この世の終わりはかくも美しい世界を描き出す
それは、この世の終わりであった。
いや、正確には、それを予兆させるようなもの、というほうが正しいであろうか。
最悪の先にはそれを越える分だけこの世のものとは思えないような景色が広がることは、もはや摂理なのだろう。
それはまさしく、この世の最果てを思わせた。
空一面は紅に染まり、降りてくる宙と瑠璃の雲が描き出すコントラストはもはや、人の手に生み出すことのできない深淵を表現している。
あぁ、記憶の端に残る、恐怖の大王が降りてくる瞬間、というものは、こういうものだったのだ。
破壊が創造に結びつくのも、この世が終わる光景が脳を浄化するのも、慈悲にも近い神の戯れに違いない。
しかし、いくら待とうとも、それ以上何が起こるわけでもなく、時間とともに過ぎていく空の模様はいつの間にか夜にすり替わり、ただの闇が広がるばかりであった。
佇みながらしばらくその経過を観察していた私は、あぁ、今日という世界が終わる、と結論づけて、植物のように根を張っていた足を無理やり動かして、その痛みにうまく歩けないままに、家路へと向かった。
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