病院の待合室で体重を連呼され。
高脂血症夫婦である。高くて美味しいものも、安くて美味しいものも
遠くの美味しいものも、近くの美味しいものも大好きだ。生き甲斐と
言っていい。
40を過ぎた頃から夫婦で毎年人間ドックに行き、先生に言われた通りに
高脂血症やら中性脂肪の薬をきちんと飲んでもいる。それはそれとして
ふたりで平和に幸せに生きて来た。
最近、いつもの薬を処方してもらう病院で「特定保健指導プログラム」と
いうものが始まった。普段の食事の内容や運動の頻度、体重などを継続的に聞かれることになった。義務なんだそうです。
そこで、大勢が居る待合室で何度も私の体重を看護師が連呼した。
ユニクロでLLサイズの私の体重を看護師が連呼。皆が聞いている。
50代女だからって、面の皮が厚くたって、私にだって羞恥心は
あるんだぞ!
夫婦それぞれ、普段の食事の内容を聞かれた。揃って私が作ったものを
食べているのに、夫と私の供述に差が出た。
「週に何回揚げ物を食べますか?」「毎日魚は食べますか?」
高脂血症夫婦だ。普段の家庭料理で極端に揚げ物は出していない。
健康を考えて弁当が肉だったら夕飯は魚になるべくしている。
朝は必ずサラダか野菜スープを食べるようにしているし、弁当にも
夕飯にも野菜料理の副菜は出来れば2品は添えているのだ。
一所懸命、頑張って料理している。なんだか、私の人生を否定されて
いるように感じてしまった。悲しいしプライドが傷ついた。
怒ってもいいですか? 体重連呼の件もあるしね。
まぁでも、ダメなんでしょうね。私の料理が。美味しさと栄養バランスと
健康と満足感。料理ってタスク多すぎないか?もっと言えば、ボリューム感とか彩りとかも?! なんだか、ミドル女性に求められる苦痛なあれこれが
想起されてイヤだ。例の、仕事も家事も育児もカンペキに。その上キレイで
明るく元気で朗らかに。・・・けっっ!
私はしばらく料理イップスに陥った。何を作っていいか分からない。
とにかく何でも蒸してみる。味気がない。機嫌よく、美味しくバランスの
良いものを作っていたと思っていた私は否定された。私は悲しみ、怒り、
卑屈になり夫婦関係にも影響が出た。
後から分かったことだが、夫はちょっと入っていた油揚げや厚揚げも
”揚げ物”とカウントしていたそうだ。あと、ひとりでこっそり食べた
コンビニのホットスナックも正直に申告していたと。そんなの知らんし。
そして、何が嫌だって頼んでもいない保健指導に1人1000円も
徴収されるということだ。2人で2000円!! 2000円あれば
何か美味しいものが食べられるじゃないか(?)
とにかく、どうしても運動が続かない。そもそも運動が嫌いだ。
ウォーキングの挫折は数知れず。夫が買ってくれた歩くだけで
姿勢もよくなって減量効果もあるという靴は数年履いていない。
コロナ蔓延の頃は大手を振って運動をサボっていたが、今度は夫から
「任天堂リングフィットアドベンチャー」を渡され「これで家でも運動
出来るね!」と笑顔の圧をかけられた。とても楽しく週3、4回プレイ
したが、体重は2、3キロの増減を繰り返すだけだった。
中でも悲しかったのはYOUTUBEの、ヒットナンバーに合わせて有酸素
運動をやるコンテンツを観て頑張っていたことだ。やはり週に3、4回
人間ドックに向けて数か月間、自宅リビングでひとり踊り狂っていた。
しかし、人間ドックで体重は減っていなかった。自分なりに頑張った自負も
あって正直結果に期待していたのだ。
最後に問診の先生に減量について言及され、私は「運動はしてみたんです。でも体重が減らないんです。」と泣き言を言った。
リビングでひとり、SPEEDやTRFなんかの名曲に合わせてジタバタ、
ドスドスとお手本と左右が違ったりワンもツーテンポも遅れても
頑張って踊る50代女。「これで痩せる!」「楽しい!」と思っていた私。結果に期待していた私。思い返すにつけ、みじめて泣けてくる。
全然何もやらずに、無尽蔵に間食して自堕落にゴロゴロしているワケじゃ
ないのに。料理だって頑張ってる。運動にだってもがき続けた。
誰だってキレイでいたいし、スリムでありたい。それでもストレスとか、
癒されたくて美味しいもの食べたり、お酒飲みすぎちゃったり、甘い物食べちゃったりするのが人間だよねぇ。それをダメだと追及されると辛いし悲しいんだよなぁ。病院では結果だけが全てだしね。
何とかならんかね、これ。さしずめ、特定保健指導プログラムの料金
2000円がとにかく惜しいのだ。
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