【長編小説】(2)生まれてきたからあなたに会えた
大学を出てすぐに就職した会社の理化学研究職は回った目が遠心力でぶっ飛んでしまいそうなほど忙しくて、三年を数えず体が壊れて辞めた。それから少し休んで再就職したのが今の職場である私立高校。学生時代に特に目的もなく教員免許を取っていたが、理科の実験助手として入職した。
「初めまして、朝陽未来と言います」
そう自己紹介をした瞬間、全生徒から「未来ちゃん」と呼ばれることになった。少子高齢化と人口の都市部への流入が進む昨今、地方の定員割れしている私立高校なんてこんなものだろう。採用区