育児介護休業法における国家的転職者差別条項について
入社1年未満の人は育児休業も介護休業も取れないようにしてもいいよ。と国が言ってるんです。
どういうことか?
会社の就業規則を決めるにあたり、親会社の規程を穴が開くほど見つめていたときに発見したのですが、
なんと、勤続1年未満の人は育児休業と介護休業を取得できない、という文言が入っていました。
この会社の代表を務める直前まで中途採用の担当者だった私。
こんな条件になっていたとはつゆも知りませんでした。
人材の流動性が高まっているこの時代に、女性だけではなく男性も積極的に育休を取得推奨しているこの時代に、介護離職の問題が大きく取り上げられているこの時代に、
なんという差別的、というか、大いなる矛盾を抱えた条文なのだろう。正気か!?と目を疑いました。
で、よくよく調べてみると、育児介護休業法の中で、勤続1年未満の人や有期雇用かつ更新までの期間が短い人は、労使協定があれば対象から除外しても良い、と書いてあることが分かりました。
こんなことを書いたら、企業の人事は喜び勇んで労使協定を結び、就業規則に落とし込むでしょうに。
だって、万が一入って間もない人に育休取られて現場や経営陣から文句言われたくないですから。
労働者側も、99%以上の人は関係のないことですから過半数から同意を得ることも容易いでしょう。マイノリティの意見は無視されるのが常です。
だからこそ、国はこんなことを条文に書いてはいけないと思うのです。
何がダメなのか
考えてみてください。
子どもが欲しくてたまらないのになかなか出来ず、何年もかけて、何百万円もかけて、不妊治療に取り組み、ようやく子どもができたその時に、運悪く?転職のタイミングが重なってしまうことだってあるでしょう。
ブラック企業に勤めていたけど、頑張って頑張ってスキルをつけてようやくいい会社に転職出来たと思ったら、愛する家族が認知症を患い、介護しなければならなくなることもあるでしょう。
晩婚化、晩産化、少子高齢化が進んでいるなかで、このような事例は決して珍しくなく、今後もそのような状況になる人は確実に増えていきます。
そんなときに、勤続1年未満だからという理由で育児休業/介護休業を取得できないとなると、どう思うでしょうか。
休業が取得できないということは、雇用保険から拠出される給付金も貰えないということです。
入社日当日から休業した場合なら、育児休業であれば最大で約300万円、介護休業なら最大で約90万円をドブに捨てるということです。
会社が休職を認めないということは、有給を使い果たし、看護休暇や介護休暇を使い果たし、欠勤をするか、育児や介護を諦めるか、という2択をせまるということです。
ほんとうにこれでいいのでしょうか。
ではどうすればいいのか
うちの会社では、この勤続1年未満を除外するという国からのご丁寧な提案を取り込んでいません。
なぜなら、従業員が国からの給付金を受け取る権利を侵害したくないからです。
多様であり、すべての人が対等である職場を作るためには、性別、宗教、文化、家族観、政治理念など、業務に関係のないことで処遇に差が出るのを、避けなければなりません。
一方で、国が子育てや介護を推奨するために支給するお金やサービスなどを受け取れないことのないようにしなければならないですし、国の法律で決められていることは当然ながら守らないといけないです。
そのためには、勤続1年未満という制限を撤廃すること、変に育休期間を会社独自に伸ばさないことが必要だと思うのです。
この施策には、多様であることを尊重できるだけではなく、採用競争力も向上させられるメリットもあります。
今年6月に改訂されたコーポレートガバナンスコードでは、管理職の多様性を開示する要求が追加されました。
ここでいう多様性とは、性別、国籍、入社時期のことです。
世の中の大半の会社は、管理職のほとんどが新卒入社の男性に占められており、女性の比率を高めるために中途入社に頼らざるを得ないでしょう。
そこで壁になるのがこの育休取得に関する勤続年数の縛りです。
これがあるせいで、妊娠を希望する女性は、いくら優秀で、転職を希望していても、育休を取れない企業には行けないのです。
逆にいうと、ほとんどの企業が制限をかける中で、勤続0日からでも育休を取得できる会社があったとしたら、どうでしょうか。
私が妊娠を希望し、現職企業では物足りなさを感じている管理職候補の女性なら、このような取り組みをする企業に少なからず好意を抱きます。
もちろんそれだけで転職を決めることはないですが、人材獲得競争が激化するこのご時世で、ほとんどコストをかけることなく差別化できる施策だと思います。
一考の価値はあるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?