見出し画像

📙おんぶにだっこ(さくらももこさんのエッセイ)

さくらももこさんのエッセイはもものかんづめに続き2冊目になります。

こちらは小学校入学前、2〜4歳までの出来事が多いようです。

私は小学校以前の記憶があまりないというか、場面場面で覚えていても詳細とかはあまり記憶にないです。あのとき、嬉しかったな〜、悲しかったな〜、寂しかったな〜とかほんとにそれくらいで、ぼんやりとしていて曖昧です。なので、さくらももこさんがお母さんのおっぱいをやめた日のことや乳母車からの景色をはじめ、そんなに小さい頃の記憶を詳細に鮮明に記憶していることにびっくりしました。

今回のエッセイはけらけら笑えるものが多い訳ではなく、生まれた頃の初心というか、シンプルな見方、そしてじんわりとあたたかい大切な何かを思い出させてくるそんな一冊だと感じました。

特に“もらった人形”というお話が好きです。

保育園で全員に配られたお人形が、自分に似ていて、持って帰るとそっくりだと家族にからかわれると思って持ち帰りたくなかったというお話です。

お人形は、丸い顔に低い鼻、小さい目を細めて笑ってる顔、小さい口も、全体的に野暮ったい地味な印象も自分にそっくりだと思ったももこちゃん。

対照的にお姉さんは、目鼻立ちがハッキリしててフランス人形とか、どこか外国のお姫様ふうなものに似ていると言われることが多かったそう。それと比べて暗い気持ちになることも多く、人形を持ち帰るのがどうしても嫌だったとのこと。でも、そんなことを保育園の先生にも家族にも言えないと思い、いらないとしか言えなかったのでした。

結局、迎えに来た父が保育園の先生からその人形を代わりに受け取ったのですが、そのあとの家族での会話にじーんとくるものがありました。

家に帰ると、父はすぐに母に報告した。それで早速母にも「なんでこのお人形がいらないの?」ときかれた。私は面倒臭くなり「可愛くないから」と答えた。
すると母は「可愛いじゃない。このお人形、ももこにそっくりで、可愛いよ」と言い、父も「おう、似てる似てる可愛いなァ」と言って笑った。
だからそれが嫌なんだよ、と私はとうとう我慢できずに「似てるって言われると思ったから、イヤなのっ」と言って人形を放り投げて泣いた。
「そんな事しちゃ、かわいそうだよ」と母は悲しそうな顔をして、台所の床に転がった人形を拾った。そして「ももこに似てるんだから、このお人形はお母さんが大事にするよ」と言って、人形を持って立ち去った。
台所に残された私は、ひとりしみじみ泣いていた。自分で投げて床に転がった人形が、一瞬寂しそうに見えたのが頭から離れない。
私は母のところに行き「やっぱり、あのお人形、ちょうだい」と言った。母は「可愛がってあげるんだよ」と言って人形をくれた。
私は人形の顔をよく見た。丸い顔も小さい目も口も鼻も、自分に似ているところがせつないきもちになり、可愛がってあげないと、かわいそうだよな……と思った。

おんぶにだっこ さくらももこ 

幼いながら、比較されていると感じ悲しい気持ちになったももこちゃんの姿に胸がきゅっとなりました。そして、お母さんのひとことひとことから我が子を可愛く思う気持ちがひしひしと伝わってきて、じんわりとあたたかい気持ちになりました。

読んでよかったな。こういう気持ちってなかなか呼び起こしににくい気がする。

私は将来子供ができるかわからないけど、大切にしたい可愛がりたいと心から思う対象に、お母さんのような愛のある言葉を伝えられたらいいな。

あと、“フラダンスへの想い”というお話も好きです。このお話はシンプルに面白いし、子供の頃のなんとも言い難い感覚が思い出されます😂

このエッセイを通して、やっぱりさくらももこさんは、生まれながらさくらももこさんだったし、ユーモアとピュアに溢れ、でも幼いながらに冷静な視点を持っている、不思議で魅力的な人だなぁと思いました。

また、ピュアさゆえに幼い頃は人一倍心の傷も多かったんだなと思いました。

幼い頃のまっさらでまっすぐな気持ちや、守られているようなじんわりとあたたかく懐かしい気持ちをお探しの方、ぜひ手に取って読んでいただきたいです📙

最後まで読んでくださりありがとうございました!

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集