ヒアシンスハウス(埼玉県さいたま市・中浦和駅)
詩人でもあり建築家でもあった立原道造が生前に残した図面を元にして、再現されたヒアシンスハウス。中浦和駅の近くにある別所沼公園の水のほとりに建てられたシンプルな小屋は、詩人としての立原道造を愛する人、建築家としての立原道造を評価する人、連日いろいろなファンが訪れる場所になっている。
建築家という面では東京大学の在学中に優れた建築を行った人物に贈られる辰野金吾賞を三度も受賞したという、ある種の天才だった立原。丹下健三とも交流があり書簡が残されている。詩人という面では中原中也賞を受賞しているほか、自分でも詩集を編んで出版していたりと精力的な活動をしていた。
ハウスの中には生前に愛読していた書籍が飾られた本棚や(本は閲覧可能)、愛用していたランプと同型のもの、生前のエピソードにも出てくる十字架の形を残した椅子など、生前の面影を感じられるものが溢れている。たった一部屋のシンプルな建物ではあるものの、開放的な窓などずっと居られる空間である。トイレはなし。もともと作る予定だったスペースは資材置き場になっている。
かつては立原道造記念館が東京大学の弥生門からすぐそばにあったのだけれど残念ながら閉館、資料は彼にゆかりのある軽井沢の地に移管している。中央区郷土博物館の一部でも資料がいくつか残されているが、東京近郊で彼の存在を間近に感じられる場所としてはこのヒヤシンスハウスが唯一のものとなる。詩人として、建築家としての立原道造に触れてみたいと思ったらぜひ訪れてほしい場所。