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その縁の不思議たるや

 久しぶりに電車で遠出をした。

 特に当てがあるわけでもなく、何となく海が見たいと思ってさる駅で降り、適当に過ごしてから帰りの電車に乗りこむ。なんてことはない。

 帰りの電車は乗りこんでからずいぶんと待ち時間があった。特に急いでいるわけでもないし、のんびり本でも読もうとかばんから取りーー出そうとして、背後から聞こえる会話が気になって、窓の外を眺めながら聞くことにした。

 優先席に座っているその方々は、おそらく年配の女性たちで、それもお年をかなり召しているように感じられる声色だった。姿は見ないようにしたが、三人の女性だ。

 周りに聞かれる、とかそんなことはお構いなしな声量で、かといって大声なわけでもない。ただ、その会話の中で、知的なやりとりも感じられているのがおもしろかった。

 特に、そのうちのひとりは冷静な物言いと論理的な言葉があり、それでいて自分の主張を押し倒すわけではなかった。

 どちらかと言えば、別のひとりのほうが相手の話しをしっかりと聞かずに持論を捲し立て、かつ、冷静なそのつっこみに、ちゃんと最後まで聞いてよ、という始末であった。

 冷静なご婦人は、はいはい、と聞いてくれている。が、どう見ても、私から聞けば最後まで聞いたほうがよいのは、その方であって、そのアンバランスな感じがよかった。

 三人目の女性の声は判別がうまくつかなかったが、相槌の中からもうひとりいることは察することができた。

 私はその方々の姿を見たい、と思いつつ、振り返るのも失礼に思って諦めた。

 そうして電車が走り出したころには電車の奏でる音によって会話もうまく聞こえず、私は本格的に窓の外の景色を楽しむことにした。

 乗り換え駅に着く。私はついぞその人たちの姿を見ずに降りてーーその人たちも同じ駅で降りるのが見えた。いや、聞こえた。

 そうして、さりげなく振り返ると、やはり年配の三人の女性の姿が見えた。その容姿を見て、声を聞いて、何となく納得するものがある。

 その人たちは乗り換えを待つわけでもなく少し立ち話しをしてから行ってしまった。

 ただ、それだけのことであるが、なんともおもしろい時間が過ごせた、と、満足した。

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ふみ
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