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筍の叔母のうちへ行こうミッション④完遂編 5/7

まず、この日、出発は午前10時と母に申し伝えておいたが、どうせ出るのは遅れるだろうし、なんなら菓子屋に寄って行きたいと言い出す予感がするので、午前9時30分に着くように早めに出る。

この日は我々(夫婦)は協力体制を取り、運転中に矢継ぎ早に飛んでくる認知症患者の攻撃を迎撃する所存。
いやマジで、右折や急カーブなどを気にしないで話しかけてくる認知症患者と片道二時間、往復四時間密室対面は難易度高すぎる。

着いてみたら母が出てこない。
予想の範疇だったので声を掛けに行くと、「菓子屋の(会員)カードが見つからんのよ。」と言う。
そのカード、死んだ人間(父)の名義だったろ、作り直したらと言って出ようとするが、何故か、玄関で靴を履き掛けていたのに室内に戻って行った。
何故だ。

最終的に、午前10時20分に家を出て、菓子屋に寄ったが、寄る前に車に乗るなり
「あんたこれで払って!」
と現金を人の顔面にねじ込んでくる。
そんなものはレジで出せ。

押し付けてきた現金

結局、私がクレジットカードのポイントを稼ぐために、菓子はクレカで払い、余る現金は母親のデイサービス費用を払っている私の口座に入れておくことにする。

年寄りは何故裸銭を押し付けてくるのだろうか。

午前11時頃、予定より一時間遅れてやっと出発する。
ここから2時間,高速が使えればよかったのだが、筍の叔母の家はとにかく田舎で絶妙に高速でも下道でも時間があまり変わらない(高速だと大幅に回り道になるため)。
その上、高速代だけ掛かるとなると、下道一択になるのだが、とにかく母が後ろから話しかけてくる。
興奮してるのか?
してるんだろうな、久しぶりだし。
しかし、5分ごとに
「ここはどこね?ここはどこね?」
と聞かれても困る。
途中経過の道路の町名を答えられても分からんだろ。
頼むから寝てろ(寝ない)。

遠足の小児のようにうるさい母を載せて、筍の取れるど田舎に着いた時にはへとへとだった。

いとこの住んでいる家は、リアル周囲に「トトロの家」と呼ばれているど田舎さである。
まあ景色はいい。

日本昔話のような山が広がる

いとこの家に着く。
この時点で午後1時よりちょっと手前。

この右手前に玄関があるのだが、中に入るとやたらものが増えていた。
(人の家なので、ちょっと撮影は避けた)
…この増え具合は、高齢者の仕業。

庭からちょっとだけ家

しかし着いたはいいが、肝心のいとこがいない。
いとこの奥さんが仕事なのは分かっていたが、いとこは予告しておいたから在宅のはず…?
が、いない。

そして叔母は在宅だったのだが、叔父の姿も見えない。
ううん?

耄碌していると聞いていた叔母は、
「いとこがおらん!あんた電話かけちゃらんね!」
とこちらに言ってくる、なんでや。
スマホが使えなくなっていると言うのは本当なんだなと思う。
そして叔母は、田舎のおばちゃんの習癖を存分に発揮し、お菓子をどさっと出してきて(うちの母が持って行ったものとは別)、お茶とお菓子を死ぬほど出してこようとする。
いや今から昼飯だから。

ぽんつく

そして出された菓子の中に「ぽんつく」と言うのがあったのだが、うちの母はそれを見ながら
「これなんね、ポンコツね!」
と叫んでいた。

そしてうちの母は、車から降ろしてきた荷物を見遣りながら、怒涛のように喋り始めた(あんまり聞いてなかった)。

ごっそり持ってきた荷物

そこへいとこが帰ってきた。
寿司の出前を注文していたが、コロナで突然配達できませんと言われたので、パック寿司を買いに出ていたと言う。
(先に言ってくれれば途中で買ってきたのにとは思ったが心遣いには感謝する)

我々世代は標準サイズ、老婆二人は小さめの寿司パックだったが、うちの母は見るなりいつも通り
「こんなに食べられん、あんた半分やる!」
と寄越してこようとする。

「いらん。」
断る。
余ったら捨てるように言うと、箸をつける前に分けないといけないとぷりぷりしていたが完食する。
うん、食べれるんじゃねーか。

カップの向こう側に寿司

とりあえず、食事が終わったら我々(私たち夫婦といとこ)は庭やら台所やらに避難。
老人二人を二人きりにするためである。
水入らずで話させようと思ったが、漏れ聞こえてくる会話は、噛み合っているような噛み合っていないような微妙な感じだった。

この間に、従兄弟に、筍を送ってくれた時、母が礼の電話をしてないと言っていたが電話はこなかったかと聞いてみると
「いや、3回くらい留守電入っちょったよ。」
と言っていた。
3回。
奮ってるな。

あと、叔父は糖尿病でだいぶ足が悪くなってたが、現在は入院中だと話してくれた。
叔母はもうスマホの使い方も洗濯機の使い方も分からなくなってきて、仕事らしい仕事はできないと聞き、そういやうちの母も、以前突然「あんた洗濯はどうしたらいいとね!(洗濯機の使い方が分からなくなった)。」と叫んだなあと思う。

叔母の場合、いとこ(息子夫婦)と同居なので、より一層自分でしない率が上がっているのかもしれない。

気まぐれも増えてきて、外食に連れて行っても気に入らなかったら大声で文句を言うし、自分が終わったら他の家族がまだでも突然「帰る」と言い出すと言う…。
うん、うちの母とそっくりである。さすが姉妹。

庭で時間潰し

二時間滞空すればいいかなと思った午後3時。
私が声を掛ける前に、突然母が言った。
「じゃあ帰ろうか!もう暗くなる!」

言い出した、突然の帰宅!
前触れもなかった。

ハンドバッグや荷物を忘れないように回収して、二人は床の間で話していたので、床の間に忘れ物がないか確認しに行くと、床の間の床畳の部分、掛け軸の前に母が持ってきた造花が刺さった花瓶がドーンと鎮座している(撮るのを忘れた)。

何だこれと思って母に聞くと、
「良かろうが、なんか子供の賞状かなんか飾ってあったけど、どけてからこっちの方が良かろうが!」
と言うが、いやそれ、叔母の孫娘の賞状…。
どかすか?普通。

叔母の顔が喜んでるようには見えないのだが、皺くちゃなんでよく分からん。
とりあえず母が去った後で撤去してもらうしかない。
なんかすいません。

いとこはちょうど叔父の病院に着替えを持って行っているところで不在だったが、母はもう帰るとうるさい。
そして、段ボールや詰め紙は申し訳ないが捨ててくれるように頼んでいたのだが、詰め物の紙まで持って帰るとうるさい。

そうこうしているうちにいとこが帰ってきたので挨拶してからることができたのだが、帰りも母は元気なままうるさかった。
達成感に満ちすぎている。

実際頑張ったのは私だ。

母が持って帰った。

ゴミにしか見えない。
いやゴミだろう。
後でこっそり捨てよう。

スナップエンドウ

今回の収穫。
いとこが畑で栽培しているのをお裾分けでもらった。

母にも分けると「いつの間にか豆があった」と言っていた。
いつのまにかではない。

ともかく、今回は母が以前から言っていた妹への形見分けも終わらせ、空中戦のような会話ではあったが、「きちんとした対面」もしたという達成感に満ちている。

だれが?
もちろん、私がである。

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高梨
投げ銭歓迎。頂けたら、心と胃袋の肥やしにします。 具体的には酒肴、本と音楽🎷。 でもおそらく、まずは、心意気をほかの書き手さんにも分けるでしょう。 しかし、投げ銭もいいけれど、読んで気が向いたらスキを押しておいてほしい。