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[エッセイ10]まくり考②

ども、ならなすおです。
今回は、「まくり考①」の続きです。
 
私が、「平等」を担保する主要ファクターと考えている「幼児教育・保育」と「義務教育」。
それらは、親ガチャ、境遇ガチャ等をひっくり返すほどのインパクトを持っているのか?
厳しい初期値から、学力を武器に経済、社会的な状況を好転させていくプロセス、私は「まくり」と読んでいます。
 
教育の持つ「まくり力」について参考になる、文部科学省さん実施の興味深い調査研究があります。

 
[文部科学省 全国学力調査の追加分析報告書]


これの内容を中心に、今回は触れていきたいと思います。
 
それでは、本編、はじまりです。



(5)お茶の水女子大学さんの調査研究

令和4年度文部科学省委託事業「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」。
児童生徒の、社会経済的背景(SES:Socio-Economic Status)と学力の関係についての研究です。
 
SESというのが、いわゆる「親ガチャ、境遇ガチャ」と考えます。
SESは、保護者の学歴、世帯年収、教育支出、父母の職などから指標化されます。
 
この調査研究の中で、国立大学法人お茶の水女子大学さんが実施されている「保護者に対する調査の結果を活用した効果的な学校等の取組やコロナ禍における児童生徒の学習環境に関する調査研究」、これが、素晴らしい。
 
この研究、2つの課題に注目して、分析しています。
 
1つは、SESの低い層において、学力面で成果を挙げている(高い学力を示している)児童生徒・家庭の分析。
 
2つは、同じくSESの低い層において学力面で成果を挙げている学校・教育委員会等の取組の分析。
 
児童生徒の育ちのうち、学力に注目して、「恵まれないSESにあっても、子ども自身やご家庭、学校などが取り組んで成績上位者を輩出しているケース」の調査です。
(注。筆者の勝手な解釈です。執筆者の見解ではありませんのでご注意願います。)


(6)実状

まず、実状を見てみましょう。
親ガチャ、境遇ガチャの存在について。
小6と中3の状況を、円グラフにしてみました。
学力は、上位25%、第2位、第3位、最下位の4階層に分けています。

家庭が恵まれたSES上位10%のお子さんは、なるほど、学力も上位25%にいる率が高い。
半分ぐらい。
親御さんが直接教えていたり、塾に行っていたりするんでしょうね。
一方、恵まれないSES下位10%のお子さんが学力上位25%にいる割合は、8%ほど。
 
なるほど、親ガチャや境遇ガチャ、厳然と存在しているようです。
割合的には、相当な差がある事は否めない。
 
でも、社会的、経済的な状況の厳しいお子さんも、一定割合、上位25%に入ってますよね。
つまり、境遇の厳しさは、即「詰み」を意味しない
 
では、どうやって上位に入っているのか?
ここで、「厳しい状況に置かれた子どもたちは、必ず血のにじむような努力をしなければならない」って言われたら、何か嫌じゃないです?
 
言葉的に変ですが、「そんな平等、フェアじゃない」

朝ご飯を食べる小学生
(AIで生成)


(7)家庭や学校の取組

この調査研究では、「児童生徒・家庭」と「学校・教育委員会」の取組のうち、SESの低い層でも学力的に成果を挙げているケースの要因を分析しています。
 
[児童生徒・家庭の取組(筆者抜粋)]
(小6)
・朝食を食べる習慣がある
・子どもに自己肯定感がある
・最後までやり抜く力「文章題などを最後まで回答しようとする姿」がある
・学級で対話している
・授業で学習した内容が社会に出て役立つと思って勉強している
 
(中3)
・朝食を食べる習慣がある
・自己意識、非認知能力が高い
・最後までやり抜く力がある
・保護者が子どもの小さいころに絵本の読み聞かせをしていた
・学級で対話、話し合いをしている
 
 
[学校・教育委員会の取組(筆者抜粋)]
(小6)
・授業の流れがほぼ共通
 課題の明確化
  ↓
 まずは独力で取り組む
  ↓
 子ども相互に学び合う
  ↓
 まとめと振り返り
・朝や授業の合間の帯時間に、10分程度読書、計算、学習などの個別学習を実施
・宿題、日記、自主学習などの家庭学習を長年にわたり大事にしている
・校内研究の取組が充実している
・教員相互の連携が円滑で、教員が集団としてまとまりが良い
 
(中3)
・少人数指導による対話的な学び合いをしている
・教科外の特別活動などを重視して子どもの主体性を育成している
・教科や学年を越境して校内研究を実施している
・小中一貫、連携教育を充実している
・生徒による授業、学習評価を実施している
・スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを積極活用している
 
以上、私の浅い理解に基づく抜粋なので、抜け漏れ、誤解等、ご容赦ください。
 
なんか、すごく特別なことをしなくても、カリスマ教師はいなくても、お金をかけなくても、環境整備、出来そうじゃないですか?
 
こうした具体的な改善を少しずつ積み重ねて、「まくりの場」が失われることなく、むしろ大きくなっていってほしい。
 
「ガチャに外れたら詰み」なんて、思って欲しくない。

クラスで議論する中学生
(AIで生成)


(8)おわりに

最近、幼児教育・保育や、義務教育、高校教育なんかで、SES的に厳しい状況にある子どもたちを支援する取組の話題・報道が増えている気がするんです。
危機意識を共有している教育者さん、行政マンは、確実に増えていると思う。
 
彼らの取組に、心から敬意を表します。
将来、彼らに「ありがとう」を言う子どもたちが、出てくると思います。
 
名前の出てこない英雄たちの活躍で、多くの人が気付かないレベルだけれど、世界が少しだけ、よくなっているかも知れません。
 
私の住んでいる地域では、最近、中学校の給食が無償化されました。
娘はもうすぐ高校生なんですが、高校生年代にも児童手当が支給されるようになります。
 
お父さん(私)の稼ぎが少なくて、今SES値が多分低い我が家ですが、娘には「まくり」を実現して、羽ばたいていって欲しいです。
 
今回も、ご覧いただき、ありがとうございました。

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