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【映画感想127】ヴィーガンズ・ハム/ファブリス・エブエ(2022)-殺したヴィーガンの肉が意外とうまかった。倫理観ギリギリの爽やかカニバリズム映画
あらすじ
売れない肉屋を営む夫婦がある日ヴィーガンを殺してしまった。
証拠隠滅のため解体した肉を食べてみたら……うまい!!!!
始まる新しいビジネスの予感!!!!!
感想(ネタバレあり)
もうあらすじから不謹慎ネタ満載なのですが、
あまりにもテンポが良くてさらっと笑わせてくるうまい(美味い)映画。
特に開始3分で
・肉屋の経営がうまく行っていない
・夫婦で方向性が違う(売上より肉質重視の旦那とそれに不満がある妻)
・ヴィーガンの襲撃にあう
のくだりをまとめてるのががすごい。
倫理観が狂っていく様も猟奇的なシーンもサクサク進んでいくので、
なんだか売れないレストランのサクセスストーリーを見ているような錯覚が起きそうになります。
「あの肉(人)は?」
「いやあれはダメだ、ストレスを抱えている個体は味が落ちる。。。」
という人肉物色シーンとか悪趣味すぎて笑ってしまいました。
でこの映画って夫婦関係の再構築の過程がきちんと描かれてたのが面白くて、サン・デグジュペリの「夫婦とは同じ方向を向くこと」という言葉のごとく、2人はヴィーガン狩りにより同じ方向を向き出していきます。
ただ同じ方向を向いているのは妻の「もっと儲けたい」と夫の「いい肉を提供したい」という利害の一致からであってお互いを想っているわけではなく、後半でヴィーガン肉の提供を続けるかどうかで意見が割れ再び夫婦はすれ違ってしまう。
しかし命がけのヴィーガンとの最終決戦を通して、二人は互いの愛を確認するのであった……と、と猟奇スプラッターものなのに夫婦愛の物語にも見えてくる不思議……
最初にヴィーガンハムを売り出すことに乗り気になるきっかけが、「これは高く売れるぞ!」の前にあまりにも美味しかったから、いうのがあんまり憎めないポイントな気がしました。
最後に法廷で取り戻したいものはあるかと問われて妻の方が「ウィニー」と答えるシーン、
・夫の「ウィニーのことを後悔している」という旨のセリフの意趣返しで、妻も夫の気持ちに寄り添うことができるようになったという意味
・ウィニーのペースメーカーさえ見つからなければ捕まらなかったのになあ
・ウィニーがいい子だったので罪悪感がある
のどれかだと思うのですが、
この映画の悪趣味さを考えると
「あれさえなければ捕まらなかったのになあ」
なきもします。笑
しかし娘がかわいそう。ヴィーガンの彼氏と破局するだけならまだしもある日突然両親が凶悪犯罪者だと判明したというのは重すぎる……劇中で悪いことしてないのに……
悪いことといえば、すっかり夫婦の方に感情移入してしまったので、最後に同業者の成金マウント夫婦のインタビューでつい悪感情を抱いてしまったののですが、よくよく考えると殺人を侵さずに真っ当に商売して財をなしてるのでこちらの方が常識人でした。どうしよう感覚が狂ってきている。
ストーリー展開もギャグも独特のキレとスピード感があり良作でした。
サラミを片手にぜひ。