何を面白がれるか?「人」起点の組織がクリエイティビティを生む。
面白法人カヤック 管理本部長の柴田さんとナラティブベース側の担当者である我妻が、ナラティブベースへの依頼業務の状況や、両社の組織の特徴について語り合いました。どんな職種でもクリエイティビティは求められるものですが、それはどのような仕事の仕方から生まれるのか、どのような組織文化が後押しするのか?--そんな話にも発展した、対談の模様をレポートします。
noteの記事を通じた出会いから始まった業務依頼
ーー本日はカヤック様の本社にお伺いしています。柴田さんと我妻の直接対面は今回が初めてだそうですね。
【ナラティブベース 我妻あかね(以下、我妻)】 はい。2021年8月から1年近くお仕事をさせていただいていますが、ずっとオンラインでのやりとりのみだったので、ようやくお会いできてすごく嬉しいです。柴田さんが「Tシャツ部」(部員1名)として冬でも半袖Tシャツ1枚で過ごす活動をされていると聞いて、私も張り切ってTシャツを着てきました。本日はよろしくお願いします。
【カヤック 柴田史郎さん(以下、柴田さん)】 そこは期待していなかったです(笑)。 こちらこそよろしくお願いします。
――カヤック様は企業理念に「面白法人」、経営理念に「つくる人を増やす」を掲げ、Webサービス・アプリ・ソーシャルゲーム・広告企画・地域通貨や移住促進サービスなどオリジナリティあるコンテンツを数多く発信されています。幅広く面白いことを手掛けていらして説明が難しそうですが、いつも会社紹介はどのようにされていますか。
【柴田さん】会社は「どんな事業内容をやっているか」で理解することが多いですが、カヤックはそれだとわかりにくくなってしまいます。どんな人達で構成している会社か、で理解するとわかりやすくなります。鎌倉にあって、クリエイターが約250人いる会社で、クリエイターの人たちができることをいろいろやっている会社、という説明をすることが多いですね。
【我妻】シンプルでわかりやすい! サイコロを振って給与にプラスする「サイコロ給」や、一緒に働く仲間を社員全員で探す「ぜんいん人事部化計画」など、ユニークな人事制度も有名ですよね。
――そんなカヤック様の管理部門の責任者を務める柴田さんですが、ナラティブベースの存在を知ったきっかけは、我妻が書いたnoteだったとか。
【柴田さん】自分もnoteでアウトプットしていてリアクションいただくことも多いですし、ほかの人の書いている内容から面白そうな人だと思ったらリアクションするようにしているんです。その一環で、我妻さんの記事を見つけて連絡したんですよね。
【我妻】はい、会社員からフリーランスへ働き方を変えた経験について書いた「専門スキルがないWM(ワーキングマザー)がフリーランスとして働く場」という記事にメッセージいただきました。
【柴田さん】そこから我妻さんの働き方に関する他の記事も読んで、へぇ、面白いな、と。あまり世の中で書かれていないテーマも興味深かったですし、どこかから借りてきた言葉ではなく本当に自分の考えを出しているのもいいなと感じました。
また、記事の中に業務改善の仕事についても書かれていて、当時、自分が管掌している管理本部でちょうど課題になっていることだったので、何か相談できるかもしれないと思ったのもあります。僕はそんなふうにいろんな人に声を掛けていますが、実際にここまで多くの仕事をお願いするパターンは稀ですね。
【我妻】そんなふうに見つけていただいて、業務改善のパートナーとなれたことはとても光栄です。
属人的で煩雑化した業務を整理するところから
――これまでナラティブベースにご依頼いただいた業務について、一緒に振り返ってみたいと思います。
【柴田さん】管理本部には広報、総務、人事などの部署があり、主にルーティン業務の外部化を進めたいと考えていたのですが、あまりにフローが煩雑だったり属人的だったりして、外に切り出すのに苦労していたことが多いんです。そこで、ナラティブベースさんに、最初の業務整理の段階からお願いしています。
【我妻】課題感はハッキリとある一方で、何をどれくらいやるというところまではまだふわっとした状態からご相談をいただきましたので、取り組みの優先順位や内容を調整しやすいよう「1ヶ月の稼働時間」でご契約いただく形をとり、現在も稼働時間を増やしながら継続しています。
業務としての最初は広報業務で、メディア露出した成果のサーチからデータ蓄積までがうまくまわっていなかったところを、ご担当の梶様と相談しながら、スプレッドシートとNotionを組み合わせて、露出内容に応じてスコアを付与、成果をグラフで可視化する仕組みを作りました。また、日々のサーチ、とデータ入力業務をナラティブベースでやらせて頂く体制を作りました。その後、社員のコロナ感染者の管理や、会議室のCO2濃度測定記録の自動化など、幅広い業務の整理から運用までをご依頼いただいています。
ーーナラティブベースの仕事ぶりについて、どう感じていらっしゃいますか。
【柴田さん】僕らとしては、限られた予算のなかでなるべく多くの業務の外部化を図りたいので、1つひとつの業務をいかに整理して効率的なフローに落とし込めるかがカギとなります。その部分でナラティブベースさんに活躍いただき、とても助かっています。
実は、この対談に先立って、普段ナラティブベースさんとやりとりしているメンバーに、感想コメントをもらっているんです。実際に仕事をしている人達の声が参考になるかなと思いまして。
【我妻】ありがとうございます。どのコメントもすごく嬉しいです! 特に、工数削減の話だけでなく、次のような、感情にも寄り添えている、変化を起こしてくれたなどのコメントもいただけるのは、ナラティブベースの特徴かなと思っています。
何も決まっていない状態のふわっとした相談でOK
――ナラティブベースでは、どのようなことを心掛けて取り組んでいますか?
【我妻】私自身は、お客様も自覚されていないものを引き出して、一緒に新しい業務の形をつくっていく過程を、すごく大事にしています。いい意味であまり最初から計画しすぎず、ヒアリングの中で何が優先すべきことなのか、現段階でどこまでやるのがよいのかなどを順次判断しながら月額契約(*)の中で進めています。
(*)カヤック様のご契約いただいている月額固定の「アジャイル業務改善サービス」では、お困りの業務の改善を工数内で順次進めて運用を巻き取っていくスタイル。
【柴田さん】「何となく」でやっている業務も多いので、こちらの考えがふわっとしているところにナラティブベースさんにいろいろ質問していただいて、それに回答するといったやりとりのなかで整理していけるので、とても助かっています。僕らより、ナラティブベースさんのほうに相当考えていただいているなあ、と。あまりにざっくりとした投げ方で、やりにくくないですか?
【我妻】むしろ、そこに、やりがいを感じています。一緒に作り上げていけるので、ぜひ固まっていない・決まっていない状態からご相談いただきたいです。
【柴田さん】そうなんですか? いつも申し訳ないと思っていました。「何を相談するか、ふわっとしています・資料はありません・一応口頭では話せます」…ぐらいから相談していいというスタンスは、他社ではあまり例がないかもしれませんね。
【我妻】カヤックの皆さんは、こちらの提案にフラットに耳を傾け、柔軟にご判断いただいているので、私たちも提案のしがいがあります。特に一般的には管理部門のお仕事では、細かいことを1つ変えることもハードルが高いと思うんですが、皆さんとても軽やかですよね。
【柴田さん】「上司の判断を鵜呑みにするな」みたいな感覚が、体に染みついているのかもしれません。よく戦略クラフティングの考え方にあてはめて説明するのですが、トップダウンで指示されたとおりに取り組むのではなく、担当者が自分らしい視点を取り込みながら指示と業務を「こねくり回し」て、主体的に取り組むことを大切にしているんです。依頼する側も、相手の裁量に委ねる幅を広くもつようにしています。
【我妻】なるほど。まさに私たちも一緒に、社員の皆さんとクラフティングさせていただいている感じですね。
地道な業務にも楽しさを見い出し、質の高いアウトプットへ
――カヤック様とのお仕事には、ナラティブベースのどんなメンバーが関わっているのでしょうか。
【我妻】私以外に6人のメンバーが、それぞれの得意分野を活かして取り組んでいます。
例えば最近では、総務の方からご依頼いただいた、「会議室の気温・湿度・二酸化炭素の計測システムの結果を1日2回の定時にスプレッドシートに転記する」という業務の自動化を担当したのは、手作業でやっていることを自動化するのが大好きというメンバーです。そうした業務に必要となるOffice製品のVBAやGAS(Google Apps Script)、Notion APIなどを、日ごろから自分で勉強していて、今回もそのスキルをフル活用して取り組んでいました。「そこは手作業でもいいよ」と思われるところも最後まで妥協せず、人が見て判断する部分を徹底的に排除しようと粘っていたのが印象的です。
【柴田さん】完全に自動化だ!と。いいですねぇ、面白い。
【我妻】本人はそれがすごく楽しいんだと思います。その結果、ご担当の方に「ほんとにすごい」「最高です!」とたいへん喜んでいただきました。
ほかにも、ツール選定が大好物で選定しだすと寝る時間も削ってしまうというメンバーなどもいますよ。
【柴田さん】そういうメンバーの皆さんの個性がわかると、僕らもお願いしやすいですね。資格・スキルのような「できること」というより、「どこに燃えるか」という内発的動機が大事かもしれない。
【我妻】カヤックさんは「面白がる」を大切にする文化をお持ちですが、ナラティブベースも、職種は違ってもやはりメンバー一人ひとりが「いかに面白がるか」がポイントで、それが仕事の原動力になっていると思います。
【柴田さん】そこには、確実に“クリエイティビティ”がありますよね。これまでのナラティブベースの皆さんとのお仕事を見ていても、そう感じていました。
「人に仕事を合わせる」ことで拡大してきた事業の幅
――クリエイティビティが生まれる背景として、少し両社の組織の特徴についても話題を広げてみたいと思います。
【柴田さん】まず聞いてみたいんですが、ナラティブベースさんはどうやってメンバーが集まっているんですか。
【我妻】創業当初は紹介がほとんどでしたが、最近では、ナラティブベースの働き方がテレビ番組やニュースサイトに取り上げられたのを見た人や、私のnoteやTwitterのフォロワーさんから問い合わせをもらうケースが増えています。
【柴田さん】なるほど。カヤック社員の働く動機を調査したとき、「新しいことをコラボレーションしてできる」「ライフステージが変わったら柔軟に働き方を変えられる」という2つの要素が突出していたんですが、ナラティブベースの皆さんはそのあたり、いかがですか。
【我妻】「働き方を変えたい」と言って参加するメンバーが一番多いですね。意図せずでは有りますが現在は全員女性で、ライフステージの変化などによって生活スタイルが変わるなか、会社員という形に合わせて働くことに困難を感じていたという話をよく聞きます。しかし、だからといって何の仕事でもいいではなく、今までの経験やスキルを活かしながら、自分にとって心地よい働き方をしたいという人が多いです。メンバーは全員個人事業主として、自分で決めた仕事の量や時間で働いています。
【柴田さん】その受け皿としては、ほかにもありますよね。例えばオンラインアシスタントを請け負う他社でも、これまでの経験を活かして自由度の高い働き方ができると思いますが、他社とナラティブベースさんは何か違うんですかね。
【我妻】私たちは「人に仕事を合わせる」ことを大事にしているのが特徴でしょうか。この仕事があるからそれに合う人を集めるのではなく、集まった人で何ができるのを考えて業務をつくっていく。そうして、創業時はWebマーケティングの仕事が中心でしたが、今は業務改善のほか、チームビルディング支援、Webマーケティング支援などにもサービスが広がってきました。
【柴田さん】そこはカヤックと似ているかもしれませんね。もとより一緒に働きたい仲間3人が、何をするかが決まっていない状態から立ち上げた会社ですし、クリエイター1人ひとりが面白いと思うものをつくることで事業を増やしてきているので。
【我妻】カヤックさんは「何をするかより誰とするか」をとても大切にしていらっしゃいますものね。カヤックさんのWebサイトで、「はじめに組織戦略ありき、その上に事業戦略がある」という説明を拝見し、たいへん共感を覚えました。
働く仲間同士のナラティブの共有をベースに
ーー両社とも、働く個人が起点となっているようですが、その個人の考えの尊重や共有について何か工夫されていますか。
【柴田さん】管掌する管理部門では、僕が約3カ月に1回、希望者と30分の面談して、3年後までに何をしたいか、どう働きたいか等、ざっくばらんに話を聞いています。例えば、今は本社の仕事をしている人が「子会社の仕事もしていきたい」とか、メイン業務のほかに他部署の飲食事業も手伝っていて「のちに飲食店を開きたい」など。もちろん「やりたいことはありません」でもいいんですが、そうした一人ひとりの考えを理解しておきたいと思って行っています。
そして、ヒアリング結果は1人1ページのフォーマットに記入して、管理部門社員なら誰でも閲覧できるようにしています。ほかの人のやりたいことを見ると自分もイメージついたりしますから、みんなでシェアすることが重要かなと思います。
【我妻】ここまでみんなでシェアするのはすごいですね。
ナラティブベースにも似たような取り組みがあって、共有データベースにメンバー1人ひとりの自己紹介ページを設置して、プロフィールのほか、好きなことや得意なこと、興味分野などを共有しているんです。そうしたものを通じて相互理解のベースができているので、新しい仕事のチームメンバーをアサインするときに自然と興味をもちそうな人の顔が浮かんで打診につながるなど、仕事のマッチングに役立っています。もちろん静的な情報には限界があるので、社内ワークショップなどでも随時、感覚的に相互理解をアップデートすることもとても大切にしています。
【柴田さん】あと、僕らはslackのtimesでみんなが日々のことを気楽につぶやいているので、そこからメンバーが何を考えているのかを把握することにもつながっていますね。みんなプライベートも含めて自分自身をそのまま出している感じですが、それはそれでいいんじゃないかなと思っています。たぶん本来のtimesの使い方と違う気がしますが・・・。
【我妻】そうですよね。私たちも、仕事とプライベートを分けるのではなく、プライベートで考えていることも含めて、その人の多面性が仕事に活きるという考え方をしています。ナラティブベースでは、これまでの経験や得意なこと、住んでいる国・地域や生活スタイルがばらばらなメンバーが、リモートを基本として、プロジェクトごとにチームになって取り組んでいます。そこでチームとして力を発揮していくためには、プライベートな部分もひっくるめたナラティブ(語り)の共有を、とても大切にしています。
【柴田さん】会社ありきで自分がいるのか、自分がやりたいことの手段として会社があるのか。「会社」と「個人」の大小関係において、たぶん「個人」が大きい人が集まっているからこそ成立する話ですよね。
【我妻】そうしたところ、カヤック様とナラティブベースでは共通するカルチャーがあるのかなと感じました。
――本日の対談はいかがでしたでしょうか。
【柴田さん】いつも仕事をざっくり投げていることを申し訳なく思っていたんですが、それがむしろナラティブベースさんのサービスの特長なのだ、というお話が聞けただけでも良かったです。今後もいろいろ相談させてください。
【我妻】ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
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