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お布団「破壊された女」の稽古(たちくらようこ)
3月末のよく晴れた日、お布団「破壊された女」の稽古にお邪魔しました。
お布団は、得地弘基さんが作・演出を務める劇団。「破壊された女」は2019年初演の一人芝居で、今回は、永瀬安美さんと、屋根裏ハイツの村岡佳奈さんのダブルキャストでの再演です。今日は村岡さんの稽古!
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得地さんに なんでダブルキャストなんですか? と聞いてみたら、
この芝居を1人で1日2ステージやるのが大変だから(・・・それくらいハードな作品なんですね?!)。
それと、戯曲はまとまっていると思うので、そのぶん俳優によって大きく味が変わるのを試したいのだそうです。
それは、とても楽しみ・・・!
ウォームアップタイム
得地さんは諸事情あって寝不足で、村岡さんは諸事情あって息しているだけで毎日が終わっちゃうという忙しさという今日。
というわけで、のんびり稽古の予定とのことです。
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得地さん→
とはいいつつ、
「プロローグから1章への流れなんだよな」と構成のポイントを考えたり、
「客席を意識し過ぎで、テキストに比重がありすぎた」
と前回の稽古をふりかえったり、のんびりながらもちゃんと稽古に向かう2人。
稽古 プロローグから
村岡さんが「女」そして「彼女」について、話し始めます。
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途中、ちょっとしたセリフの変更。
「刺殺 を 殺傷 にしてください」
なんて物騒な!ですがこの戯曲は全体的にこんな感じです、ダークです。
「画面のポーズ、よかったです。やりましょう」
「駅に立っている時間を作っていいや、あの人、駅に立ってるんだなって」
テキストの内容にそって、得地さんが、村岡さんの動きを細かく決めていきます。
床に置いたペットボトルを手に取る動きについて、得地さんが
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ペットボトルを見つけてから手に取って飲むまでの動きを、村岡さんがいろいろ試します。
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その間も、村岡さんはペットボトルと全く関係ない(ダークな描写の)セリフを言い続けています。
セリフを言いながら、関係ない動きを続けるのってけっこう大変なのですが、
「脳のリソースを割かなきゃいけないことがあるほうが、いい気がする」
それが得地さんのねらいみたいです。
村岡さんの脳に負荷をかけつつペットボトルを転がしたりなんだりした結果、
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「(台本に演出メモをするはすが)感想をメモっている・・・今サイコって書いた」
ペットボトルをいじっているだけなのにサイコなシーンができました!
稽古を見守っていた香川さんがポツリと、「永瀬さんと、結構、演出違うなー・・・」
村岡さん「違うんだー・・・」
もう一方のキャストの稽古をまだお互い見ていないそうで、どうなってるのか気になるところです。
休憩
演出助手の香川知恵子さん。
演出に興味があって、SNSに出ていた演出助手の募集に応募したそうです。
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村岡さんと得地さんはお二人とも乗る場メンバーですが、乗る場ではあんまり会ってなくて
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昨年の屋根裏ハイツの公演「すみつくす」に得地さんが日本語字幕のスタッフとして参加したのが、ちゃんと知り合ったきっかけなんだそう。
稽古 ペットボトルから
シーンごとの立ち位置を決めていきます。
「17の最後にこうなってるって感じかな。18は、じゃあ、壁で。19の前に椅子持ってきて・・・」
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「緊張しちゃった(笑)」
お客さんとの物理的距離も調整。
「才能がありました」というセリフのところで、得地さん「なんか才能ポーズできる?」
ということで、才能ポーズ開発タイムに入ります。
2人でいろんなポーズを挙げてみて、良さそうなポーズで先程のシーンをやってみましたが、
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村岡さんはしっくりこなかった様子。
「(腕を)ここまで持ってくるのが」
手を開いてキラキラするバージョンもやってみましたが、イマイチな雰囲気。
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得地さん「恥ずかしい?」
村岡さん「私の恥ずかしいのボーダーが低すぎるので、やったらいいと思います」
「これできますか、って言ったら、全部村岡さんやるんじゃないかな」
「やりますよ、1回は。しれっと自分がやりやすいようにシフトチェンジしちゃうと思いますけど」
村岡さん頼もしいー!
休憩
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得地さんはいままさに試合中のプロ野球の行く末を気にしています。
自主練
寝不足の得地さんは一休み、村岡さんの自主練タイム。
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していたのですが、
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おやすみしていた得地さん、急に演出し始めました。
復活!!
稽古 2章
さっき稽古したシーンからちょっとだけ飛ばして、2章の稽古。
「常にセリフ以外のことをしている状態にしたいと思っていて」
というわけで、セリフと並行してずーっと動き続ける、という演出が。
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語り部分のセリフと、会話のセリフに、それぞれちがうポーズがつきます。
そして。常に移動!反復横跳び的に移動!!
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片手間に語られる彼女のダークな物語と、唐突に混じる業務用決まり文句と、いっぱいいっぱいな村岡さんの体が重なり、物語のダークと現世のしんどさが目の前にあるいっぱいいっぱいのリアリティをもって現れて、もう目が釘付けです、どうしようずっと見ちゃう。
でも・・・わかります・・・やってる方はとっても大変!!(泣)
「頑張って、がんばれがんばれ」
得地さんは応援するだけ、というか、俳優本人以外は応援するしかできません。がんばって・・・!
このシーンの演出について、
村岡さん「スピードってどんぐらいでやってます??」
得地さん「それくらいでいいけど、(ポーズの)切り替えを早くしたい」かつ「この曲に収まるくらいにはしたいなと思っている」・・・ということは1分も巻くのですね!?
いろいろスピードアップしなきゃなのに、気づいたら、動きをさらに複雑にする相談をしています・・アグレッシブ!
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「1ヶ月半後にこれ覚えてるんだ、わたし・・・」
自分の未来に実感が持てなくなってます。
予定よりちょい早ですが、今日の稽古はここまで。
お互いのコンディションに寄り添いながら、できることをやる、かつちょっとがんばる。現実と理想をつなげられる大人な稽古でした。
得地さん、村岡さん、香川さん、ありがとうございました!
「破壊された女」の公演情報はこちら
5月23日初日です!ダブルキャストどっちもみるのもおすすめ!!
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得地さん&村岡さんと、劇団ごとの稽古の進め方について雑談しました。長めのおしゃべりタイムがある、とか、体力的に4時間までにしてる、とか、ホウホウフムフムと聞いていたのですが、
俳優でも演出家でも、演劇以外のやらなきゃいけないことはたくさんあって、元気でいようと思えば元気でいられるわけでもなくて、つまり常に万全なコンディションで稽古や本番に挑めるわけではない、という現実を前に、
自分たちは常に万全ではない!!という想定でいることが、実はとても大事なことではないかと思うのです。
気合でがんばれ!じゃなくて、
今のコンディションでできることを探す、ダメなときのあがる手段を考えとく、ダメでも大丈夫なバッファをたっぷり用意しとく、とか。
コンディション万全でない誰かや自分を責めてもしょうがないし、万全にできないやつはダメと切り捨てたら誰も残れないし、芸術はそもそも万全じゃない誰かのためにあったのでは??みいなことを思ったりもして(知らんけど!)
「破壊された女」自体がハイパーハードな作品だからこそ、今日はゆっくり稽古〜という日があることが、のちのちとても効いてくるよね、と思いました。
みなさんゆっくり休んでね♡
おまけ
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(メガネ!)
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