離れ ないと
さみしさを埋めるように抱きしめた手に力がこもる。離れないように、不安にならないように。
君はそれに返事をするように、息が苦しくなるくらい力をこめてぎゅーってしてくれる。
思わず吐息が漏れて、顔を埋めたくなる。
しばらくそうしたあと、君はおもむろに顔を離して私を見つめる。瞳が合う。君の瞳に映る私の顔が見えるようなーーうちに、自然とくちづけを交わす。初めは軽く触れ合うだけだったのに、突然君の舌が私の中に入ると、声が抑えられずに君の体を握ってしまう。力の加減もできず、爪も食いこんでしまったかもしれない。
それでも私を離すことなく、抱きしめながらくちづけを交わし続けた。
唇から、唇が離れると、耳と耳で愛撫をするようにさらにぎゅーっとする。いつまでもこうしていたくて、私はもう離れられないように、君を拘束した。君も、同じだと思う。私は拘束されて身動きが取れない。それで、よかった。
このまま溶け合って、いつまでも一緒にいられればいいのに。
それは儚い願いであろう。
私は、いつまでこんなことをしているんだろう。
離れないといけない。そんなこと、わかっている。
けれど、まだ、まだ、一緒にいたい、と願ってしまう。
急にさめてしまった思考が不安な気持ちを倍加させて、拘束を緩めてしまった。
君はそれに気がついたのか、絡めた腕を引き戻して にっこり 私を見つめた。見つめられるくらい、距離が離れてしまった。
あぁ、いつまで、私はこの笑顔が見られるだろう。この癒しが得られるだろう。この、安心、この、心地よさ。もう、離れないといけない。
君は何も言わずにもう一度ぎゅーって抱きしめると、そろそろ行きましょうか、とやさしい声をかけてくる。
私はーーそれに応えるしかなかった。
そうして君と別れて家に向かいながら ぐるぐる 巡りゆく罪悪感と快楽が私を歪ませ、その余韻に浸りながら抜け出せなくなってしまうのだ。