従業員を10人雇用してわかった働き方改革
朝8:30〜夜18:00までの営業。
日・月・祝日休み。GW・お盆・お正月休みは9連休。
もちろん、残業なんて一切なし。固定給。休憩時間はバッチリ確保。
有給取得率100%のブラックどころかホワイトすぎるはずのお店だが・・
みんな辞めてしまう。
従業員の皆さんにも、個人経営者の皆さんにも、お読み頂きたい。
僕の狂っていく様をお楽しみ頂けると幸いです。
これは僕が失敗の連続から見出した働き方改革案です。
従業員を雇用し始めたタイミング
僕は整体院を営んでいる整体師。
個人整体院として独立開業後、3年ほど経った頃でした。
ありがたいことに予約がパンパンになったんです。
整体師としてこんな嬉しいことはありませんでした。
ただ、日に日に気になることが増えてきたんです。
それが「ご新規さんのお断り」です。
予約がパンパンということは、新規のお客さんをみることができずに電話をしてもらっても断らなくてはならないという状況になってしまったんです。
「腰が痛い」「病院に行っても問題ないと言われて・・・」と困っている人たちがいるのにみてあげられないなんて・・・と、一丁前にいきどおったんです。
そんな時でした、以前からお客さんとしてきていた20代の若者Aくんがブラック企業に勤めていて夢も希望もないという話をいつもしていたのは。
接客業をしていた彼に、なんならウチに転職して手に職つけちゃえば?と声をかけたら予想外に乗り気ですぐにウチに来てくれました。 #チャラっときたよ
保育園落ちた日本死ね騒動
保育園落ちた日本死ねというワードが日本で騒がれた頃、わが家も保育園に入れるかどうかドキドキしていた時でした。
そんな時でした。
お店に一本の電話が。
電話に出ると「求人募集はしてますか?」と女性の声。
ちょうどAくんが入社するかしないかのタイミングだったので、ちょうど求人するか悩んでいた旨を伝えるとすぐに面接にBさんが面接に来てくれました。
話を聞くとBさん(主婦)は保育園に落ち、待機児童の状態でしたが一時保育でしのぎながら保育園に入れるまで頑張りたいということでした。
待機児童問題に憤りを感じていた僕は、しばらく大変そうだなぁと思いつつも、応援したい気持ちが勝り採用を決定しました。 #胸が熱いぜ
この時、妻と話し合っていたのが「働きたくても働けない女性」を応援できるような採用ができるといいよね。きっとそういう人達は下手なオッサンより頑張って働いてくれるよ。という話でした。
一気に2名雇ってみた結果
そんなこんなで、タイミングがよかったと言ったらいいのか。
トントン拍子に2名の採用が決まり研修をスタートさせました。
睡眠時間を削って研修資料を大量に作ったのを思い出します。
Aくんはど素人だったこともあり、基礎の基礎から研修し1年は使い物にならないだろうなぁと思いながらも、頑張って成長してくれたら嬉しいなぁと考えていました。
そんなある日のこと、事件が起こりました。
忘れもしない土曜日。
主婦のBさんは土曜休み。
僕がお客さんに入っている間1人ぼっちのAくんには隣のベッドでタオルをほぐす練習と、僕がどう接客をしているのかをちゃんと聞いておくように指示をしたのです。その結果。
ぐぅーぐぅー、イビキをかいて寝てました。
カーテンでさえぎられている半個室だったので気がゆるんだのでしょうか、メチャクチャ爆睡で、お客さんが驚いて挙動不審になったのを僕は今でも忘れません。 #僕の戦闘能力が53万UPしたよ
何も仕事ができない研修生が固定給をもらっているにもかかわらず、指示を無視して居眠りするなど言語道断です。
「なんで君寝てたわけ?怒」と問いただしたところ。
「いやぁー、やっちゃいましたー。」とヘラヘラされたことは死ぬまで忘れないでしょう。 #居眠りのことか 、居眠りのことかぁぁぁぁぁ!!
Aくん入社からわずか2週間目の出来事でした。
これを機に僕はAくんのことを分析し始めます。そして一つの結論にいたりました。
それは、AくんはADHD(注意欠陥多動性障害)だろうというもの。
僕が声をかけたのに本当に申し訳ない気持ちでしたが、その後も度々問題行動を繰り返すAくんには退職していただきました。 #地獄の始まり
Aくんをキッカケに従業員分析がはじまる
皆さんは「ビリギャル」ってご存知ですか?
書籍が売れて映画化までされたやつです。
ちなみに、僕は本も読んでなければ映画も観ていません。
じゃぁビリギャルが何なんだよというと、このビリギャルの作者の坪田さんがとある方法を使って指導をしていたという話。
それがエニアグラム。
エニアグラムは人間を9タイプにわけて、各タイプの特徴を把握することで人間関係を良好にしたり、成長しようぜってな感じの自己分析ツール。
従業員さんが研修中は一方的にお金がでていくだけなので、個人経営者の精神状態はカオスになります。
「ナゼ俺の貯金ガ毎月何十万も減ってルのにコイツら笑っテられんの?」と随分とイっちゃってる感じに泣きながら半笑いになります。 #オレが神だ
そんなカオスに終止符を打つべく僕はエニアグラムを導入しました。
家族はもちろん、従業員、常連のお客さんと、テストしてもらえる人には全員テストしてもらい、データを集めました。
そして、実験を始めます。
タイプ1〜タイプ9まで揃っているチームが理想なら全部揃えてやる。
ドラゴンボールを集めるがごとく、求人をかけて面談をし、エニアグラムのテストを受けてもらい、タイプ1〜タイプ9までを集める冒険の旅へ出ました。 #ドラゴンボールより多いなコレ
なかなか なかなか なかなか なかなか大変だけど♪
必ずGETだぜ!ポケモ・・・ではなく、従業員さんGETだぜ!!
と、張り切って旅にでた僕と相棒のピカチュウでしたが、なかなか従業員図鑑は完成しません。
しかし、従業員マスターになると決めた僕にも意地がある!!
頑張ってGET、GET、GETだぜ!!
ということで、最終的にタイプ5以外はコンプリート。#やったぜピカチュウ
・・・・
・・・・・・・
え???
・・・・・・あれ???
・・・・・・・・・・
ナニやってんだオレは・・・・
こんなに無駄に人いれて回るわけないじゃん。
待機児童親とシングルマザーのたまり場みたいになってんじゃんこの店。
みんな頑張るって言って入ってきたけど結果でねぇしどうすんだよコレ。
タイプがどうとかそもそも関係あんのか??
整体って技術と接客と思いやりだろ??
何でコイツらお客さんのこと心配してあげられないんだ???
そうだっ!そういうタイプなんだな!!
じゃぁ、しょうがないよな!!
弱点よりも強みを活かすようにすればどうにかなるし!!
弱点を打ち消すくらい強みを!!強みを!!!強みを!!!!
強みを伸ばせるかは本人のやる気次第ぃぃぃぃぃぃ!!!!
ウワァァぁ、どうしようぉぉぉ。
コイツら伸びねぇぇぇぇぇ。
この頃、最初に雇用したBさんは退社しました。 #まだ地獄の入り口
お巡りさんココに迷子の経営者がいます!!
「お巡りさん。僕は整体院の経営者ダヨ。
従業員さんたちが頑張って働いてくれるっていうからここで待ってるの。」
「経営者くん。従業員さんたちは来てくれないみたいだからさ。もう一つお店作って、そこで待っていた方がいいんじゃないかな?」
「そっか!お巡りさんありがとう!!僕もう一つお店作ってそこで待ってることにするヨ!!」
そうだ おそれないで みんなのために
あいと ゆうきだけが ともだちさ
えーん、えーん、お金がなくて動けないよー。
助けてー、アーン、ザーイ、サーン。 #誰だよ
どこまでも追い込まれた僕は、内なるお巡りさんの助言通り、たまたま空いていた隣の空きテナントを借りて新しいお店を作りました。
お金がないので業者さんには極力たのまずにほぼDIY。
飲食店と違って整体院は用意が少ないので大変でしたが何とか避難所を確保。
そう、僕は従業員さんたちから逃げるために自分用のお店を一つ作ったのです。
お客さんも個室の方がいいし。従業員さんたちも僕がいない方がのびのびと仕事ができるはず。
つまり、win-winじゃないか!?
コレで従業員さんたちは自主的に頑張って結果を出してくれるはずだ。
なーんだ、最初から見えない化にすればよかったんじゃん!!
しかし、思うような結果はでませんでした。
ピカピッカ!!ピカピカチュゥ〜〜!!
(訳:お金が足りないよ。金融公庫から借り入れをしなよ)
OK!!ピカチュウ!100万円!!キミに決めたっ!!
#経営者は借り入れを実行した
ニーチェ先生に知恵を借りてM&Aにいたる
哲学をこよなく愛する僕はこう思いました。
そうだ!ニーチェ先生に助けてもらおう!!
そして、古代バビロニア王国からイギリス産業革命、現代にいたるまでの奴隷制度や、超人になるための研修。
いわゆる「超人研修」なるものを実施します。 #勝手に言ってるだけ
まぁまぁでいいやとか、何に対しても中途半端で向上心を持たず、言い訳をして、そこそこで止まって楽して生きようとする人間を末人と言うんだよ!!
それって、奴隷の延長線上にいる人間だからもっと止まることなく上目指そうぜ!!
なーんてことを教える研修です。
2名辞めました。
このタイミングでなぜだか最初に雇用したBさん(主婦)が戻ってきてくれるというので再雇用しました。
結局、人が定着せずにBさん含め残り3名に。
ここで僕は一つの決断をします。
よし!!お店を他の経営者に売ろう!!
M&A(企業売買)とかいうので小さいお店だけどちゃんとした経営ができる人に買ってもらって従業員さんたちを守ってもらおう。
そして色々な方と面談させていただき、国のM&A機関にも登録し、奔走すること数ヶ月。
従業員さんにも他の経営者に変わることになると思うと伝えていたところ。
従業員さんから僕に続投してほしいという声が!!
キタキタ!!キタよコレ!!
ついに僕の存在価値が認められたよ!!
コレで従業員さんは3人だけど頑張っていけるよね!!
大丈夫だよね!!信じてるからねっ!! #フラグだろコレ
お店をリニューアルしちゃうもんね
心機一転。従業員さんたちがいるお店はリニューアルして、看板も内装もHPも新しくしちゃうもんね!!
だってみんな頑張るって言ってくれてるし!!
ピカピッカ!!ピカピカァ〜!!ピカピカピカチュゥ〜〜!!!
(訳:お金が足りないよ?大丈夫?金融公庫から借り入れしなよ)
OK!!ピカチュウ!!300万円!!キミに決めたっ!!
そんなこんなでリニューアルオープンして数ヶ月。
「私卒業します!!」
と、従業員さんが言いはじめましたよ。
「キミは一体なんの単位を取ったのかね?ん??こんな論文で卒業できるわけがないだろう。ハッハッハッ!!」
辞めました。残り2名。
テナントに水漏れ&シロアリ発生で撤収
僕の緊急避難所として借りた新しいテナントでしたが、雨がたくさん降ると浸水し、シロアリがうじゃうじゃとわいて出ることから急遽撤収。
内装費とか全部オジャンでごじゃん!! #ごじゃんてなんやねん
そして、再び僕は従業員さんたちがいるお店に戻ることになりました。
人数も少ないし、従業員2名だったら2テナントは経費の無駄遣いだよね!!経費削減にもなって、立て直すにはちょうどいいよね!!
ここからは経費の無駄遣いはしないで頑張るどーっ!!
「院長、私辞めます。」残り1名
まてまて、落ちつこう。
現在、一度は辞めたが戻ってきてくれたBさんが働いてくれていますが、いつまで働いてくれるのかは不明。
そして、この従業員がタンポポの綿毛のように飛んでいく現象を自分なりに整理してみた。
一度落ち着いて考えなくてはならないな。 #おせぇYO
まずは従業員さんたちから出ていた不満と僕の回答をまとめてみよう。
・結果がでない(売上は上がらない)けど頑張ってるから認めてほしい
→お金は結果。勉強して、練習して、思いやりのある施術が出来ていれば結果として自然と売上が上がるはず。売上が上がらないのは勉強も練習も思いやりも足りてない証拠。
・スタッフ同士で練習したい(お給料発生中の営業時間内に)
→スタッフ同士で練習しても上手くはならない。時間とお金の無駄遣い。指導ができる人間相手に練習するのが一番効率がいい。僕はいつでも付き合う。フル出勤じゃないのだから休日に練習に来るか、休憩時間に練習してください。それが嫌ならお金を払ってセミナーや学校へ行かないとお客さんに失礼。お金をもらいながらダラダラ練習ごっこしたいですはありえない。
・一日2名〜3名しか施術したくない
→キミのお給料と、テナント代と、光熱費と、保険料と、キミたちのお客さんを集めるための広告費と、全部合わせたらその人数では赤字なので最低1日5名を目標にしてもらわないと困る。労働はしませんお給料は払ってくださいは契約違反です。イヤなら業務委託の完全歩合にすればいい。
・お客さんとお客さんの間は1時間は開けてほしい
→30分で十分すぎます。通常15分かスタッフ間で連携をとれば0分でもスムーズにお客さんを待たせずにご案内できます。休憩時間はしっかりと取れているのだから、休憩時間以外は働くのが普通です。施術をしたくないなら整体師ではないので一体、何がしたくてここにいるのか理解できません。
・家に帰ってまで練習とか勉強なんてしたくない
→もし、自分を担当する整体師がそんなことを言っていたらどう思いますか?あぁ、いい先生に当たってよかったって思いますか?絶対思わないよね?なんだこいつ、最悪。ハズレ引いたわぁ〜って思わない?キミの言ってることはそういうこと。練習も勉強もしたくないってことは成長したくないってことでしょ?技術職の人間が成長しないでどうやって結果出すの?練習も勉強もしないけど成長できて結果が出せるならその方法を取ってください。僕はそんな方法は知らないし、あるとも思わないけどね。お客さんにだけは絶対に迷惑かけないようにしてね。
うん。我ながら管理職には向いてないね。
ただ、真剣に考えてほしいんですよ。
あなたなら、どっちの整体を受けたいですか??
多分、ほぼ100%僕の整体が選ばれると思うんですね。
僕は手首の骨が折れていても練習を続けて手首がちょっと変形してるくらい整体が大好きな人間ですから。
そんなことは従業員さんたちもわかっているはずなんです。
つまり、上記の不満はただの言い訳でダミーなんじゃ?ということ。
おそらく上記の回答を読んで思うのは「言い方」「伝え方」じゃないの?
とか、いいとこ見つけてほめて伸ばさないとねーとか、思われるかもしれません。
でもね。それ多分違うみたい。
本当に勉強と練習をしない人は正直、適職じゃないで片付けていい。
問題はそこじゃない。
最後に働き方改革案だよ
今の所、Bさんは楽しそうに働いてるし気分良さそう。
それは僕が少しだけ働き方を改革したからかもしれない。
それは2つのワード。僕と従業員間に決定的にたりなかった言葉がある。
それが「ありがとう」と「助かる」
僕が従業員にいう回数が少ないのと同じく。
従業員が僕にいう回数も少ない。
小さいお店の経営者って結構全力で従業員のためにとか、良かれと思ってとかで色々と動いてたりするのに「ありがとう」も「助かる」も僕はほとんど言われてないし、自分も言ってないことに気がついた。
従業員さんも上司のためにとか、良かれと思ってとかで色々と動いてるはずなのに「ありがとう」と「助かる」の数が足りないから自主的に助けたいと動いてくれなくなって、ここでは私貢献できないって思っちゃうんでしょうね。
子供と一緒。助かるって言うとお手伝いを取り合ってでも貢献しようとしてくれちゃう。
でも、お金が絡むと途端に忘れちゃう。
今はBさん1人になっちゃったけど、せっかく出戻ってくれたのだから2つのワードを増やしながら大事に育てていこう。
今度、1人僕の施術を受けてうちのお店で働きたいって人が現れた。
好きにしてください。と伝えているが入ってきたらちゃんと2つのワードを使うようにしよう。
従業員さんも上司に使ってあげて。きっと喜ぶよ。
あとは、家族にも乱用した方がよさそうだ。
パートナーにはいつも不足しがちなワードに思える。
さてと、400万の借金をしたから「ありがとう200万」「助かる200万」の計算だな。
ガッツリ働いて返さないとね。
うちをやめたけどBさんと繋がりのある1人は独立開業したらしい。
もう1人は、2980円のもみほぐし店に勤めて店長に昇格したらしい。
心の底からよかったねと思う。