜も「買えない味」のひとつ。