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松濤美術館(東京都渋谷区・神泉駅/111年目の中原淳一)
松濤美術館では、イラストレーションやファッション・インテリアデザインなど、女性たちの魅力を伝えるべく多彩な活動を行ったことで知られている中原淳一に特化した、「111年目の中原淳一」という企画展を開催。中原の生誕から111年目を記念した展覧会で、彼の手がけた多くのデザイン原画やファッションなどが紹介される。
広尾にあった中原淳一グッズの専門店(中原淳一の次男が運営)が店舗での展開を終了して半年ほど。中原淳一の作品をいっぺんに間近で見ることができる機会として貴重なタイミングであり、会場にも中原淳一の画風を好むファンが多く集っている。彼が敬愛していた美人画の先達である竹久夢二の企画展(東京都庭園美術館)と同じ時期の開催というのもまた嬉しい。展示室は2階から地下階という順路になる。
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もともと画家を目指そうと西洋絵画を学んでいた中原が個展を開き、雑誌『少女の友』の専属画家としてデビューしたのは昭和の初期頃。フランス人形のように長いまつ毛と大きな瞳という可愛らしいルックスの絵は人気を博したが、折りしも日本が戦争へと突入しようとする不安定な世の中において戦時色が強まる中で圧力がかかり降板することになる。代わって彼は自身のグッズを扱う雑貨店「ヒマワリ」を開店し、『少女の友』時代にも培った付録のデザインなどを生かして雑貨として愛された。
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戦時中は召集され店舗も休みになるが、終戦とともに「ヒマワリ」を再開、また雑誌『ソレイユ』を創刊することになる。戦後の荒廃した時代において、いかに生活を豊かにするかの知恵を女性へ啓蒙する、という目的で作られた。その後は『ソレイユ』よりも更に若い世代に向けた雑誌『ひまわり』やその後継誌として『ジュニアそれいゆ』を刊行するも、その志半ばにして倒れることになる。病気と闘いながら多岐にわたる活動を行い、内藤ルネなど「カワイイ」の文化を生み出すことになる後身たちを輩出した。
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松濤美術館は日によって館内の見学ツアーを開催している。白井晟一が設計した特殊な建物である松濤美術館の普段は入れない館長室などの場所も見学できる。特に地下2階は村田勝四郎の作品(階段にもある)が多く保管されているなど貴重で、多目的ホールには映画館として使えるようにスクリーンがあったり、講演会などで使用できる黒板もある。なお、こういった備品(メダリオンやソファなども含めて)全ては白井のセレクトによるものだという。
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白井は120坪という限られた土地のなかでいかにして美術館として成立させるかに腐心したという。美術館の入口天井を飾るブラックオニキスや、正面に続くブリッジ(結果的には使われなかった)、ブリッジを進んだ先にある1階のバルコニー(キャットウォーク)といった導線が計算されてきたが、光が差し込みやすくなることで美術品が傷む可能性も考慮し、現在は仮設の壁で覆われているという。いつかは設計当時の姿での館内を見てみたいもの。トイレはウォシュレット式。
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