見出し画像

顧客起点マーケティングから考えるN1理解の重要性

P&G、ロート製薬、ロクシタンなどで数々のヒット商品を生み出してきた西口さんの著書。1000人を分析するなら1人を徹底的に分析することの重要性が体系的に書かれてます。

個人的に読むべきだと思う人物像

・マーケティングの基本を押さえている人
・顧客育成(ナーチャリング)をこれからやっていこうとしている人

N1理解の重要性

マーケティングにおいて最も大切にしていることは、一人の名前を持つ具体的な顧客、"N1"を徹底的に理解することです。

N1とは1人の顧客のことを表します。ペルソナ分析という言葉があるように、名前、性別、趣味、家族構成など1人に焦点を当てて具体的な情報からどのようなプロダクトを作っていくかがマーケティングの原点になる。

①顧客ピラミッドの作成・・・顧客を5つのセグメントに分類
②セグメント分析・・・行動と心理データから基本的な顧客特性を分析
③N1分析・・・一人の顧客にインタビューし、認知や購買の深層心理を分析
④アイデアの創出・・・N1分析を基に、「アイデア」を考案
⑤アイデア検証・・・「アイデア」をコンセプト変換する

顧客ピラミッド(5セグマップ)

コメント 2020-06-27 174744

早期の認知形成の重要性

マーケティングにおいて、「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」が大事だが、それらと同様に認知形成が重要になります。そしてそれはスピードが重要で、顧客へのプロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアをいかに早く認知してもらうか。後発サービスであっても顧客への認知形成が早いと一番手のシェアを獲得することさえ可能です。

顧客ピラミッドで言うと「20-80の法則」というのがあり、売上の80%をロイヤル顧客が、20%を一般顧客が生み出していると言われています。購買サイクルを中長期(1年で6回購入)でみると、30-70,10-90などロイヤル顧客が売り上げのほとんどを担っていることになります。

逆に、顧客数で言うとロイヤル顧客が20%,一般顧客が80%になり20%の顧客が80%の売上を作り、80%の一般顧客が20%の売上を作っていることになります。そして売上貢献のないピラミッドの下層の顧客は、上位層で顧客獲得費用をまかなっていることになります。

ブランドのポテンシャル=リスクと現在の価値

コメント 2020-07-07 104044

顧客を4つに分類してみると、このように分けられます。つまり現在顧客というのは全体の25%で、残りの75%をいかにして顧客にしていくというのが重要になるでしょう。
それぞれの顧客に対するアプローチは以下になります。

未認知顧客(プロダクトを知らない)
マーケティング投資対象のターゲット顧客層と訴求内容の見直し

認知かつ未購買
ターゲット顧客層と訴求内容の見直し「プロダクトアイデア」の問題か「コミュニケーションアイデア」の問題かを見極めて「アイデア」を強化します。
また、便益に対して価格が適切かどうか見直しをすることも重要です。
あとは、知っていて買いたいが販路がないパターン。この場合、拡販や、販路自体の認知形成を強化する必要があります。

N1を絞り込むことが何より重要

繰り返しになりますが、N1を徹底的に絞り込むところから、人の心を捉え本当に欲しいものを作り出すことができます。
要は、プレゼント選びみたいなものです。可愛い息子の誕生日プレゼントに何を贈るか考えた時、Googleで「5歳児 誕生日プレゼント」なんて検索しないでしょうし、街角で調査するなんてこともないでしょう。欲しいものを息子にヒアリングして買えば間違いなく喜ぶんですから。
N1分析も同じで深く1人の顧客を理解することからプロダクトアイデアが生まれます。

顧客分析について

顧客情報を元に顧客を3つに分類する「RFM分析」が有名です。
RFMとは、「Recently」「Frequency」「Monetary」の3軸で顧客セグメントを分析する方法です。これは現在の顧客状態を知る際に有効ですが、一方でRFM分析は購買履歴から分析するのでロイヤル顧客と一般顧客に思考も施策も集中しがちです。
過去に購買履歴のある離反顧客や、ブランド認知をしているが未購買の顧客、認知すらしていない未認知顧客に向けての戦略が必要になります。
そこで行動データと心理データです。

コメント 2020-07-07 222311

行動の裏側には、ブランドやカテゴリーに対する何らかの認知や心理状態が理由として存在しています。これらを理解し打ち手や戦略構築をしていきます。行動データばかり見ていても、同じ戦略の繰り返しやABテストの繰り返しになり消耗戦になってしまいます。行動データと心理データを結び付けて初めて大きく成長するのです。

N1起点のカスタマージャー二―

N1分析は顧客セグメント毎に分析すべき内容が異なります。ロイヤル顧客層であれば、ブランド認知・使用意向・購買意向を持ったきっかけを時系列で聞き、現在の使用の実態と満足度などのギャップを確認します。一般顧客にも同様に聞いて、ロイヤル顧客とのギャップがどこにあるか、ギャップが生まれたとしたら、そのきっかけを探ります。離反顧客にはどこに離反のきっかけがあったかを探ります。

認知・未購買顧客や未認知顧客には、まずブランドを説明して「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」自体に魅力を感じてもらえないか、単に伝わってないだけでメディアや認知への投資の問題なのかを確認します。さらに、ロイヤル顧客が評価している商品の良さを話して反応をみればどこに問題があるかを分析すれば、どんなきっかけを提供すれば顧客化するかの可能性が見えてくるはずです。

もし市場調査するならロイヤル顧客10人から
・使い始めたきっかけ
・どうやってブランドを知ったのか

これらをヒアリングしていくと共通のきっかけが見えてくるはずです。さらに一般顧客や未認知顧客にも同様のヒアリングを実施したときに異なる結果がでてくればチャンスです。ロイヤル顧客へのヒアリングでの声を「プロダクトアイデア」としてN1インタビュー時に「こういうプロダクトがあったらどうか?」と聞いてみて好意的な反応があればロイヤル顧客に成り上がる可能性が高まります。

グループインタビューなど1対複数でなく、1on1のインタビューを複数人にする方が平均的な発見ではなく、際立った発見を得られるかもしれません。

「アイデアの創出」と再現性の確認

10人のロイヤル顧客にN1分析を行い、一人ひとりのカスタマージャーニーを描けば、ブランドとの出会い、認知、初回購買、継続購買、購買頻度の変化が見えてきます。
広告なのか、ブランドの使用経験だったのか、口コミからのロイヤル化なのか様々な要因が考えられますが、重要なのは「プロダクトアイデア」を感じ取ったかです。

N1インタビューでは、ありきたりな回答や想定通りの答えより思わず笑ってしまう、想定外の回答の方が新しい発見が隠されていることが多いです。
その想定外の回答を具体的な便益と組み合わせて「アイデア化」し一般顧客や他のセグメントに再現することで下位層を上位への移行を促せる可能性が高まります。

「アイデア」が複数見つかれば、具体的なコンセプトの立案として、受容性を見定めるためのコンセプトテストを行います。
コンセプトとは

「アイデア」+「価格と商品・サービス情報」

を示します。コンセプトに対する購買意向、独自性を感じるかを5段階評価でスクリーニングすれば、だいたいの可能性がセグメント毎に見えてきます。
ここで重要なのは、アイデアは端的に表現するということです。
アイデアを具体的に詰め込みすぎると、実際のマーケットでは魅力をすべて伝えきれないというリスクがあります。
TVで伝えるなら10秒程度、バナーなどでは数秒で認識できるよう、チャネル毎に運用を考える必要があります。

活用可能なアイデアが見つからず、次の施策を打ち出すなら同ブランドの新規商品開発や改良商品の開発が挙げられます。
再現性や独自性がない商品を「コミュニケーションアイデア」のみで戦うのは効果的でない可能性が高いです。

様々なマーケティング手法

下記に挙げたのは、オフラインとオンラインのマーケティング手法の一部です。これだけでも施策はたくさんありますね。

コメント 2020-07-07 223659

N1のカスタマージャーニーを分析していくと、商品接触ポイントや購買接触ポイントが見えてきます。具体的な顧客の心が動いたポイントや意思決定の変化を分析し、心理のインサイトを探っていきます。

認知度によってマーケティング手法を変えていくのも有効で、例えば認知度が低い状態でDMやイベントを開催しても無意味で、まずはオンラインのテレビCMやリスティング広告で認知形成を図り、その後、着々と認知度を高めながらオフラインマーケティングのDMやプロモーション、イベント開催で新しい顧客を獲得していくのです。

適切なフェーズで適切な手法を用いることで顧客ピラミッドの下層を上部へ底上げすることが全体最適化に繋がり、ロイヤル顧客を生むのです。

まとめ

N1、たった一人の顧客を分析していくことが新しいアイデアの創出に繋がり、新しいプロダクトアイデアが生まれるのです。10Nに一斉にヒアリングするより1on1を10回する方が奇抜なアイデアが生まれる可能性が高いためここは時間をかけても行うべきところです。

全体の総評としては、ここまで読み応えのある実用書は今まででも数えられるぐらいしかなかったので、さすが評価の高い書籍だと思いました。マーケティングだけでなく認知形成などブランディング視点でも書かれているので、マーケティングの基本を押さえていないともしかしたら難しいと感じるかもしれません。

Twitterでも日常生活での体験から感じたマインドやマーケティングについて発信してます。ぜひこちらもフォローをお願いします!
@naoto_tokumitsu




この記事が参加している募集

いただいたサポートは、今後のインプットのために書籍やnoteの購入代金にさせていただきます。