読んだ本 2022年12月号 7冊

技術書を3冊、ビジネス書を3冊、小説を1冊読んだ。

入門WebAssembly

★★★★★
入門とタイトルの頭に付く本には、きっかけに丁度いい本と独り立ちするのに必要なだけの情報が詰まった本とがあるが、この本は前者なので安心して読める。

第8章でWebAssembly上で衝突検出の計算をしてHTMLのcanvas上にアニメーションを描画するためのWATプログラムが紹介されるが、この章までコードを写経して実行していくとだいぶ納得感が得られる。スタックマシンを意識したコードや線型メモリの扱い方などは慣れていなかったのでおもしろかった。章の順序も内容の順を追っていてよい。

9章移行にはパフォーマンスの計測、V8エンジンJavaScriptコードから出力するIRバイトコード、WebAssemblyコードのWATコードへの逆アセンブル、AssemblyScriptの紹介などが書かれていて、何も知らない状態からWebAssemblyの一端に触れるにはよい本だった。
12/4

財務諸表を読む技術 わかる技術

★★★★★
第1部では貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書について構造や各項目の関係性が書かれていて、分かりやすい。
第2部では上記の3つについてより詳しく解説がされ、活用の仕方や注意点などが書かれている。

諸表の内容を理解するためには事業内容や過去の事業状況を頭に入れた上で表を眺める必要はあると思うが、そういった個別の情報は抜きにして、読み方を知るためにはよい本だと感じた。
12/7

Formulation: Document examples with Given/When/Then

★★★☆☆
同シリーズの前作である Discovery に続き、Gherkin 記法に則った Feature の書き方など、Formulation に注目して開発チームの会話を想定しながら丁寧に説明がされている。
本書の更に続きとなる Automation は、現時点ではまだ販売されていない。

本書では、BRIEF (Business language, Real data, Intension revealing, Essential, Focused + Brief) の原則に基づいて Feature を記述すること、ドキュメントを整理して成長させていくこと、既存のテストされていないコードとの付き合い方などが書かれている。チームの会話が冗長と感じる場面もあるが、詳しく書かれていて内容は参考になった。

ただし、チャプター2.2に書かれているように「シナリオはテストの為ではなく、ドキュメンテーションの為に書かれるべきである」という態度を一貫してとっている。
これは前作で「Example Mapping の際は Given/When/Then の形式は気にするな」と言っていたのと同じ態度だが、実際にはシナリオを書く際にはテストを常に意識する必要があるだろうという気がする。@manual タグはテストについての情報だし、巻末の Automation の説明では「テストの自動化は組織がBDDを採用する主な動機である」とも書いている。

つまり、Automation の知識を抜きにして Formulation について学ぶことには無理があるのではないかという気持ちが読み進めるにつれて強くなった。Automation の発売を期待したい。
12/10

解像度を上げる

★★★★☆
解像度を上げる方法論だけでなく、マインド、専門知識など前提として必要なもの、課題一般についての考え方などが書かれていてよい。
「最低100の事例を集める」では、本屋にあるすべての関連書、論文や英語の文献にあたり、300,400以上の事例を集めてようやく頭の中に地図ができ、これが解像度を上げる土台となる、といった地道な記述もあり、好感が持てる。

48の「解像度を上げる型」が記載されているが、数も多く、本文中ではそれぞれの型を認識しやすい構成にはなっていない為、これを意識した行動をとる為にはどの型が今の自分にとって足りていないのかを全体を眺めて考察する必要はある。

最終章の「未来の解像度を上げる」は未来への希望を抱かせる内容になっていて読後感がよかった。
12/11

読みやすいコードのガイドライン

★★★★★
コーディングについて「なんとなくこっちの方が理解しやすいよね」と捉えている事について丁寧に言語化されていて、複数人で確認しながら読み進めてもきっと楽しい本。

直交性(直和・直積)、状態遷移、依存の強さなどは、頭の中で整理した上で普段コードを見る際にも意識していないと通常業務の中で言語化するのは難しいだろうが、より実感を持つために「なんとなくもうちょっと整理できそう」と感じるコードがどの視点から整理できるかを考える、といったようなワークショップを実施してもおもしろそうと思った。
12/16

盗賊

★★★★★
ひとつひとつの文章に読み応えがあり、主人公に共感はできないが追体験をすることは不思議とできた。

盗賊という表題が表す内容が短い最終章で明らかにされると同時に、それまでの文章が一気に頭の中に蘇るような構成になっていて、読後感がとてもよい。
12/21

実践 顧客起点マーケティング

★★★★★
P&Gやロート製薬の話は業界が違いすぎて一消費者としてしか読めないが、スマートニュースのクーポンチャンネルについての話はかつてリアルタイムでサービスの変化を見ていた事もあり、どういった意思決定のされ方がされていたのかが知れて興味深かった。

アイデアが不可欠だという観点と、フレームワークによって定量化した数値を時系列で追って変化を見る事が大切だという観点の両方が本書の全体を通じて書かれている。
顧客を起点としたアイデアの創出から独自性を持ったサービスを作り上げる具体例として参考になる内容だった。
12/23

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