逮捕しないでねん☆

永劫の責苦。うらぶれた蔵屋敷。デュッセルドルフの解雇番、落葉樹。それら諸々の街道と、人々の物語、情景とが、俺の光明な慰安であった。俺の沈下した地盤であった。それは、遥かなる異国の他人事のような美しい横顔の、あの奇特な階調においては、ひとつの勇気であったのだ。そう、俺の尻と尻尾とは、勇者の雷ーーじゃなくて、蕾(つぼみ)なのである。

ここで、時が変わる。思い出よ。歴史よ。放埓な無知の宴ーー、まだお前はそこに居てくれているか?

昔日の蛮行に差す柔らかい日差し、僕は自分の倉庫番をしていた。鍵さえ存ぜぬ気心の、陽転する気風のひとかけら、僕の裸の押印。君に押す。ムニュっ。

僕を逮捕したらーー

僕は嫌だ!!

僕の悲しむ姿が見たいのか。

僕を逮捕したらーー

僕は嫌だ!!


僕の郷愁、奇襲する涙に貴族の失踪。僕は走る。


僕を逮捕したらーー

僕は嫌だ!!


何度言わせるか。僕は観念して横断歩道に座り込む。クラクション。罵声。

もっと僕を大切にして。だって、ただ裸なだけじゃん。


追憶はここで終いだ。俺はあの日の無念を、過ぎし日の無残な渇望を、言われなき奇行と詩歌に飼育してーー


俺がお前を(逆に)逮捕する。9秒の時点でな。勝った。



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