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村井正誠記念美術館(東京都世田谷区・等々力駅)
等々力渓谷に架かるゴルフ橋、そこからすぐ近くにある知る人ぞ知る美術館が村井正誠記念美術館である。こちらの美術館、春と秋の限られた時期しか開館しておらず、しかも開館日は日曜日のみ、初回の見学は往復はがきで申し込む必要があるというハードルの高さで本当に来たい人しか来られないスタンスをとっている。逆に言えば見学者は美術館や絵画に興味があるということで館長が自ら応対して説明してくれるということの証左でもある。
植物が生い茂った中にある美術館、入口のスロープには水盤があり水が張られ、それが館に反射してとても美しい。村井が生前に愛用していた自動車クラウンもそこに停められ(水の上に配され)、これもまた見応えのある風景になっている。水盤へのクラウンの設置にはスロープから通すこともできず(そもそもタイヤがパンクしている)クレーンを使って(電線を跨ぐ高さまで上げて)運んだのだそう。ちなみに美術館ができるまで保管していた車の保管代も相当なコストだったという。
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この美術館を設計したのは隈研吾。なんとあの世界的な建築家の、駆け出しの頃に手がけた建築ということで、本人も数年前のインタビューで最も思い入れのある建築として名前を挙げている。実はこちらの美術館は閉館する予定でしばらく休館をしていたのだけれど、そのインタビューで注目されて来館希望者が増えたことをきっかけに再開したという経緯がある。
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館長は村井正誠の元アシスタントで今は夫人として亡き村井作品の管理を行なっている。こちらの美術館の2階が館長の住居を兼ねており、また自らも絵描きということから絵画教室も開催しているという。吹き抜けになっている1階に備え付けられている階段を上った2階ではその絵画教室の生徒が描いた作品も展示しており、こちらも一緒に見学することが可能。階段を上ってあらためて1階を見下ろすとその開放的な空間が心地良い。
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1階の階段裏には村井正誠のアトリエがそっくりそのまま残されている。とはいえ大判の作品を多く作っていた村井だけにこちらのアトリエ内は雑多に物置のようになっており奥まで入るのは一苦労。ダリのオブジェなど村井が個人的な好みで入手した貴重な品々もここに眠っている。パリに滞在していた時のこと、晩年になり再び訪れたフランスのエピソードなど、フランス旅行に同行していた館長が話してくれるのがまた興味深かったりする。
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隈研吾が注目を浴びているというのもあって、こちらの美術館に訪問する人の多くは建築に興味のある人が多いという。それはそれで良いことなのかもしれないけれども、せっかく訪れるなら建築だけでなく村井正誠の作品にも興味を持ってもらいたいもの。抽象画家の旗手としてマティスやピカソに触れ、前衛芸術の開拓地でもある読売アンデパンダン展の黎明も担った重要な人物である。館内には絵画だけでなく彫刻やデザイン画も多く展示されている。トイレは個室ウォシュレット式、ただしリモートコントロールスイッチは切り離されている。館内を訪れる人が多くなれば状況も変わるかもしれない。
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