現状認識が一番大切 ~「パーセプション 市場をつくる新発想」~
どんな本?
『戦略PR』など、PR領域を中心に数々のマーケティング論を世に出してきた本田哲也氏の著作。
コモディティ化が進み、商品やサービスの差別化が極度に難しい現代において、消費者から選ばれるための「パーセプション」形成の重要さを論じた本。
どんな人に向いている?
マーケティングの中でもプロモーション領域に関わっている人にオススメ。
ある程度、認知度があるのに伸び悩んでいる商材を担当している人にとっては特に助かる内容になっている
理由は2つ
①マーケティングとして何を目指すべきなのか。何をゴールに据えるべきなのかが明確になる。パーセプションを作るということは、「こうなったら売れる!」を考えることであり、それはすなわちマーケティング目標でもある。そういった業務に関わる人にとっては、分かりやすい道しるべになるだろう。
②この本を読んで、改めて自分の扱う商材を分析すれば、なぜ売れていないのか、どうすれば売れるのかという問いに本質的に答えられる内容になっている。
学びはなに?
①どう思われているかが全て
本田氏によれば、PRの基本としてBehavior(行動)とPublicity(認知)をつなぐ要素として、Perception(認識)があるという。本書の大切なメッセージの一つは、認知と認識を区別せよ。という点である。パーセプションは単に名前を知られている状態でも、主観的なイメージでもない。
パーセプションとは「人々からどんな商材だと思われているか」である。
(イメージとの違いは後述)
「そんなの当たり前じゃん」と初めは思っていたのだが、
読み進めるうちに、以下に自分がプロモーションする側の視点にしか
たっていなかったことが思い知らされる。
パーセプションを考えるには、「今どう思われているか」から始める必要がある。
この本は、マーケターとして現状把握がきちんとできているかを突き付けてくれる内容になっている。
②パーセプションには具体性が不可欠
本田氏はパーセプションを左右する変数として、「事象」「リテラシー」「グループ」「タイミング」「コントラスト」を挙げている。
どれも重要だが僕は一つ目の「事象」が極めて重要だと思う。
「事象」とは、パーセプションの根拠にあたる。
しかし、単なる機能や物性価値の訴求ではなく、消費者から見た具体的なベネフィットに近い。
事例として、アリエールの除菌訴求が紹介されている。
まず、アリエールは衣類に付着した菌を除菌できる効果が実証されている。
当初、これをストレートに訴求しようとしたが消費者の反応は鈍かった。
そこで、「実は通常の洗剤で洗っても菌が残っている」ことを伝えることから始めることにした。
そうすると、「なぜ洗剤に除菌機能が必要なのか」が明確になり、
主な購買層である主婦にとってはアリエールを選ぶことが
「家族のためを思った特別な決断」になるのだ。
これをパーセプションに置き換えると、
「他の洗剤と同じように何のためかよく分からない機能のついた普通の洗剤」から「家族のために除菌できる特別な洗剤」に見え方が変わったということだ。
書いてみると当たり前に見えるが、ほとんどのプロモーションは
アリエールになぞらえると「除菌できます!」としか言っていない。
重要なのは、キーとなる事象をしっかりと準備し、
それを生活者の目線で翻訳してあげることにあるのだ。
マーケターとしてどう思う?
この本は『ジョブ理論』とセットで読むとより有効だと思う。
本書がパーセプションの重要性と意味を説く本だとすれば、
どんなパーセプションを作るべきかを考えるのが『ジョブ理論』だ。
(もっとも『ジョブ理論』中には、パーセプションという言葉は出てこないと思うが)