二ューヨーク・リサーチ vol.3
ニューヨークのリテールリサーチの第三弾。
今回はNYCで回った体験型店舗やD2Cのリアル店舗に関するnoteです。20箇所ほど回った視察内容を数回に分けてお届け。
1.子供が踊るCAMP
マンハッタンの西側に、2019年3月にオープンしたHudsonYards。蜂の巣のようなインスタレーション「Vessel」で有名ですが、2兆円をかけて一体開発しているだけあって、商業施設も豪華。
そのHudson Yardsの2階に入っているのが、おもちゃ売場「CAMP」。商品は一般的なおもちゃ販売ですが、店内はアスレチック遊具やデジタルインスタレーションが散りばめられていて、まさに「おもちゃ王国」。
店内は子供が走りまわり、それを写真に収めようとする親でいっぱいです。もちろん、この遊具などを利用するのは無料ですし、ワークショップなども無料開催。
果たして、こういうエンタメ要素が「買い」に繋がるのかはまだ実験段階ですが、EC比率が高まる玩具において、「リアル店舗に行く意味」を追求している売場と言えます。
あと、PBの子供服が少量ありますが、可愛いのでお土産にオススメ。
2.Pelotonの衝撃
今回のNYC視察で最も衝撃的だったのが「PELOTONの実機体験」
1台$2,245の、ちょっとお高めのエアロバイク(39ヶ月払いも可)に、月々$39でフィットネスクラスの動画配信サブスクを組み合わせたサービスが有名で、すでにIPOもしてるホームフィットネス企業です。
マンハッタン内にリアルショップがあり、そこでバイクの体験やPBのフィットネスウェアの販売をしています。このウェアが結構カッコよくて、お土産に最適。
また、PELOTONの戦略として、ホテルのジムに進出していて、私が宿泊したシティホテルのジムにもPELOTONのバイクが設置されてたので、エアロバイクを初体験。
PELOTONのサービスポイントは、
・「ひとりじゃない」と思えるライブ感
・「やるしかない」と思えるエンカレッジ
とにかく、「マッチョな男性がエンカレッジし続ける」動画を見ながら、一緒にバイクをこぎ続けます。自分一人だと10分もたなかったり、勝手に手を抜いたりしますが、動画の向こうの男性が「ここで本気出せ!」「君ならできる!」とか言ってくるので、何だか燃えて、完走することができます。
そして、秀逸なのがランキングシステム。同じクラスを受けた者同士でバイクの回転やカロリー消費を競い合い、自分の順位が画面上にリアルタイムに現れます。これで、さらにヤル気が引き出される、というシステム。
ユーザーの中には、各クラスのトレーナーのファンになってしまう人もいて、とにかく「続ける」(チャーンさせない)ための仕掛けが満載。
プロダクトはエアロバイクですが、実際は、ライブ感による「リアルの体験価値」を提供することで支持を得ています。
サービス自体は有名なので、企業情報やプロダクトの特徴は知っていましたが、見ると実践するとは大違いで、とにかくPELOTONは面白い。
「TONAL」や「MIRROR」など、PELOTONモデルのフィットネススタートアップが増えてきたので、ホームフィットネス市場が拡大するのは間違いありません。
3.アート空間Gentle Monster
店に入った瞬間、「ここは一体何屋さんですか?」と思うほどに、アート空間が広がる店内。
2011年に韓国で創業されたアイウェアブランドですが、店内アート9割、商品1割ぐらいの比率で店頭展開されていて、店内はほぼアートです。それを、世界各国のリアルショップで同じように展開しているというから驚き。(日本未進出)
アート空間だけでなく、アイウェア自体もカッコ良く、プロダクトも$250前後と、比較的手の届きやすい価格で提供されています。デザインも支持されているため、ALEXANDER WANGやAMBUSHなどのデザイナーブランドとのコラボが多く、アートだけではなく、プロダクトも洗練されたブランド。
インスタレーションだけでも見る価値があり、リアルショップでなければ体験できない「リアルの価値」を考える一つの参考になると思います。
4.インスタテーマパーク Museum of Icecream
ナビゲーターの指示に従いながら部屋を巡っていく、ウォークスルー型のエンタメ施設「Museum of Ice Cream」。
入館料1人$39とお高めですが、サンフランシスコにも同様の店舗があり、2019年に滞在していた時は、店の前は大行列な上に、事前予約が取れないほどの超人気スポットでした。
人気の理由は、ピンクで統一された可愛い「インスタ映え」する館内装飾。館内全てがインスタスポットで埋め尽くされていて、ミレニアル世代が友達と一緒に巡るのが人気のエンタメ空間です。
とにかく、写真を撮ることがメインの施設で、至る所で自撮りする女子が立ち止まっています。その女子達の撮影テクニックを観察するのが面白く、「そうやって撮るのか!」と感心しきり。
そのテクニックも、インスタの中で数々披露されているので、シェアされているインスタ画像を見て、同じように撮影するのがセオリー。
完全に、写真を撮ってインスタでシェアするためだけの施設で、一応、館内を巡るためのストーリーがあるのですが、誰も聞いていません。
間違いなくSNSの発展が生み出した体験施設ですが、一度シェアすると満足するので、「リピート」顧客を作るのが困難だと思います。ポップアップであれば良いのですが、常設店舗では、今後、どのようにリピート顧客を囲っていくのか、その戦略が楽しみな体験型施設です。
5.スニーカーファン垂涎の Kith
アメリカのスニーカー業界において絶大な影響力を持つデザイナーの
「Ronnie Fieg (ロニー・フィグ)」が手掛けるセレクトショップ『KITH (キス)』
代官山にも店舗がありますが、そこは「アイスクリーム屋」がメインなので、ほとんど商品がない中、ニューヨークの店舗はアパレルがメイン。
イベント的に、限定スニーカーを販売することがあり、その度に行列(時に行列の並び方で問題にも)になることで有名なショップです。
1階メンズアパレル、2階スニーカー、3階レディスアパレルの3フロア構造。2階にNIKEのコラボスニーカーが大量に陳列されていて、圧巻です。日本未発売のスニーカーも多数あるようなので、スニーカーファンは訪れるべき店です。
「ここでしか買えない」という、非常に分かりやすい吸引力があり、そのためなら遠方からでも買いに来るし、行列に並ぶことも厭わない。あえて簡単にECで抽選販売とかしないことで、ファンのロイヤリティを高めてるとも言えます。
スニーカーについては、KITHの他にも、「Urban Necessities」などレアスニーカーを大量販売する店が人気で、ニューヨークのファッションシーンにおいて、スニーカーの存在感は極めて高い。
6.悲しみを乗り越える Brookfield Place
「9.11」のテロで被害を受けたワールドフィナンシャルセンター跡地に建てられた商業施設で、2014年に「Brookfield Place」と名称も改めて、様々なハイエンドショップを誘致して復活を遂げた場所です。
中でも「LE DISTRICT」と呼ばれる、フレンチをテーマにしたフードホールが面白いです。量り売りの肉を買って、その場で焼いてもらえるビストロや、グリーンサラダのボウルだけ取って、好きにトッピングを追加していく方式のサラダショップなど、ランチからディナーまで使えるフードホール。
ウォール街のど真ん中ということもあり、周囲の超高所得証券マンがどんどん入ってきますが、そのほとんどが「サラダショップ」目当てで、大行列。
日本人のサラダ意識(特に男性)はまだまだ低いと思うのですが、米国人の意識の高さを直に感じられるスポットです。
・・・・・
Vol.4に続く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?