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アテネの数日 022 第二章-2 フランシス・ライト著
天井の中央から吊るされたランプが、真下に設けられた食卓を照らしていた。そこには、質素だが上品な食事が並べられている。壁には等間隔に十二体の彫像が並び、それらは一流の彫刻家による作品だった。その左右にはそれぞれ小さな三脚の上でランプが灯されていた。
ランプの一つの側では、女性の姿がカウチにもたれ、膝に置かれた本を熱心に読み込んでいた。顔は前に深く傾けられていて、さらに、光のまぶしさを避けるために手で額を覆っていたため、表情はほとんど見えなかった。彼女の横には小さなキタラ(1)が静かに忘れられたように置かれていた。少女の目は、クレタ島(2)のような輝く漆黒の瞳をしていたが、その目にはイオニア(3)の純粋な優しさが宿っていた。ほのかに開いた豊かな唇は真珠のような歯を見せ、テティス(4)も羨むだろうと思わせる美しさだった。ただ、粗野な目には彼女の顔は目立たないかもしれない。顔立ちはドリス様式(5)のようなギリシャの端正さに欠け、肌の色もアフリカの太陽に照らされたように浅黒かった。しかし、テオンはそのようなことには気づかなかった。彼は、少女が熱心に読み込むように見上げていたその先にある女性の顔に視線を向けていた。その少女の柔和で愛情に満ちた目が、崇拝するようにじっと見つめているその表情は、まさに本を読み込むかのような熱心さだった。
近づく足音に気づいた少女は立ち上がり、赤面して、師の挨拶に半ば応じ、控えめに数歩後ろに下がった。なおも書物に没頭していた学徒の女性に、賢者が肩に指を置きながら近づき、「何を読んでいるのかね、娘よ?」と尋ねた。彼女は手を下ろし、顔を上げて賢者を見つめた。
その瞬間、露わになった顔にはただの若く瑞々しい美しさではなく、成熟した知性と気高さが備わっていた。それは愛を誘うというよりも尊敬を誘い、知恵と喜びを約束する顔だった。その特徴は、愛の女神ビーナス(6)ではなく、知恵の女神ミネルバのようだった。目は二本の均等な眉の下からまっすぐに澄んで見つめ、その額は知性の深さゆえか、中央に少しだけしわが寄っていたが、それ以外は大理石のように滑らかで、整っていた。鼻はギリシャ的というよりはローマ風で、男性的ではないものの厳格さを感じさせる形だったが、その厳しさを和らげている口元には、優雅で愛らしさが宿っていた。顎はギリシャ風にエレガントに丸みを帯びていた。頬の色は淡いバラ色で、普段はほとんど目立たないが、感情が動いた時にだけ赤みが増した。今まさに賢者に話しかけられて、彼女の顔には一瞬、鮮やかな紅潮が走った。彼女は本を巻き上げ、カウチの上に置いて立ち上がった。
彼女の背丈は女性としてはかなり高かったが、体の各部や動きのすべてが調和と優雅さに満ちていた。「テオプラストス(7)の論文です。説得力があって独創的ですが、空想が多いですね。反論を試みようとと思っています。」その声は、名手が弾く竪琴のように、深く豊かだった。
注釈
キタラ (cithara) - 古代ギリシャの弦楽器で、リラに似た形状を持ち、詩の朗誦や音楽に使われた。
クレタ (Crete) - ギリシャ最大の島で、古代ギリシャ文明の中心地の一つであり、ミノア文明が栄えた。
イオニア (Ionia) - 古代ギリシャの地域で、小アジアの西海岸に位置し、哲学と学問の中心地であった。
テティス (Thetis) - ギリシャ神話に登場する海の女神で、アキレスの母。
ドリス様式 (Doric order) - 古代ギリシャの建築様式の一つで、力強く簡素なデザインが特徴。柱は太く、装飾が少なく、古代ギリシャの神殿建築に多く用いられた。
ビーナス (Venus) - ローマ神話の愛と美の女神。ギリシャ神話のアフロディーテと同一視される。
テオプラストス (Theophrastus) - アリストテレスの弟子であり、古代ギリシャの哲学者。植物学や倫理学に関する著作で知られる。