『真夜中ぱんチ』のすゝめ@ラジオ書き起こし
キャラ原案のことぶきつかさ先生が『TAAF2025アニメ オブ ザ イヤー部門「みんなが選ぶベスト100」』に『真夜中ぱんチ』が入っていないことを嘆いておられたので、「『真夜中ぱんチ』面白かったよ!」という人間の声を残しておこうと思い、ラジオから該当部分を書き起こし(人力じゃないよ)してテキスト用に修正してお届けします。
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個人的にはこれが一番面白かったですかね。ちょっと癖があるので、ハマるまでに何話か要するかもしれないですけど、この題材をよくここまで持って行ったな、というのがあるんですよね。
タイトルではあまり伝わらないかもしれないですけど、題材がYouTuber、まぁ、この中ではNewTubeなんですけども、「YouTuber×吸血鬼」という試みで動画配信活動をちゃんと正面からやる、というね。
こういう題材って一歩間違うと流行りを表面だけかすめとるみたいな感じになってしまって、実際にそれを楽しんでいる人たちにあまり刺さらない、みたいなことになりがちなんですけど、テンション感とかやっていること含め、だいぶ芯食って寄せてたな、という風に思うんですよね。
まぁ、「真夜中ぱんチ」というのはチャンネル名で、主人公の真咲がプロデューサー的な立ち位置でヴァンパイアたちを演者として動画配信活動をやっていくわけなんですけども、第1話のタイトルが「炎上娘とお寝坊ヴァンパイア」というところで、真咲をこの炎上娘と置いたのがまずデカいな、っていう。性格があまり良くない、みたいなスタートなんですよね。
「面白けりゃいいんだよ」的な精神というか、主人公の性格があまり良くないというのは、ある意味こういう題材を扱うにあたっては真摯な印象を与えるというか、活動にも本気なんだな、というのが分かる。
作品の中に動画配信活動的なニュアンスを入れるっていうのはまぁ、ままあることだと思うんですよね。それこそ『菜なれ花なれ』の中でもPoMPoMsの活動をネットにアップして「宣伝にもなるし」みたいなところをやってたり、あるいは『推しの子』でB小町のチャンネルをどうしていくか、みたいな話があったりするんですけれども、それの一歩先に踏み込んでいる感じというか、活動そのもの全部をデザインしてブチ込んでいる。この『真夜中ぱんチ』っていうキャラクターのビジュアルで、キャラクター以外も全部構成していくという。だからまぁ、イチから全部つくっていく気概みたいなものがあって、『べしゃり暮らし』みたいな、「お笑い」を題材にするために作中のお笑いそのものを全部つくっていく、みたいな感じにちょっと近いというか。だから、変に浅瀬をかすめとっていくような感じはしなかった、というのもデカいですね。
そこで吸血鬼、ヴァンパイアを据えるというところがミソで、普通交わらなさそうじゃないですか。動画配信活動とヴァンパイアって。活動していく必然性をどうやって持たせるか、というところで、ちゃんとその軸がラストまで貫かれていたのが良かったですね。こういうテンションと色合いでこんな外側からでも動画配信活動をハックできるんだ、と思って。単になぞるだけではこうはならないな、っていうところもありつつ、でも実際的なノウハウというか、作中で真咲が経験として蓄積した動画のテクニックを使っていて、その辺のハイブリッドがかなりうまくできてたんじゃないかな、と思いますね。
関係性そのもので言えば、キャラクター個々人のそれもいいんですけれども、やっぱりこの「晩杯荘」としての連帯もあるし、お目付け役だったゆきが終盤反転して加入する流れも熱い。もちろん真咲とりぶの関係も主軸に置きつつというところで。
これは実際に見てる人たちはどうだったかわからないですけど、私は結構ラストは綺麗に騙されてて。第12話「The Last Live Stream」、決死の配信をやりますよ、という話で。まぁ炎上から始まったんでその禊みたいなものをやった形にはなるんですけれども。「コメントの悪意」みたいなものを炎上絡みで受けるという、その辺りの空気感がリアルだったかもしれないですね。表に出た瞬間に失望される感じというか。普段こっちが活動者に対して向けている目線、過去炎上した人が裏方に徹してて表に出てきた瞬間に「なんだこいつかよ」って思ったりしそうとは思うんですよ。それを中の人的に反転させてくれるというか、ここまで内側から見てきてるから「いや、なんでまだ許されないんだ」と思うというかね。その辺りを上手くヘイトじゃなくてちゃんと「向こう側」にいるキャラクターに寄り添う形でこっちの心を引っ張って行ってくれたところもまた良かったかな、という感じでしたね。
キャラクターのテンションで引っ張っていくところも多分にあるので、そのワチャワチャ感が面白かったりもするんですけれども、そういう意味では今期のP.AWORKS3作品の並びで言うと味付けが濃い方というか、それはやっぱり結果としてバランスが取れてたな、というのは思いましたかね。
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