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ホーム・アンド・アウェー。

入院はついに二ヶ月を超えた。入院中は何人もの患者を迎え入れ、何人もの患者を送り出してきた。今朝、一時帰宅から病室に戻ると、先週まで昭和さんがいたベッドに、また新しい人が来ていて荷物を整理している。すでに病院のパジャマに身を包むその姿は、まるで新入部員である。そこにダウンジャケットに身を包み、現れた私は、まるで代表合宿から戻ってきた主力選手のようである。「あ、新しくこちらのチームに入りました◯◯です。よろしくお願いします。」そう聞こえた気がする。私もサングラスを外しながら挨拶をした。(イメージ)

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「なさじさ~ん、さっそくですけどシャワーどうぞ」スタッフが私を呼ぶ。着いて早々シャワーとは。新入部員からすると、これもまた特別待遇に見えるのではなかろうか。

そして、私はシャワーに入ったり、リハビリをしたり、まあまあ忙しくして部屋に戻ると、隣人は完全にカーテンを閉じていた。(前にいた昭和さんは一切カーテンを閉めない人だった)「ま、これが普通だよな」そう思って、ベッドに腰掛け、本を読み始めたその時である!

カーテンの向こうから、少々長めの爆裂音が轟いたのである。

ぶぶーーーーーーーっ!

え? え?

ぶーーーーーーーっ!

まじか。
これは「つい出ちゃった」のレベルでもなければ「我慢しないタイプなんだよね」のレベルでもない。むしろ、「より大きめに出していこうとする」レベル。もはやこれは競技者レベルと言っても過言ではない。

ぶーーーーーーーっ!

一気に形勢は逆転した。怒涛の攻撃に私は完全にひるんだ。そして、今もカーテンの向こうから時折聞こえてくる笑い声にびくびくしている。

目が覚めた。

普通の入院生活が目の前にあった。

69歳だそうだ。昼間、売店で見かけた時は、緑色の毛糸の帽子をかぶっていた。その中にもう一つかぶっているのは触れないでおくことにする。

退院まで、あと9日。

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なさじ
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