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愛用ペン紹介Vol.2「レオナルド・モーメントゼロ『アロハ』(ボールペン)」


①はじめに

 こんばんは、君にとっての有翼の物好き、ナルコスカルです。

 今回はボクの手持ちペンの中の一本、イタリアの文具ブランドである「レオナルド・オフィチーナ・イタリアーナ(以下レオナルド)」のボールペン「モーメントゼロ・アロハ」を紹介していきます。少し複雑な経緯で設立されたブランドなので、初めにレオナルドというブランドの歴史、次にボクのアロハそのものの詳細・筆記感等について記していこうと思います。最後まで楽しくお読み頂けたら幸いです。

 オフィチーナ(officina)は「工場・作業所・工房」、イタリアーナは「イタリアの」という意味です。つまり、レオナルド・オフィチーナ・イタリアーナは、「レオナルド・イタリアペン工房」といった訳になります。ボクはほんの少しだけイタリア語の知識があります。

②レオナルドについて

 まず最初に、レオナルドの歴史について書いていきます。もし君が文具や万年筆の大ファンで、「デルタ」や「マイオーラ」という単語に覚えがあるなら、ここは読み飛ばして頂いて問題ありません。そうでないなら、ボクに付き合ってもらえると嬉しいです。

 レオナルドの創業は2018年。100年以上の歴史を持つ企業・ブランドが多い文具業界の中では比較的若いメーカーです。しかし、レオナルドの職人によるペン作り自体は1980年代から続いており、確かな技術力を持つブランドです。

 その理由は、レオナルドはかつてイタリアに存在した「デルタ」という企業を前身としているからです。デルタはナポリ近郊の「カゼルタ」という街に籍を置いたブランドです。フラッグシップモデルである「ドルチェヴィータ」は、南イタリアの華やかさや瑞々しさを表現した名筆として多くの文具ファンから愛されているペンです。

デルタ・ドルチェヴィータスリム(旧デルタ時代モデル)

 デルタは2018年に廃業(倒産ではありません)を発表。イタリアを代表する文具ブランドの廃業に、日本のファンにも多大なる衝撃が走りました。ここで一度デルタという名は途絶えます。

 その後、デルタの共同創業者の一人であるチロ・マトローネ氏の息子のサルバトーレ・マトローネ氏によって、デルタと同じカゼルタの地にレオナルドが設立されます。つまり、レオナルドはデルタの名を冠さない、事実上の旧デルタ後継ブランドの「一つ」です。

 一方、もう一人の共同創業者であるニノ・マリノ氏はナポリに「マイオーラ」というブランドを立ち上げました。その後、マイオーラ社は投資家のサポートにより旧デルタの権利を取得。マイオーラが擁するブランドの一つとして現在のデルタが復活しました。

 旧デルタの廃業、そして旧デルタがレオナルドとマイオーラ・新デルタに分かれた経緯について、旧デルタの生産部門と経営部門のペン作りに対する考えの食い違いと噂されています。しかし、詳細は関係者以外に伏せられており、レオナルドとマイオーラ・新デルタが今は別々の道を歩んでいるのは確かです。

 レオナルドは旧デルタ譲りの華やかな色使いを得意とし、ブランドの特徴である先端が車輪状になっているクリップは、旧デルタから続いている構造です。しかし、旧デルタの栄光に縋り続ける事は決してなく、「レオナルドらしい」ペンも次々に発表している意欲的なブランドです。

③モーメントゼロ・アロハについて

 ここであらためて、今回紹介するアロハを見ていきましょう。

 透き通る青空と大海原を連想させる色使い、まさにレオナルドの本領発揮といったカラーです。ボクは旧デルタ時代のドルチェヴィータを所有しているので、今までレオナルドのペンを強く欲する事はなかったのですが、さすがにこれは無視できませんでした。ボクは夜の子であるミミズクですが、こんな青空の下で潮風を浴びながら翼を広げたいと、そんな気持ちにさせてくれます。

モーメントゼロ・「ヌヴォラ」

 モーメントゼロはレオナルドの基本モデルに相当するもので、その歴史はレオナルドそのものと同じです。基本的に14K製ペン先万年筆のみの展開ですが、一部カラーでは万年筆はゴールド製ペン先とスチール製ペン先、金色か銀色か選べるトリム(金属パーツ部分)、あるいはボールペンの展開があり、購入者の予算や用途へ柔軟に対応しています。レオナルドの基本モデルにはもう一つ「フローレ」というものがありますが、モーメントゼロはそれよりもフラッグシップ的なモデルとして扱われているように見受けられます。

 余談ですが、レオナルドは「ノスタルジア」や「フェリーチェ」といった日本限定モデル、あるいは既存モデルの日本限定カラーをいくつか生産しています。レオナルドにとって日本の文具ファンたちは、決して無視できない市場なのでしょう。

モーメントゼロ・「ハワイブルー」

 モーメントゼロにおいて、「ハワイブルー」というカラーがあります。レオナルドの歴史において初期に発表されたカラーであり、今でも販売されている事から一定の人気があるのだと推察できます。ハワイブルーが「絶景としてのハワイ」、「神秘としてのハワイ」だとしたら、アロハは「煌びやかなハワイ」や「真昼のビーチのハワイ」といった印象を受けます。もしかしたら、アロハはレオナルドにとって「ボディーカラーでハワイを表現する上での再解釈」という意味合いがあるのかもしれません。

 モーメントゼロのリフィル(替え芯)は、いわゆる「パーカー型」と呼ばれる「G2型共通規格リフィル」です。ボクはアロハに同型のジェットストリーム芯を組み込んでいます。つまり、ガワは華やかなイタリア製ですが、中身は日本語に適した日本メーカーのリフィルです。もちろん、書き味は安心と信頼のジェットストリームそのものです。G2や4Cのリフィルを使う海外ボールペンにジェットストリーム入れるのって、構築済みデッキに汎用カードを足す感覚に似ていますよね。

 ペン先の出し入れは回転式で、不意にペン先が露出する事はまずありません。ベストセラーボールペンの一つであるドイツの「ペリカン」におけるフラッグシップ「スーべレーン・K600」と比べると、ツイストの感触が少々硬めでしょうか。加えて、モーメントゼロではスプリングを内部のリフィル先端に差し込む手間があります。もっとも、モーメントゼロとスーべレーンK600では定価が約1.6倍ほど異なるので、定価約3万円の価格帯であればモーメントゼロは全くもって及第点です。

④おわりに

 ここまでお読みくださりありがとうございました。ボクは「読者あっての作者」だと思っているので、君に楽しんで頂けたなら何よりです。

 総評としては、書斎やオフィスで使っても、あるいは手帳のお供にしても、レオナルドのペンは間違いなくライフスタイルに彩りを添えてくれます。価格に対する機能的なバリューは控えめですが、それは「コダワリを持つ者」に愛されるイタリアブランドの「役目」ではないでしょう。

 今夜はここまでにしておきます。ボクの翼がそれを望んだ時に、また君のもとに戻ってきます。


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