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NTTインターコミュニケーション・センターICC(東京都新宿区・初台駅)
東京オペラシティの4階にあるICCはNTTが技術の粋を集めて展示しているギャラリーで、NTT東日本、アートテクノロジー、そして株式会社アルステクネの技術で浮世絵を中心にデジタル展示している「Digital×北斎」という展示は長期にわたって驚異的な技術を目の当たりにしてくれる。
浮世絵に表立って登場する絵師だけでなく、浮世絵の完成には必須である彫師・擦師にもスポットを当て、その技術を細部まで解析して再現している(おまけに劣化の心配がなく明るい照明の下でゼロ距離で見られる)上、デジタルならではの絵の中に入り込んだり、動作をすることで絵が動いたりといったエンタテインメント要素まで内包しているギャラリーである。
特別展として葛飾北斎のデジタル展示を行なっている。葛飾北斎が「画狂老人卍」というとんでもない名前を名乗った晩年、現在の長野県は小布施で描いたのが集大成とも言える天井画の『大鳳凰図』。当然ながら現地へ行かないとそのスケールの作品を見ることはできなかったのが、この技術を駆使して原寸大の大きさを細部に至るまで再現したという。美術作品というより寺社の天井画なので劣化する一方であるこの画を現状を維持したままで現在に残すために組まれた一大プロジェクト。
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入口から目の前に広がる巨大な『大鳳凰図』に目を奪われる。とにかく大きくて美しい。圧巻である。もちろん現物を見るのが最適であることは理解しつつも、こうして東京の地で見られるというのは凄い。昔、徳島の大塚国際美術館で原寸大の西洋絵画を見た時と同じような感動である。圧倒的な大きさとクオリティ。細部に渡るまで、本当に平面に映されたのかわからないくらいに凹凸まで再現されている。
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会場内ではこのプロジェクトに至るまでの経緯もさることながら、北斎自身の足跡を追いながら(いつ小布施に行ったのかがはっきりしていない)天井画が描かれた背景を紹介している。
そして実際に天井画として再現するコーナーもある。参道を通り寺社の中へ入り込んで見上げる天井にある『大鳳凰図』というまるで現地にいるような感覚になる展示はエンタテインメント要素も加算されて最高である。
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ICCの他のギャラリー展示は閉館中だったので今回は浮世絵のみ。他のギャラリーの開催中であればここだけで半日は遊べる施設である。トイレはウォシュレット式。